Yondaful Days!

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『エレクトリックセクシー』感想と初心者のためのオリジナル・ラブ過去作紹介

エレクトリックセクシー

エレクトリックセクシー

オリジナル・ラブ6/26発売のアルバム『エレクトリック・セクシー』。今回は会員先行発売で入手し早めに聴いていたのですが、実は最初はスーっと入ってきませんでした。
『白熱』のときは、メロディーやアレンジもですが、特に歌詞で納得感が高かったこともあり、熱中して聴けたのですが、今回、とにかく「アレンジ」が他よりも目立つアルバムで、そのアレンジにすぐに乗れなかったのが原因なのかもしれません。
しかし、聴き慣れればとても楽しいアルバムとなりました。


このアルバムは、前作『白熱』には全く似ていないアルバムで、前作との落差という点では、『ビッグクランチ』〜『ムーンストーン』くらいの落差があるかもしれません。しかし、だからこそ安心した面もあります。
というのは、田島貴男の最近のライヴ、ひとりソウルショウや弾き語りツアーの最近の完成度を見ていて、これとバンド演奏を交互にやっていけば、ずっと大丈夫なのではないか?(ファン目線w)、田島貴男は完成してしまったのではないか?とも思っていたからです。
しかし、田島貴男は転がり続けるのでした。今回のアルバムは、オリジナル・ラヴが(個人的に)一番熱かった『Desire』〜『ビッグクランチ』の頃を彷彿とさせます。アレンジの方向性が似ているということではなく、変化をやめず、常にファンを驚かせ続ける姿勢が一番よく現れていたからです。勿論、それ故に離れたファンも多数いることは分かっていますが、その姿勢をやめないことこそが田島貴男であり、オリジナル・ラブなのですから…。


ということで、『エレクトリック・セクシー』は大変好きなアルバムとなりましたが、この一枚では、オリジナル・ラブ田島貴男)とは、どういう音楽をやる人なのか全く分からないので、主に初心者の方に向けて、以下に一曲ごとのオススメアルバムを、(わけあって)最後の曲から逆順に紹介して行きます。

帰りのバス

アルバム最後の曲ですが、全くそれらしくないアレンジ。そして、少し変なメロディ。
歌詞は、ある意味90年代渋谷系の象徴だった「東京タワー」ではなく「スカイツリー」 が登場するということで印象深い曲です。
ところで、この曲はタイトルがズバリそのものですが、7曲目の「セーリングボート」と共通して「進む」のではなく「帰る」 「戻る」ことを描いた楽曲。オリジナルラブのアルバム最後には“僕らの旅のスタート”を歌った「ムーンストーン」のように、先に進む曲が来るイメージがあるので、ちょっと意外な感じがしました。「戻って行くのさ 君と」「ふたりでバスに乗って」という歌詞を深読みすると、色々とプライベートなことを邪推したりしてしまいますが、ここが「一人」ではないのも珍しいことではないでしょうか。
さて、東京タワーが出てくるオリジナル・ラヴの楽曲は名曲「流星都市」。収録アルバムは、これまた名盤『Rainbow Race』です。このアルバムは万人に自信を持ってオススメできるアルバム!

RAINBOW RACE

RAINBOW RACE

太陽を背に

ぼわっとエコーがかかるような風呂場スタイル。最初に聴いたときは気になりましたが、これは、フィル・スペクター風と解釈するようです。
以前もブログで触れましたが、歌詞の内容は、明確にスコップ団の活動*1をリスペクトしているものですが、「建築」とは異なり、普通は名前の残らない「土木」の分野に携わるものとしては最後の部分にはグッときます。

きっと記録に残らない者たちが働いて
いまここに 町があるんだ

終わりから2曲目ということも含めて、何かと前作『白熱』の「あたらしいふつう」を想起させる曲ですが、自分はメロディーとしては「太陽を背に」が好きかも。
ということで、前作『白熱』を聴いて、「太陽を背に」と「あたらしいふつう」はセットで堪能しましょう!

白熱

白熱

一撃アタック

個人的なイチオシ楽曲その1です。メロディも歌詞世界もシンプルでわかりやすいのが良いです。
弾き語りツアーのときには、田島本人が「謎の掛け声」と言っていた「Hey!」もいいし、珍しく歌ってみたい曲です。
さて、2番で全く聞いたこともない言葉が登場します。

はじめて手を握った
キミと踊ったリンガラ

Web辞書によれば、リンガラとは「コンゴ民主共和国(ザイール)のキンシャサで発達したポピュラー音楽」とのこと。わかんねー・・・と思いながら、以前もこんな風にして調べて、知らねー・・・と思ったことあったよね、と思いだします。

愛を込めたシギリーヤで夜明けまで踊り明かす

そうです。「ブロンコ」の“シギリーヤ”*2です。
「ブロンコ」収録のアルバムだと『Rainbow Race』で被ってしまいましたので、“Hey!”つながりで、オリジナル・ラヴを代表する迷曲「Hey!Space Cowboy!」収録の『踊る太陽』。このアルバムは、異論反論あると思いますが、個人的には積極的にオススメしません(笑)。異色作です。*3

踊る太陽

踊る太陽

セーリングボート

ちょうど先日、太平洋横断を試みて残念ながら失敗に終わった辛坊治郎さん。ボートの浸水原因がクジラの背にぶつかったことだという話が話題になっており、期せずして、社会とリンクした歌詞となりました。(勿論偶然です。笑)
この曲は、メロディとアレンジは聞きこむほどに面白いですが、歌詞がわかりにくいと思います。
特に変な構成だと思うのはブリッジ部分。イルカとクジラとジョーズイワシが出てきて、最後に灯台が出てくる謎展開がここに来ることで、単なる奇妙な歌としか聴けなくなります。ブリッジ部分は、主題を補強するような歌詞になっていて、そのあとに聴くサビが胸に迫るのを助ける、というのが、普通の曲展開のように思います。こういう、少し変な部分がオリジナル・ラブの良さであるような気もしていますが、まあ、多分、特に意味がないのでしょう。
意味がない歌詞、そして破天荒なタイトルが並んだアルバムといえば『ビッグクランチ』です。このアルバムは傑作ですが、聴く人選びますよ〜!怖いもの見たさでアルバム聴きたい人に是非!

ビッグクランチ

ビッグクランチ

きらめきヤングマン

ヤングマン」に「ウキウキ・ウェイクミーアップ」を掛け合わせたような、アルバムで一番ダサかっこいい楽曲です。
そして歌詞には特に意味がありません。そのことが「意味ありげで重たい歌ばかり聴かされ」「意味ありそうでぜんぜんない微笑みをたたえ」と歌われることで強調されている楽曲。
「きらめきヤングマン」「一撃アタック」など、太鼓ドンドコ系の楽曲を聞いていると、インディーズ時代の楽曲を思い出します。「クリスタル・バターランド」や「Mr. Big Rock」は、まさにそんな感じ。本人も言っていますが、アレンジもメロディも、何となく昔っぽいです。(メロディは「帰りのバス」がレッドカーテンっぽいか)

ニューアルバム「エレクトシックセクシー」のサウンドが、どれくらい新しいものなのかが、バンドで生演奏でやってみたらよく分かった。かなりかっこいいサウンドになってきている。「弾き語り」や「ひとりソウルショウ」とは全く別の世界だ。どことなくレッドカーテンの香りさえする。

ということで、実際に続けて聴いてみると、驚くほどシームレスな感じで聴けるアルバムです!

線と線

個人的なイチオシ楽曲その2です。
ツイッターフェイスブックでいうタイムラインに象徴させるネット空間を「線(タイムライン)」に喩え、そして、もう一つの線を個人と個人の境界線に喩えた内容で、歌詞の納得度は、アルバムの中で一番だと思います。聞き取りやすいし、メロディも少し歌謡曲ぽくて自分好みです。歌謡曲ぽいといえば、「線と線」を聞くと、どうしてもこの曲を連想してしまいます。(名曲です)

ところで、いま聴いてみると全然似てないのですが、最初に聴いたとき、イントロのリフは何となく「死の誘惑のブルース」を思い出させました。「死の誘惑のブルース」が入っているアルバム『街男 街女』は、これまた個人的にはオススメしにくいアルバムの類に入ります。が、五里霧中な感じの暗さがあり、そこが魅力でもあるアルバムです。ただし、ラスト2曲は超名曲です。

街男 街女

街男 街女

エナジーサプライ

アルバムを象徴するような一曲だと思います。とにかくメロディよりも歌詞よりもアレンジが強い。しかもカッコいい。
でも、よく読むと歌詞も面白く、エネルギー問題と栄養補給をほどよくミックスさせた内容となっています。
一方で、聞き取りにくく、空耳が続出している曲で、「ケーキは何でも食う!」*4は、自分の中では、このアルバムのキャッチフレーズと化しています。(笑)
アレンジが強く、食べ物が出てくる風刺色の強い曲という意味では、「大車輪」を思い出します。現在もちょくちょく演奏されて盛り上がるこの曲。「エナジーサプライ」も同様に盛り上がる一曲に育つのではないでしょうか。大大大傑作アルバム『L』収録です。

L

L

エブリデイエブリデイ

アルバムで聴いて、改めてこのシングルの完成度の高さを感じました。個人的な感覚では、過去のシングルの中には「どうしてこれが?」というものも多かったのですが、今回の2曲は「これしかない」2曲だったと思います。中でも、シンプルで分かりやすく、そして聞き取りやすい「エブリデイエブリデイ」はオリジナル・ラブの目指す“ポップス”に近い傑作曲だと思います。シングルとしての欠点はカップリングがないことくらい。
同じく爽やかなシングルで、タイトルが似ていて、カップリングがやや寂しい(笑)のも似ている「GOOD MORNING GOOD MORNING」。この曲の入った『ELEVEN GRAFFITI』は、今もよく演奏されるRBRとサーディンの2枚看板がある名作アルバムで、ライブの予習にもオススメです。

ELEVEN GRAFFITI

ELEVEN GRAFFITI

ファッション・アピール

何度も書くけど、「そこ、アーミーなのかなあ?」というところ*5以外は、かなり好きな曲となりました。そして、超弩級PV。素晴らしすぎます!

シングルとして最初に聴いたときの不満は、コーラスに対するものでした。「1日だけのヒーローとヒロイン」を歌う曲は、当然メインボーカルの男声に対して、女声コーラスだろう、という気持ちもあり、この曲の田島コーラスには、長い間、違和感があったのです。しかし、アルバムを通して聴くと、全く自然で何も問題がありませんでした。ただ、最強の2曲だからこそ、これは離すべきじゃなかったかなあ・・・という気持ちがあります。
その意味では、全く同じ問題を抱えたアルバム『ムーンストーン』。このアルバムは両A面シングルが1・2曲目に並ぶという、かなり意表をついた曲順になっています。(聴き慣れると大丈夫です。)実は自分はあまり好きではないのですが、このアルバムが一番好きという人もたくさんいますよね。

ムーンストーン

ムーンストーン

スーパースター

今回、曲順を逆に紹介したのは、一番「難あり」なこの曲が一曲目だからです。
決して自分が苦手なメロディではないのですが、一曲目に出てくるほどの勝負曲かというとそうではないだろう・・・と。卑近な例でいえば、「何で指原が総選挙1位なんだよ!」的な、釈然としない気持ちがあります。正直、1曲目にもっと強い曲が来ていたら、このアルバムは自分の中で大傑作アルバムとしての地位を占めていたと思います。が、そうはならなかった。
最も大きな理由は歌詞です。
この曲は、権威をかさに着て、誰かのことを叩いたり、言葉たくみにやっつけたりする人、具体的には大阪市の橋下市長のような人を「スーパースター」と揶揄する曲と考えてよいと思います。しかし、それがサビの「沈黙の Soul 走り出せ」とどうつながるのかは、よくわかりませんでした。単純に取れば、普段は語らない「正しい市民たち」に「動き出せ」と言っているようにも聞こえますが、そうだとすると、自分とは、かなり意見が違うなあと思ってしまいます。*6
ここでは深く突っ込みませんが、紹介アルバムは、やはり歌詞がどうしても気になる「ジェンダー*7が一曲目の『東京飛行』。このアルバムでは、『白熱』の前の、悩み続けたオリジナル・ラヴを見ることができます。あの頃は、ファンも一緒に悩んでいました。(笑)

東京 飛行

東京 飛行


ということで、オリジナル・ラヴ初心者のための、次に聴くアルバム紹介でした。多分、異論反論をお持ちの方がたくさんいると思いますので、コメント欄やツイッターで教えてもらえば、と思います。
そ・し・て、6/30からツアーが始まりますので、まだチケットを購入されていない方は是非!特に、最終日の会場は渋谷公会堂となりますので、是非、満員にして、バンド編成のオリジナル・ラブを迎えましょう!

*1:スコップ団についてはWikipediaを。田島は、過去数回、スコップ団と一緒に「太陽を背に」働いています。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%97%E5%9B%A3

*2:フラメンコに関連する音楽のようですね。>http://www2g.biglobe.ne.jp/~farruca/flhw.htm ちなみに、これも繰り返し書きますが、ずっと「愛を込めたCD屋で」だと思い込んでいました・・・

*3:『踊る太陽』についての印象については、こちらに少しまとめた文章を書いています。>http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20090714/OL

*4:正しい歌詞は「景気は何年もクール」

*5:歌詞の中で「モードこそ今を生きるアーミー」とありますが、いまいちアーミーの必然性が分かりません。

*6:補足すれば、「正しい市民たち」を自認しているような人たちが、多くのネット炎上の原因となっているわけで・・・

*7:アルバム一曲目の意味合いと「ジェンダー」の歌詞が持つ問題点については以下にまとまった文章があります>http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20070123/OL