読書
おわりのそこみえ作者:図野 象河出書房新社Amazon ポップな表紙デザインとは対照的に不吉なタイトル。 よく見ると、フォントまで不吉さを増幅している。 で、タイトルが『おわりのそこみえ』 そこみえ? 底が見えたのか?見えているのか? いずれにしても、…
ずっとそこにいるつもり? (集英社文芸単行本)作者:古矢永塔子集英社Amazon 5編から成る短編集で、共通するのは、作中で伏せられていたことが、○○だと思っていたら実は××だった、という一種の叙述トリック。 ただ、どれも日常生活の中での人間関係を扱ってお…
誰か―Somebody (文春文庫)作者:みゆき, 宮部文藝春秋Amazon 菜穂子と結婚する条件として、義父であり財界の要人である今多コンツェルン会長の今多嘉親の命で、コンツェルンの広報室に勤めることになった杉村三郎。その義父の運転手だった梶田信夫が、暴走す…
齊藤彩『母という呪縛 娘という牢獄』、川上未映子『黄色い家』という全くジャンルの異なる2冊の本を短い期間に連続して読んだ。 異なる、と書いたが、共通点もある。 『母という~』はタイトル通り、母が娘を拘束して、そこから逃げ出せないような「監禁」…
ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人 「刑事犬養隼人」シリーズ (角川文庫)作者:中山 七里KADOKAWAAmazon先日久しぶりに会った2歳下の弟が、最近よく読んでいるということで中山七里を薦めてくれて、興味のある安楽死問題を扱った小説があるということで手に…
植物少女作者:朝比奈 秋朝日新聞出版Amazon 「図書館で借りて読んだ」と書くと申し訳ない気がしてあえて書かないが、買って読む本より借りて読む本が多い。 予約貸し出しの場合、ほとんどの場合は、何故この本を予約したのかを思い出せない頃になって本が手…
安楽死が合法の国で起こっていること (ちくま新書)作者:児玉真美筑摩書房Amazon昨年、興味はあったのに見逃した映画のひとつに『PLAN75』がある。 少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本で、満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施…
佐々涼子『ボーダー 移民と難民』 ボーダー 移民と難民(集英社インターナショナル)作者:佐々涼子集英社Amazon佐々涼子さんの本は、昨年5月に『エンドオブライフ』を読んで非常に考えさせられたが、最新刊『夜明けを待つ』のあとがきで、佐々さんの現在の状…
ここ最近は、イスラエル・パレスチナ関連のニュースが「酷い」。 停戦終了後、戦闘、というより、イスラエルによる一方的な攻撃の舞台はガザ地区北部から南部に移り、これまでの累計死者数は1万7千人を超えるという。ウクライナの戦争でもそういう側面はあっ…
悪い夏 (角川文庫)作者:染井 為人KADOKAWAAmazon 26歳の守は生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知った守は、真相を確かめようと女性の家を訪ねる。しかし、その出会…
母は死ねない (単行本)作者:河合 香織筑摩書房Amazon 河合香織さんは「この人の書く本はきっと自分にプラスになる」と信頼を置いている作家だ。 その信頼は、感性や能力的な部分だけでなく、人格的な部分にも及ぶ。「この人は誠実な人で、選んだテーマに安易…
大学生時代に所属していた運動部の行事の一環として、年に一回、街頭で「あしなが」の募金活動を手伝っていた。これが理由で、今も駅前などで募金を見かけると、あしなが学生募金には、絶対に協力する(と言っても少額)というマイルールを自分に課している…
共感という病作者:永井陽右かんき出版Amazonこんな本だ!>「永井陽右が、共感についての持論をまとめあげて、最終章で、ラスボス内田樹と対決したら、合気道の技に絡めとられて、何だかよくわからないうちに負けてしまった話。」 「ニュース23」に、ハンサ…
毒の恋 7500万円を奪われた「実録・国際ロマンス詐欺」作者:井出智香恵双葉社Amazon かつて「レディコミの女王」と呼ばれた漫画家のSNSに届いた、ハリウッドスターからのメッセージ。 当初はウソだと思い、相手にもしなかったが、ある日、ビデオ通話をするこ…
異常【アノマリー】作者:エルヴェ ル テリエ早川書房Amazon一週間くらい前に、奇妙な津波があった。通常は、地震発生⇒津波注意報⇒津波発生という流れになるはずが、地震発生の形跡がなく、いきなり津波が観測されて、それをもとに注意報が出される事態となっ…
記憶書店 殺人者を待つ空間作者:Chung Myung Seob講談社Amazon韓国ミステリは、以前、キム・ヨンハ『殺人者の記憶法』を読んでおり、かなり良い印象を持っている。『殺人者の記憶法』は、いわゆる、「絶海の孤島」「雪山の山荘」的なミステリ…
彼女が知らない隣人たち (角川書店単行本)作者:あさの あつこKADOKAWAAmazon最近読んで最もガッカリした小説。 端的に言うと、「社会問題を他人事ではなく、自分事として捉えてほしいという主旨で書かれたにもかかわらず、それが失敗した小説」に思えた。現…
シャーロック・ホームズ対伊藤博文 (講談社文庫)作者:松岡圭祐講談社Amazonホームズがクトゥルーに立ち向かう『シャーロック・ホームズとシャドウウェルの影』を読み、さあ、聖典(コナン・ドイルによるホームズ本編)を読むぞ!と息巻いていたのが7月。 そ…
それでも女をやっていく作者:ひらりさワニブックスAmazonひらりささんは、オタク女子ユニット「劇団雌猫」を組んで、いくつか本を出しており、代表作『浪費図鑑』は昨年楽しく読んだ。 そんな彼女が30歳で一念発起し仕事をやめてイギリス大学院に留学し、フ…
「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本 (角川書店単行本)作者:安田 峰俊KADOKAWAAmazon 安田峰俊さんは、Twitter上での、いわば「反」左翼的なスタンス(それは時に「右」的に映ることもある)に惹かれ、ずっと気になっていたが、最近のTwitter上でのお気に…
世界と私のAtоZ作者:竹田ダニエル講談社Amazon『世界と私のA to Z』。 話題になっていた本で、タイトルがキャッチー。Amazon評価も高い。 読み始めてみると、確かに今の若者、特に言葉としてよく聞く「Z世代」について触れるのにはちょうど良さそうな本だ…
ペダリング・ハイ (小学館文庫)作者:高千穂遙小学館Amazon高千穂遙の自転車関連本は、ちょうど一年前の2022年7月に『ヒルクライマー』を読んだのが初めて。その後、新書で自身のロードバイク生活を語った『ヒルクライマー宣言』を読み、『自転車の教科書』を…
はじまりの町がはじまらない (ハヤカワ文庫JA)作者:夏海 公司早川書房Amazon娯楽小説に限っても読まなくちゃいけない本がたくさんある。*1 それにもかかわらず、何故読むことになったのか辿れない本が時々ある。これもそんな本だ。 (あらすじ) 世界(サービ…
妻が口をきいてくれません作者:野原広子集英社Amazon数年前から「○○しかない」という褒め言葉が跋扈している。 それほど違和感なく使える言葉だが、あまりにも多く耳にし過ぎるので、自分からは極力使わないようにしている。 この漫画はタイトルに惹かれて読…
丸の内魔法少女ミラクリーナ (角川文庫)作者:村田 沙耶香KADOKAWAAmazon4編から成る中編集ということになるが、収録順に、「丸の内魔法少女ミラクリーナ」、「秘密の花園」を読み、3話目の「無性教室」の途中まで読んで、「あれ、これは自分の思っている村田…
ほねがらみ (幻冬舎文庫)作者:芦花公園幻冬舎AmazonAmazonのおすすめでこの本の存在を知り、何より(京王線沿線の駅名でもある)芦花公園という作家名に惹かれて、夢中になって一気に読み終えたのが2週間くらい前。 実はその時の印象はあまり良くなかった。 …
アンダークラス (小学館文庫)作者:相場英雄小学館Amazonいわゆる社会派ミステリというジャンルになるのだろう。テーマとなるのは、外国人技能実習生問題で、このテーマに惹かれて読むのを決めた。 文庫巻末解説で藻谷浩介さんが「誰が下層(アンダークラス)…
新書885日航機123便墜落 最後の証言 (平凡社新書)作者:豊裕, 堀越平凡社Amazon これまで、青山透子『日航123便 墜落の新事実』(以下、青山本)で衝撃を受け、日航機墜落の原因について「ミサイルによる撃墜」という陰謀論に傾きかけ、これを否定する杉江弘…
青山透子『日航123便 墜落の新事実』(以下、青山本)の感想をまとめてから比較的早い時期に、「冷静になってみれば、やはり結論が”ミサイルによる撃墜”というのはさすがにないだろう」と思い始めた。そもそも、自分は、子宮頸がんワクチン関連本*1を読んで…
カヨと私作者:内澤旬子本の雑誌社Amazonこの本には下心(邪念)があって読み始めた。内澤旬子さんの著作で読んだことがあるのは『飼い喰い』という、三匹の豚と半年間一緒に暮らしたあとで食べてしまう実話。その人がヤギと暮らす、その距離感に興味があった…