Yondaful Days!

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島本和彦『新・吼えろペン 5巻』★★★★★

新吼えろペン 5 (サンデーGXコミックス)

新吼えろペン 5 (サンデーGXコミックス)

続編マンガの5巻だろうが、全ての人にオススメする大傑作だと思う。
最近の『吼えろペン』は面白いものの、漫画家としての楽屋オチみたいな内容も多く、今ひとつ入り込めない内容が続いた。しかし、今回は、全ての仕事人に通用する悩みがテーマになっている。

収録されている3つの話は、それぞれ別の話だが、作者の相反する想いがぶつかりあっていることが共通している。これは、第19話「成功への決意」でのアシスタント・マルピーの台詞に端的に示されている。「先生は、売れたいんですか?ええ作品を書きたいんですか?どっちですか?ふたつは選べませんよ!」
炎尾燃(つまりは島本和彦)の答えは、結局どっちつかずなのだが、マルピーは「せやからアカンのですよ先生!!売れるモンを書かんと!」と決意し、事務所を出て行く。

特に、漫画家は、売れている作家ほど「自分の書きたいのはこういう作品じゃない」と思い悩むものらしい。しかし、自身の作品に納得が行かずにアルバム発売時期を二度も延期させて、なお悩む売れっ子ミュージシャンに炎尾燃がぶつける言葉(第16話「よみがえった楽曲自信」)が物凄い。
「キミに足りないのは勇気だ!駄作をつくる勇気だ!」
「駄作で金をもらってこそ本当のプロ!納得の行く仕事だと?笑わせるな。」
その心は、駄作覚悟で出した作品が、案外ファンの心を捉えたりするものだから、自分自身のハードルは下げて「3回のうち1回いいものができればOK」という気持ちで臨むべきだ、ということ。
結局、一般の仕事以上に、漫画家は「締め切り」が重要な意味をもち、限られた期限内にどれだけいいものを出せるか、という中で日々自問自答しているからこそ、出た言葉なのだろう。
ちなみに二つ目の話は、新しいマンガ雑誌の編集長を引き受けた炎尾が、締め切りを守らない漫画家たちを泣きながら殴る展開が最高!
「おれはお前を殴っているんじゃない!!おそらくおれ自身を殴っているんだ!」

もうね、あれですよ。これまで島本和彦のマンガを買ったこと無い人もみんな買って下さい。
そして、まだ聞いたこと無い人は、島本和彦の熱い肉声「サンタになれ!」を聞いて、やる気を出してください。http://www.geocities.jp/mes_chansons/simamoto.html
僕も久しぶりに聞いて、かなりのやる気が湧いてきました。