Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

託された幾百ものたすき〜羽海野チカ『3月のライオン』(8)

3月のライオン 8 (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン 8 (ヤングアニマルコミックス)

電王戦と合わせて読み進めた『3月のライオン』もやっと最新巻に追いついた。
8巻は、前半の4話「白い嵐」(2)〜(5)が、零と宗谷名人の記念対局。真ん中に、二階堂の「再始動」を挟んで後半4話「焼野が原」が、柳原棋匠と島田八段の棋匠戦の話。最後にスガシカオの曲タイトルそのままの「ここにいること」で夏の商店街のお祭りについての話が入る。最後の話では、いじめられて引っ越した「ちほちゃん」についても触れられる。相変わらずの盛り沢山なメニュー。


中でもメインは表紙にもなっている柳原棋匠の話。*1
表紙絵で何だろうと思っていた「紐」は、実際には「たすき」だった。先に引退したかつての仲間から託された幾百ものたすき。その中で、棋匠が力強く甦る様子は心を打つ。
ちょうど電王戦で見たばかりの塚田九段の入玉以降の執念を思い出す。
背負うものの多さが人を弱くし、強くするのだろう。

先崎学のライオン将棋コラム

コラムでは、先崎八段が、高齢の棋士について語り、自らの引退の可能性についても語っており、この巻のストーリー同様、なかなか熱くなるものがある。

  1. 何故…悪手を指してしまうのか…!?その理由は…
  2. 新たな一手を探して棋士は戦う…
  3. 益々元気な老棋士達…その秘密は…
  4. 将棋界の引退って、どういうものなの?

なお1回目のコラム「何故、悪手を指すか」の部分では、悪手がよく見られるシーンとして

  • ごくごく簡単な局面でのうっかりミス
  • 好手が一つしかない終盤(序盤は好手か悪手かが分かりにくい)

を挙げている。また悪手が出易い条件として

  • 秒読みのとき
  • 長考したとき
  • 勝ちになったと思った一瞬
  • 悪手を指したことに気がついて動揺したとき

を挙げている。いずれも、コンピュータ将棋に比べて、人間側に悪手が出易い理由になるのかもしれない、そういえば、あのシーンも…と思いながら読んでしまうのだった。

*1:正直に言えば、会長と柳原棋匠は、年齢が近く顔かたちも似ているため、やや区別がつきづらい部分はあったが、ここまでフィーチャーされれば、もう見分けがつく。