Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

smtで映画を見る


映画(短編アニメ作品)の無料上映会があるというので、仙台中心部、定禅寺通りにあるせんだいメディアテーク(略称:smt)に行った。

12月は、毎日映画コンクールのなかに1962年から創設されている「大藤信郎賞」受賞作から親子で楽しめる作品を上映します。この賞は、日本のアニメーションのさきがけである大藤信郎の業績をたたえて優れたアニメーション映画に贈られるものです。

ようたは、途中何度か「出る」と言ったものの、何とかなだめて、1時間20分くらいの上映時間を耐え抜いた。館内が暗くなるのは全然大丈夫のようだ。
さて、それぞれの作品について。

『ふしぎなくすり』(監督:岡本忠成/日本/1965年/15分)

1965年ということは40年以上前ということもあり、古さは隠しきれない。特にウルトラマンの基地内で聞こえる電子音をさらに耳障りにした機械音が多いと感じた。また、人形たちが取っ組み合いのけんかをするときなどに出る漫画的な表現自体も古く、全体的に、素直に楽しめなかった。ストーリーは星新一原作の作品ということで、オチ自体には文句は無いが、15分引っ張って、このオチかという部分もあり。

『やさしいライオン』(監督:やなせたかし/日本/1969年/27分)

今回、一番期待していた作品。自分は知らなかったのだが、中村一義率いる100sの「やさしいライオン」は、これをモチーフにしてつくった歌だという事前知識を入手していたので。
しかし、これも古い。全編に渡って、デュークエイセス風の歌が挟まるのは、まあいい。ただ、やはり長さが問題なのかもしれない。
特にここ1年ほどは、かなりの本数の5分アニメ(カペリートうっかりペネロペトムトムブーなど)を見ているせいもあって、目が肥えているというか毒されているというところはあるが、2006年だったら、同じ内容の作品を10分番組でつくるだろうと思う。
『やさしいライオン』のつくられた1969年に娯楽が少なかったというつもりはないが、現代ほど多くなかった。そして、現代人は皆「急いでいる」。「やさしいライオン」も「ふしぎなくすり」も、いわゆる「長回し」なのではないかと思ったのだ。今のアニメなら、もっと短くカメラの視点を変えたカット割で構成するし、間に挟まる歌も最小限に抑えるだろう。今のテレビ番組は、視聴者を「いかに飽きさせないか」という部分で、絶え間ない努力*1を続けており、そこら辺のセオリーがかなり蓄積されているのだろう。そして60年代に「それ」は無かった。
まあ、どれほど意味があるかは別として、NHK教育の5分アニメは相当に「洗練」された作品群なのだと肌に感じた。
内容はといえば、

ある国のどうぶつえんに、親をなくしたライオンの子どもがいました。そのライオンのなまえはブルブル。また、犬のムクムクはじぶんの子どもがしんでかなしんでいました。そこで、ムクムクはライオンのぶるぶるをそだてることになりました。ムクムクはいつもブルブルにこもりうたを歌って聞かせました。そして、ムクムクよりも大きくそだったライオンのブルブルは、ほかのどうぶつえんに連れて行かれてしまいます。でも、ムクムクのこもりうたがわすれられません。

このあとは、ちょっと暗い話になる。
そもそも、はじめは、大自然の中での話かと思っていたのに「動物園」。その後、舞台は「サーカス」へ。さらにその後は、ブルブルに、「理不尽な最期」が訪れる。(ムクムクの最期を感じてサーカスの檻を破り脱走して数年ぶりに「母」に会えたブルブル。しかし、二匹に警官隊がライフルを発射する)というように、視点が、「自然」から「人間社会」へ、と移っていくのがポイント。原作ではどうかわからないが、映画では、「人間社会批判」というよりは、仏教的な殺生の感覚に近いかたちで語られていたように思う。
ちょっと難しい話だが、小さい頃から、こういう感覚は養っていった方がいいかもしれない。

『銀河の魚』(ぎんがのうお)(監督:たむらしげる/日本/1993年/24分)

そして、最後は、時代は飛んで1993年の作品。
これはよかった。
かなりゆっくりした作品だが、上の観点でいえば、飽きないくらいのカットの長さと視点の変化。ボートを漕ぐ音などの自然音を基調にしたBGM。配色もうまく、前2作に感じていた居心地の悪さは解消した。
内容はsmtの紹介文をそのまま引用すると以下の通り。

おじいさんとまごのユーリーは、みずうみのなかにある小さな島にすんでいます。ある日、空を見ていてこぐま座のちかくの星がひとつふえていることに気がつきました。夜空になにかたいへんなことがおきていると気がついたふたりは、それをしらべるためにボートで空へむかい、知り合いの魔法つかいに会います。魔法つかいが教えてくれたのは、おおきな魚の怪物が空の星を食べつくそうとしているということでした。ユーリーはその魚たいじをたのまれます。

ただ、内容というより、世界観が素晴らしい。
ユーリーが住んでいるのは宇宙に浮かぶ湖。
天の川にすむ星魚(せいぎょ)を銛で捕って暮らす生活。
流れ星がみずうみに落ちる音。
先日の仙台市天文台プラネタリウムに続いて、宇宙を身近に感じたひとときだった。
全く知らなかったが、原作は絵本作家のたむらしげる。1949年生まれというから自分の父親と同年代といえるだろう。作品の印象からはもっと若い人だと思っただけに意外。
著作には、稲垣足穂作品もあるようで、いろいろと追っかけてみたい人。

一千一秒物語

一千一秒物語

ちなみにスキマスイッチのジャケを担当している塩田雅紀とテイストが似ているかなあ、と思ったが、少し検索した限りでは無関係のようだ。

総評

非常にいい機会だったし内容もよかった。
周りも子連れなので、あまり気を使わなかったが、周りがシーンと静まり返ると、ようたも雰囲気を察して、喋らないようになっていた。
また、目の不自由な方も楽しめる音声解説、耳の不自由な方も楽しめる日本語字幕がついた上映会ということだったのだが、こういうボランティア活動が行われていることを知るという意味でもよかった。
せんだいメディアテークは、結構意欲的に現代芸術などの紹介を行っているようで、今後も訪れる機会を増やしたいところだ。

*1:例えば、お笑い番組でも「字幕」をつけるなどの、視聴者にわかりやすい工夫(笑)もそれに入る。そう思うと一長一短なのだが。