Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

日経概観6/24(日)

日曜日だけ日経新聞を購入して、社会勉強に励むコーナー。

金保険料 横領、全国で実態調査/社保庁消えた年金」究明(1面)

金保険料の一部を収納担当の職員が横領している事例があるとして、社会保険庁は全国の実態調査を始めた。保険料横領は発覚している分だけで2002年までに1億1000万円を超すと判明、未発覚のケースもあると見られる。社保庁は市区町村職員を調査する方針だが、同庁の地方出先機関も対象になる可能性がある。保険料横領は、払ったはずの保険料納付記録がなくなっている「消えた年金」などの一因とみられる。調査と情報公開を急ぐ必要がありそうだ。

取り上げられている半田(愛知県)の事例では「職員が架空の人物などの虚偽の記録を作成。自ら開いた金融機関の口座に年金を振り込ませた」そうだ。
これは丸っきり犯罪なのでは?
にもかかわらず、「社会保険庁は調査の終了時期を示していないうえ結果の情報開示には消極的な姿勢」だという。まあ、「これからは残業をやるぞ」という意気込みを発表しただけで記事になるような組織だから、身内の悪事が暴かれるような(自らの首を絞めるような)調査は永遠に後回しということなのでしょう。
記事では、総務省内に発足した二つの委員会の主導調査を求めたいとなっているが、社保庁に任せたら、また何かやらかすから仕方ないのでしょう。社保庁職員の前に年金手帳を置くな!というやつですね。*1
久しぶりに心が荒んだ。

産業としての「農」へ/脱・政治依存(1面:成長を考える 第7部 糧になるものは4)

新しい取り組みの例として以下の二つが紹介されている。

  • 愛媛銀行による国内初の農業ファンド
  • 多様な人間を受け入れているワタミファーム

前者は、地域のしがらみや農協依存から離れた農業という点で重要。後者も「外部」の人間を取り込むアクションであり、両者とも、身内のみでは規模が縮小するばかり、ということだろう。
最後に、「農業に地域の保護は必要か」という話題が取り上げられている。

  • 保護政策そのものが悪いわけではない
  • 高関税で輸入をせき止めるような政策から脱する必要がある
  • 農業保護は欧米も手厚いが、日本は「国際競争力引き上げ」という視点が欠けていた

という結論には納得できる。ただ、まだまだ障害は大きいのだろう。この結論部については中国へのコメ輸出について取り上げられた、23面記事でも同じような言及があった。(野菜の輸出を進めるためには、輸入品の関税引き下げなども避けて通れない。)

みのポリティクスの時代(2面・風見鶏)

テレビで最も影響力の大きいオピニオン・リーダーとして、みのもんたを挙げ、政治とテレビの関係のひとつとして、学生とともに「朝ズバッ!」の研究に取り組む逢坂巌・東大大学院助手の研究を取り上げる。
以下感想だが、なんだかよくわからない。日経新聞が取り上げる記事だろうか?テレビと政治の関係を取り上げる意味はあるが、そこで、みのもんたの個人名を出す理由がわからない。不二家の事件があったのも、「朝ズバッ!」だし、むしろ視聴者への悪影響を追及されてもいい番組と司会者だと思う。

⇒補足:いつも読んでいる泥酔論説委員も同意見でした。それだけで嬉しい!

みの氏でも誰でも公に発言する以上、自分の言葉に責任を持つのが当たり前ですが、責任は回避して言いっ放しってのだと、早々にメッキが剥がれるのは当然なんですが、これに全く気が付かない西田委員ってのも相当感度が悪いと思わざるを得ません。

カード大手、休眠会員削減・利用者側も選別重要に(3面)

クレジットカードや信販各社が、カードをほとんど利用しない「休眠会員」の整理に乗り出した。年会費の有料化や提携カードの縮小などによって「発行枚数=量」から「採算性=質」への転換を図る。長期間利用しないと思いがけず会費を請求されたり、使えなくなったりする可能性もあるため、使わないカードを持っている人は注意が必要だ。

記事によれば

法改正に伴ってキャッシング依存の収益構造は崩壊。カード一枚当たりの維持管理コストは保険料や郵送料などで「最低でも年1300円以上かかる」(大手カード会社)

とのことなので、年会費としては2000円程度必要ということになるようだ。(ソニー系のカード会社は実施済み)
無意味に不使用カードが残っていると怖いので、これこそ、社会保険庁の職員によって、消されておいてほしい。

EU憲法、修正で合意

 【ブリュッセル=岐部秀光】欧州連合(EU)加盟国は首脳会議での合意を受け、憲法条約に代わる新たな「改革条約」に年内に調印する。新条約の発効で外交政策の共通化や政策決定の効率化が進み、経済主体のEUの権限が外交・政治分野に広がる。バルカン諸国との加盟交渉も具体化するとみられる。EUは約2年にわたる混乱や停滞に終止符を打ち、政治統合や拡大を再開する道筋をつけた。

本日の社説でも取り上げられているが、これからは主要国との二国間だけでなく、EU全体との関係強化が必要になるとのこと。
なお、EU条約修正のポイントとして「採用した項目」「削除した項目」の表があるが、削除の方に「EUの歌、旗の規定」というのがあるが、これは難しいよなあ。
ちなみに、日本国歌は、2008年から変わるみたいですね。

大切な無為の時間(13面:セカンドステージ・遠みち近みち)

  • ヘンリー・フォード「始終仕事ばかりしていると、頭の働きが鈍くなる」(『藁のハンドル』)
  • 河合隼雄「真の創造においては無為でいることが必要」
  • 本田宗一郎「これからの日本がどうなっていくのか傍観する。とりあえず一年間は遊んで暮らす」(終戦後、1年間仕事をしなかった)

これらの事例をもって、ワーク・ライフ・バランスのためには「人生は長い。時には立ち止まってみることも大切」というのが結論。なのだが、そう言い切る自信がなかったようで、一番最後に以下の文を引用している。

はっきり言って、本田宗一郎の事例が特にそうだが、ワーク・ライフ・バランスを話題とする文章に取り上げるには、適切でない文が勢ぞろいだ。
こういう文章を書く上司こそが、部下に仕事を押し付けてまで、自分の週末の「無為」を大切にしているのではないか?と勘ぐってしまう。

出したCO2は寄付で相殺(15面:家計・くらしナビ)

カーボンオフセットについての国内外の取り組みとして、航空券への料金に上乗せする制度(BA、スカンジナビア航空)、旅行中に発生するCO2を見込んだ旅行商品(JTB関東)が紹介されている。
結局、料金上乗せが一番意味のある対策だと思う。

ドストエフスキーの季節 テーマと倫理観に今日性(23面:読書)

やはりというべきか、新訳の『カラマーゾフの兄弟』『地下室の手記』が大ヒットのようだ。
後者はよく知らなかったが、サルトルカミュウディ・アレンにまで影響を与えた作品だという。
多くの人が文章を寄せた以下の本も紹介されており、食指が動いたが、2000円以上の本はさすがに気軽に買えない。無理無理。

21世紀 ドストエフスキーがやってくる

21世紀 ドストエフスキーがやってくる

時を費やす懲りない面々/環境立国を遅らせるもの(中外時評)

非常に共感できる文章。
「懲りない面々」の正体は、官僚と財界(+政治)である。いわゆる「抵抗勢力」ということになる。
前半部では、市民の環境意識が高いといわれているドイツでも、さまざまな既得権益と格闘しながら環境政策を進めている、という事例が紹介されている。その格闘・軋轢から逃げっぱなしの日本は小手先の帳尻あわせに終始していたのではないか、としている。
また、後半部では、EU全域から米国7州が合流を決め、GEやデュポンなどの大企業が合流を模索している、英国が確立したキャップ・アンド・トレードという排出権取引の制度が取り上げられている。
まとめの部分を長く引用する。

いかなるキャップにも反対とかたくなに炭素市場を拒否する日本経団連経済産業省。日本は完全に置いてきぼりである。(中略)
通産省は異説を唱えて水俣病の原因特定を十年間遅らせ、チッソの垂れ流しも止めず、その間に多数の重症患者を出した。
同じく開発事業の環境影響評価の法制化にも十数年反対し続けて、先進国では最後の導入となった。そして京都からの失われた十年。賢く先が読めるはずの秀才官僚が、環境ではただむなしく時を費やしている。

つまり、自分が過去のエントリで言いたかったことって、これなのだ。
⇒過去日記:滑稽と言わせないエコライフ

*1:前も登場しましたが、長井秀和の「ジャッキーチェンの周りにイスや机を置くな」というネタです。