「愛情の反対は憎しみではない、無関心である」(マザーテレサ)は、いろいろ考えさせられる、じわっと来る名言です。
オリジナル・ラヴ『街男 街女』★★★★☆
感想追加です。
最初に聴いたときは、一時期流行していたカバー曲集なのかと思うくらい、オリジナル・ラヴ臭が抜けて聞こえたのは、1曲目「築地オーライ」と、6曲目「Yen」のせいだろうと思う。
特に「築地オーライ」の曲調は強烈で、さらに、出だしの掛け合いが、吾妻光良&The Swinging Boppersの名盤『Sqeezin' & Blowin' 』の「バッチグー」と被りすぎていたのが混乱を生んだ。*1今では慣れたが、「築地オーライ」を口ずさもうとして「バッチグー」になってしまうことがたくさんあった。
一方、お金のことを歌った「Yen」は、歌詞が女性シンガーソングライターっぽい。(矢野顕子や種とも子など)男性だとすれば、奥田民生っぽい。やはり歌詞については、ひとひねりふたひねり努力しているのだろう。
ところで、このアルバムの最大のポイントが最後の2曲である、というoriginalovebeerさんの指摘には賛成だ。特にラスト曲「鍵、イリュージョン」の良さ(特に最後の二行)について、originalovebeerさんは、以下のように書いている。
本当の主題は、何度聴いても「最後の二行」以外にありえない。こんなに力強く、悲壮感さえも溢れるフレーズがあるじゃないか! ここの二行を聴くと、田島の「生(せい)」がブワーッと自分の感覚を覆い尽くしていく。その感覚は、「やっぱり愛だよね」なんて詞面だけの単純な共感じゃなくて、田島の現存在がこちらの方へもはみ出してくるほど強烈なものだ。
この部分は、originalovebeerさんの興奮が目に映るようないい文章だったので、是非引用したいと思った。それと同じように、田島貴男の感情がドバーッと溢れるのが、ご指摘の「夜の宙返り」「鍵、イリュージョン」の2曲。
「夜の宙返り」は過去の曲で言えば「アポトーシス」や「月に静かの海」などと楽曲の良さは変わらないが、サビから展開の部分で、歌詞とメロディ、そして声が流れ込むように僕の心を打つ。そういった「聴き流せないメッセージ」みたいなものが、過去の作品では出せていなかったのだと思う。*2
「鍵、イリュージョン」*3でも、メッセージ自体は5年前に「冒険王」で歌ったものと大きくは変わらないかもしれないが、冒頭以外の部分で、全編を通して歌詞が伝わってくる凄さがある。そういう意味では、『街女 街男』というアルバムの中で、この曲の持つ意味は大きい。あと一曲、こういう曲が入っていれば、★5つなのだが・・・。
貴男と太郎
上と同様、まずは、originalovebeerさんの日記から引用させていただきます。
『街男 街女』を買った同じ日、岡本太郎の『自分の中に毒を持て』も買った。本屋を冷やかしていたらたまたま見つけたので買ってみた。ファンならご存知の通り、前々作『ムーンストーン』と前作『踊る太陽』の間に田島が出会い、絶賛し続けている本だ。
あーそうだったのか。公式頁の田島の日記を見ても、確かにその通り、「出会い」は2002年の7月頃のことなのだ。
僕自身は、田島貴男が岡本太郎に出会ったのは、『ムーンストーン』以前だと思い込んでいた。http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20040801#OL
というのも、僕の中では、大好きな中村一義と田島貴男両人の唯一とも言える接点、中村一義のシングル『君ノ声』での共演の際に、中村→田島へ岡本太郎の魂の「伝承」が行われた、ことに勝手になっていたからだ。
(参考)田島、中村の時間の流れ
2000/08/02 田島『ビッグクランチ』
2000/09/06 中村『ERA』(ジャケは太陽の塔、SpecialThanksに岡本太郎氏の名前)
2000/11/08 中村『君ノ声』(タジマRe-Mix入り。『ERA』からのシングルカット)
2002/03/20 田島『ムーンストーン』
ただ、2002年7月は、はっぴいえんどのトリビュート関連のライヴもあったので、もしかしたら、そちらの方で、別ミュージシャンに薦められた可能性はあるし、一時期、業界全体で流行していた可能性もある。
また、originalovebeerさんの仰るように、元々、田島貴男は岡本太郎的な考え方をする人であるのは間違いない。歌詞の中にも太郎的なものが生まれかけてきたときに、ちょうど太郎との出会いがあったのだろう。奇跡的な邂逅から、習作『踊る太陽』を経て、『街男 街女』で(太郎的なものから)脱皮した、というのが、現在の田島貴男かもしれない。
ちなみに、『自分の中に毒を持て』は夏ごろに読んだ。2004年に読んだ本の中では、5本の指に入る名作だと思うが、この本を手放しに褒めることは、自分の今の生き方を否定することになり兼ねない。そういった意味で、感想を書きにくかったため、この日記では感想を書かなかった。でも、凄く面白い本なので、未読の方は是非。