Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

芥川賞補足

文藝春秋、買ってよかった。と思った。
今日まで選評と受賞者インタビューが掲載されていることを知らなかった。どれどれ、仏教特集でも読むか、と思ってページをめくって発見。これも読み応えがあった。りさたむフローチャートでもそう書いたように、二つの芥川賞作品はどちらも私小説的な作品なので、インタビューと合わせて読むのが正しい読み方だろう。以下インタビューの感想。

金原ひとみ。すごく面白い人生。「小学校4年生から不登校になり、学校の終わる時間になると、友達とカラオケに行っていた」「中学生の時は、吉祥寺や歌舞伎町で遊んで暮らしていた」「高校のときはスロットで生活していた」とか、自分に全くない物を多数持っている。話の中で挙がっている小説が、村上龍山田詠美花村萬月、とさもありなんという作品ばかりだったが、僕はこの人の生き方には、とても勝てないなあ。

綿矢りさ。やはりこの人は、コピーライターになるつもりだ。最年少受賞ということに対する感想を聞かれて、「語呂がいいですよね。見出しに使いやすい」と答えているのを見て、やっぱりねとひとり悦に入る。昨日、書き忘れたが、主人公の相手の男の子の名前は「にな川」。主人公が「蜷」の漢字を思い浮かばないため、一人称小説の中でこういう表記になるのだが、明らかに読者の受ける微妙な違和感を狙ったものだ。「にな川」の敬愛するアイドル「オリチャン」も考え抜かれたネーミングだと思う。
選評では「ちょっと死相出てた」が取り上げられていたが、僕はやっぱり「てろっと舐めた」が好きな表現だ。でも全体的には、「幼さばかりが目につく文章」という三浦哲郎氏の評価がしっくり来る。僕の印象は、テレビで、「詩のボクシング」高校生大会を見たときの印象に非常に近い。「頑張っている感」が伝わってきて応援したくなる。そんな小説。(それは、金原ひとみに対する印象とは正反対のものだ。)
インタビューに戻るが、この人も自分の読んだ小説として挙げるのが、『ぐりとぐら』に始まり山田詠美、両村上、吉本ばなな、と王道ばかりで非常につまらない。絶対に猫を被っているはずだ。丸尾末広が好きだ、とか、もっと変化球を投げて欲しい。