Yondaful Days!

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この時機を狙ってた!〜羽海野チカ『3月のライオン』(1)

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

タイトルの「3月のライオン」の由来は…。
棋士にとっては3月は順位戦の結果の出る時期であり、「進退の掛かった棋士はライオンのようになる」ことから“March comes in like a lion and goes out like a lamb. ”(『三月は獅子のようにやって来て、羊のように去っていく(3月は荒々しい気候とともに始まり、穏やかな気候で終わる)』)というイギリスのことわざの一部より取られているそうだ。
Wikipediaからの引用だが。


だから、ちょうど順位戦の結果が出て、これから名人戦の始まる2013年の3月に読みはじめる、というのは、あり得ないほどベストのタイミング。
実は、この漫画は、3年ほど前に途中まで読み進めている。今回読み返しても一巻はやや暗めに始まるから仕方ないとして、2巻、3巻と巻を進めて話が広がっていたところで一度読むのを中断してしまっていた。
今回読み直してみてその判断は間違っていなかったと思う。プロ棋士とは何かという核の部分がよく分かっていなかったからだ。というのは『3月のライオン』は、この手の漫画にしては不親切で、ストーリーの中では、プロ棋士の制度や生活について手取り足取り教えてはくれない。登場人物同士のやり取りから何となく掴んでいくしかない。しかも、『ハチミツとクローバー』の美大生のイメージが残っていると、さらにプロ棋士とは何かがうすぼんやりしたものとなる。
だから、電王戦にも登場する実際の新四段の人間を見て、『聖の青春』(途中です)で、彼らの生活の一端を知り、順位戦の結果から昇級・降級の弱肉強食の世界を覗き、プロ棋士について自分の中のイメージを作ってから再び読み始めたのは、本当に正解だった。


そしてもう一つ。『聖の青春』*1を読み、モデルである実在の棋士村山聖の人生に猛烈に感動している最中に再び出会った二階堂。「こっちの聖」には「じいや」がいて、よかったなあ!と安心しつつ、その活躍を祈るような気持ちで見ている。
そんなこんなで、以前とは全く違った気持ちでこの漫画と向き合うことが出来ている。
まさに狙い通りのタイミング。2年前の気持ちで読み進めていたら、この漫画を「消費」していた。あのまま読み進めないで本当に良かったと思う。


漫画の内容に一切触れることが出来なかったけど、一点だけ。
ハチミツとクローバー』もそうだったけど、羽海野チカの描く食べ物は本当に美味しそう。それは食卓を囲む皆が笑顔だからだ。
そして、ハッとするあかりさんの胸元。夜の顔と昼の顔。
それら、つまり、食べ物と生活とお金。『3月のライオン』は、より「生きること」に焦点を当てた漫画だ。
3/23の電王戦初戦に登場する18歳の阿部光瑠四段(C級2組)は、日々どんな暮らしをしているんだろうか。そんなことまで気にしながら、楽しみにしている対「習甦」戦。その勝利を祈っています。

*1:実在の棋士村山聖の生涯を描くノンフィクション。現在読んでいるところ。