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パズルで告白!〜東田大志『パズル学入門』

パズル学入門――パズルで愛を伝えよう (岩波ジュニア新書)

パズル学入門――パズルで愛を伝えよう (岩波ジュニア新書)

「ビラがパズルの人」の本。
この人は最近ニュースにもなった人で京都大学の大学院生。

日本でただ1人のパズル学研究者として知られる京都大学院生がいる。人間・環境学研究科博士課程3年の東田大志さん(27)。パズルの楽しさをPRしようと、4年前から自作パズル付きビラ配り活動を全国各地で繰り広げ、来月に行う横浜での活動で「全国制覇」を達成する。

ブログ(タイトルは、ずばり「ビラがパズルの人オフィシャルブログ」)を見ると、さらに、その精力的な活動が分かる。と同時に、一体この人は何をやりたいんだろう?という疑問で頭がいっぱいになる(笑)


で、その謎が解けるのがこの一冊。
第1章、2章、4章で、パズルの歴史や分類、これからの発展について述べ、第5章、6章で、自ら作成したパズルの出題やパズルの作り方について説明を加えながらも、メインテーマは「第3章 パズルでコミュニケーション」であり、本書の副題の「パズルで愛を伝えよう」だ。
『パズル通信二コリ』の安福良直編集長の言葉「できあがった問題には必ず作った人の個性が表れてくる」を引きあいに出しながら、芸術作品としてのパズルについての説明が、まずなされる。次に、東田さんは、作者にとってパズルを製作するとは、単に問題をつくるだけでなく、「どうやって自分の作った問題を世間に発信していくかということ」までを含んでいるのだという。その手段としてビラ配りがあり、ビラ配り活動を通して、さまざまな人と交流を重ねているというのが、特殊な形だとは思うが、確かに立派なコミュニケーションだ。そして「愛」についてまで語ってしまうのは驚きだが、高校時代に実践しているのは本当にすごい。

恥ずかしい話ですが、わたしはパズルを作るようになって間もない高校生のとき、クロスワードパズルで好きな女の子に告白しようとしたことがあります。そのクロスワードパズルは、解き終わると対角線上に「ツキアツテクダサイ」という文字が並ぶはずでした。しかし、実際に出題してみたところ、難しすぎたのか「解けない」と返ってきました。P60


先日紹介したファイ・ブレインでは、パズルが「美しい」とか「優しい」とか「愛がこもっている」等の表現がたくさん出てきて、やや寒いような気持ちもしていたが、これを読んで納得した気分だ。パズルでのコミュニケーションのために、モザンビークにパズルを教えに行ったエピソードも含めて、とにかくスケールが大きいし、楽しい。
岩波ジュニア新書ということで、軽い気持ちで読み始め、はじめは笑ってしまう部分もありましたが、読後の今は、その壮大な夢を応援したい気持ちでいっぱいです。

日本を回り終えたら、次はぜひ世界各地でビラ配りをしたいと思っています。きっと、世界中の人とコミュニケーションが取れるに違いありません。
そして、最終目標はもちろん宇宙でのビラ配りです。わたしの生きている間に宇宙開発が進み、宇宙人が発見されたなら、太陽系惑星やその外側のカイパーベルト天体でビラ配りをしたいと思っています。P56


なお、実際にパズルの中に人間が入り込むボディパズルの一種として「リアル脱出ゲーム」について取り上げられていました。ここでは、リアル脱出ゲームの人気を受けて「脱出ゲームDERO!」が始まったとされています。これらについて、個人で活動することの多かったパズル作家の連携・協力が必要となるとの指摘は、その通りなのでしょう。(P36〜37)