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ジェシカ・ウィリアムズ『世界を見る目が変わる50の事実』

世界を見る目が変わる50の事実

世界を見る目が変わる50の事実

図書館で新しそうと思って借りてきたが、やや古い本だったのが残念。
目次は以下。

1 日本女性の平均寿命は84歳。ボツワナ人の平均寿命は39歳
2 肥満の人の3人に1人は発展途上国に住んでいる
3 先進国で最も妊娠率が高いのは、米国と英国の10代
4 中国では4400万人の女性が行方不明
5 ブラジルには軍人よりも化粧品の訪問販売員のほうがたくさんいる
6 世界の死刑執行の81%はわずか三カ国に集中している。中国、イラン、米国である
7 英国のスーパーマーケットは政府よりも多くの個人情報をもっている
8 EUの牛は一頭につき1日2.5ドルの助成金を受け取る。年額にすると世界旅行が可能だ
9 70カ国以上で同性愛は違法、9ヵ国で死刑になる
10 世界の5人に1人は1日1ドル未満で暮らしている
11 ロシアで家庭内暴力のために殺される女性は、毎年12000人を超える
12 2001年、何らかの形成外科手術を受けたアメリカ人は1320万人
13 地雷によって、毎時間一人は死傷している
14 インドでは4400万人の児童が働かされている
15 先進国の国民は年間に7キロの食品添加物を食べている
16 タイガー・ウッズが帽子をかぶって得るスポンサー料は、1日当たり55000ドル。その帽子を作る工場労働者の年収の38年分
17 米国で摂食障害を患っている女性は700万人、男性は100万人
18 英国の15歳の半数はドラッグ体験済み。4分の1は喫煙常習者
19 ワシントンDCで働くロビイストは67000人。連邦議員1人に対し125人
20 自動車は毎分、2人を殺している
21 1977年以降、北米の中絶病院では八万件近い暴力事件や騒乱が起きている
22 マクドナルドの黄色いアーチがわかる人は88%。キリスト教の十字架はたった54%
23 ケニアでは家計の3分の1が賄賂に使われる
24 世界の違法ドラッグの市場規模は4000億ドル。製薬市場とほぼ同じ
25 アメリカ人の三人に一人は、エイリアンがすでに地球に来たと信じている
26 拷問は150カ国以上で行なわれている
27 世界では7人に1人が日々飢えている
28 今日の米国に生まれる黒人新生児の3人に1人は刑務所に送られる
29 世界で3人に1人は戦時下に暮らしている
30 2040年に原油は枯渇するかもしれない
31 世界の喫煙者の82%は発展途上国の国民
32 世界の人口の70%以上は電話を使ったことがない
33 近年の武力紛争の4分の1は天然資源がらみ
34 アフリカのHIV陽性患者は約3000万人
35 毎年、10の言語が消滅している
36 武力紛争による死者よりも自殺者のほうが多い
37 米国で、銃を持って登校し退学になる生徒の数は、平均して週に88人
38 世界には「良心の囚人」が少なくとも30万人いる
39 毎年、200万人の女性が性器切除される
40 世界中の紛争地帯で戦う子供兵は30万人
41 英国では総選挙の投票者数よりも、テレビ番組でアイドル選びに投票した人のほうが多い
42 米国のポルノ産業の規模は年間100億ドル。海外援助額と同じである
43 2003年、米国の防衛費は約3960億ドル。「ならず者国家」7カ国の防衛費総計の33倍
44 世界にはいまも2700万人の奴隷がいる
45 アメリカ人が捨てるプラスチック・ボトルは一時間に250万本。並べると、3週間分で月に達する
46 ロンドンの住民は、監視カメラで1日300回撮影される
47 毎年、西欧向けに人身売買される女性は12万人
48 英国で売られるニュージーランド産キウイは、その重量の5倍の温室効果ガスを排出している
49 米国は国連に10億ドル以上の未払い金がある
50 貧困家庭の子供たちは、富裕家庭の子供たちに比べて、3倍も精神病にかかりやすい

目次を見てもわかるし、Amazonレビューでも何人かの方が書かれているように、全体の論調は、リベラル的なスタンスで、内容としては反グローバリゼーションに関連することが多い。やや主張の押し付けを感じる部分もあるが、論理展開が突飛なところはなく、読みやすい。
あとがきで、この本を書くにあたり、ひとつのテーマを掘り下げるやり方もあったが、多くの事実を浅く取り上げるやり方を選んだ、との主旨が示されていたが、それぞれの項目についての記述は、浅いものではなく勉強になる。
ただし、項目がバラバラに配置されていることで、そのつながりがよくわからない、もしくは矛盾しているのでは?という部分もあった。
たとえば以下の二つ。

8 EUの牛は一頭につき1日2.5ドルの助成金を受け取る。年額にすると世界旅行が可能だ
48 英国で売られるニュージーランド産キウイは、その重量の5倍の温室効果ガスを排出している

「8」では、EUの過剰な農業保護政策の問題を取り上げ、「48」では、「フードマイレージ」的な観点から、地元の旬の生産品を食べることの必要性を説いている。
これだけ見ると、「自由化を進めて、安い海外産の農産物を買え!」「でも環境を考えて自国の食品を食べるようにしろ!」という矛盾したメッセージが込められているように思える。
しかし、「8」を読むと、日本で問題になることの多い「輸入」ではなく、「輸出」の問題であることがわかる。つまり、EUの手厚い農業保護のせいで、後進国の農業(モザンビークの砂糖など)が海外に進出できない、ということだ。
著者は英国人であるため、本書の中で取り上げられることの少ない日本が、「8」では、EUよりも牛に対する助成金の多い国として言及されているが、これはミスリードだろう。(日本の助成金は、日本国外での牛の売買にほとんど影響しないので)
したがって、この問題については、自国の食糧自給を保つためには、一定の農業保護は必要になる、という観点から論じられるべきだと感じた。
・・・と自分で書いていて、かなりわかりにくい文章なので別のサイトから引用する。

 EUは輸入国であると同時に輸出国であり、砂糖の輸出が問題とされる。EUのCAP(共通農業政策)はEU全体予算の40%に及んでいるが、「砂糖農家と加工業者に対して、砂糖の世界市場価格の4倍が支払われており、400万トンの余剰生産につながっている。この余剰分は、一握りの砂糖加工業者に対して支払われる10億ドルを超える輸出補助金の補償を受けて、世界市場で投げ売りされる。その結果欧州は、比較優位性のまったくないはずの産品の世界第2位の輸出元となっている。」(国連開発計画「人間開発報告書2005」)

 米国の綿花補助も似たような状況にある。「米国農務省の推計によると、同国の2万戸の綿花農家に対して支払う額は47億ドルに上るという。これは綿花の市場取引額総額に匹敵する額で、...これらの補助金によって世界価格が9〜13%引き下げられている上、米国の生産者が綿花輸出全体の3分の1を占め、世界の綿花輸出市場を支配している。」(同上)

 EUや米国のこうした農業保護によって、途上国のブラジル、タイ、南アフリカモザンビークの砂糖生産者、西アフリカのブルキナファソやマリの小規模綿花生産者は大変な被害を受けているのである。

これが「輸出国」の農業保護の問題点である。

日本のコメは、補助金によって国際市場に安く輸出されているわけではななく、高い関税で安いコメが入ってくるのを防いでいるのみである。PSEに反映する農業保護という点では同じでも性格が大いに異なると言わねばならないのである。

ということで、やはり農業の問題は難しいと感じる。