Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

『東京 飛行』を語る(1)〜13号室からの眺め

東京 飛行

東京 飛行

今回のアルバム、非常にいい。とにかくいい。
全体について言葉を練ると、悩んだ挙句、機を逃す可能性が高いので、一曲ずつ感想を述べていく。*1
さて、輝かしい一曲目は、6曲目の「13号室からの眺め」。
田島貴男研究家にとって、『東京 飛行』を語る上で、一つのテーマとなるのは、曲順。田島貴男が「アルバム編集時に珍しく曲順で迷った」という発言をしていることから、別候補として、どういう曲順があったのか、という点だ。
一つの案として、自分は、"「13号室からの眺め」一曲目"説を挙げる。
そもそも、「13号室からの眺め」というのは、今年夏のSHIBUYA-AXでのツアータイトルで、そのとき披露された3曲のうちの一曲。
アルバム発売前のライヴで演奏した曲というのは、田島にとっての自信作でもあり、アルバムでも重要な位置を占めることが多い。現に、『街男 街女』や『ビッグクランチ』では、そういった曲が、アルバムAB両面の一曲目を飾っている。
また、こだわるようだが、『東京 飛行』は、オリジナル・ラヴの「13」枚目のアルバム*2であることを考えると、当所の意気込みとしては、新作の「名刺代わりの一枚」的な役割を果たす曲なのだと考えられる。
それが、オープニングを他に譲り、B面一曲目に位置した理由は二つある。*3
一つは、アルバム制作の(おそらく)後半になって(結局一曲目になる)「ジェンダー」という曲ができてしまったことである。歌詞の内容を考えると、まさに田島貴男進行形であり、アルバム全体のテーマも上手く圧縮して伝えた曲であることから一曲目としてふさわしい。
もう一つは、7曲目にある「明日の神話」である。アルバムに入れたら扱いに困るに違いないと思われた「龍」に「虎」をぶつけることで、龍が暴れるのを防ぐことに成功していると思う。歌詞カードでも仲良く隣同士だし。
ということで、結果的には上手く収まったと思う。もし、この曲が一曲目となった場合、岡本敏子の影響が強い(らしい)「ジェンダー」が「明日の神話」の隣という「濃すぎる事態」になる可能性もあったことを考えると、バランスの取れた配置だろう。
〜〜〜
さて、肝心の曲について。
田島貴男自身が語るように、今回のアルバムでは、人間の「弱さ」の部分に焦点が当てられている。

街に生きている人間が普通に感じている“浮遊感”、“不在感”、“疎外感”、“孤独”をこのアルバムで離陸させたい、そんなイメージです。夜に出会う自分の本当の顔、人に見られたくない顔を誰もが持っていて、このアルバムが鏡となってその表情を映し出し、音楽が鏡の向こう側からその魂を誘い出し、夜空に飛行させることができればと思います。

そんな中では、ひときわ「強さ」を感じる、異彩を放つナンバーである。

喉が裂けるほど叫びなさい
互いに呼び合ったりしながら さあ
もっともっとからだを揺すりなさい
地上を揺らすのさふたりでほら さあ

ほかにも「後悔はさせないよ さあ」などと妙に自信に満ち溢れて高圧的な態度。田島貴男版「イジメテミタイ」かよ、と思わせるようなエロティックな歌詞。
この歌詞は、ちょっと新機軸でツボに入る。やっぱり「叫びなさい」「揺すりなさい」がいい。*4
アルバムの中では「弱さ」のひとつとしての「強がり」や、支配−従属が激しく入れ替わる男女関係に言及したかったものだと思うが、全体の中でのアクセントとしての「強さ」は非常に効いている。
(唐突に次回に続く)

*1:ここら辺の主旨は、hiroharuさんと被ったっぽくて少し不安。→http://ameblo.jp/hiroharu/entry-10021949489.htmlしかも文才や音楽知識を考えると、自分の方が途中でやる気をなくしてしまう可能性さえあり・・・。

*2:前作はカバーアルバムなので、これをカウントすると14枚目になるので、微妙なのである。originalovebeerさんも態度保留のよう→http://originallove.g.hatena.ne.jp/originalovebeer/20061206/p1

*3:断言していますが、オープニングを他に譲った経緯自体が妄想です。(笑)

*4:こう書くと何だか「泣きなさい笑いなさい」みたいですが