Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

オリジナル・ラブ「エレクトリックセクシー・ツアー」最終日(7/15渋谷公会堂)

エレクトリックセクシーツアー終了!
今回の渋谷公会堂は、いくつかの点で個人的にとても思い入れのあるライブとなりました!
セットリストはこんな感じ。

  1. スーパースター
  2. ファッションアピール
  3. セックスと自由
  4. 線と線
  5. エナジーサプライ
  6. 一撃アタック
  7. フィエス
  8. セーリングボート
  9. きらめきヤングマン
  10. 太陽を背に
  11. プライマル
  12. バイク
  13. 帰りのバス
  14. 朝日のあたる道 
  15. 接吻
  16. ディアベイビー
  17. カミングスーン
  18. The Rover
  19. エブリデイエブリデイ

(アンコール)

  1. Love Song
  2. フリーライド
  3. 夜をぶっとばせ

(アンコール)

  1. R&R

熱望していた真城めぐみさんのコーラス

まずは何と言っても真城めぐみさんのコーラス。
オリジナル・ラブに女性コーラスを入れて欲しいというのは、かねてからの持論。ライブは勿論、アルバムでも本人多重コーラス録音以外の方法を探って欲しいとずっと思っていた。日記を掘り返すと、2006年あたりから折に触れてこの問題について語っているが、バンドでツアーを回っていた当時とは異なり、最近は、ひとりソウルや弾き語りなど、ひとりでのライブにシフトしつつあり、女性コーラスは、ないものねだりと諦めていた。


先行シングル「ファッションアピール」のときもこの通り。

タイトル曲「ファッションアピール」はシングルらしく聴きやすい曲で、「新しい服を着こなして街に出よう」という春にぴったりの軽やかな曲となっています。これで女性コーラスだったら・・・という個人的な願いは今回も果たされぬままでしたが、重すぎず軽すぎないバランスのとれた楽曲で、自分は好きです。


caocaoで持田香織と組むことがわかったとき(2009)もこの通り。

デュエット、もしくは女性コーラスの必要性については、下に以前の記事を引用するように持論だったのだが、今回、企画ものとはいえ、願いがかなって嬉しい。


caocaoのときに引用していた記事は以下の通り。6年前の文章だが、今読んでも非常に納得の内容。

少し飛躍するが、ソロ以降の田島貴男に不足していると思う大きな要因は、(他人の声による)コーラスだ。実際に同じ曲で聞き比べているわけではないが、自身によるコーラスの曲は、どうしても「独りよがり」になってしまう。オリジナル・ラヴ田島貴男自身が、元来「独りよがり」な存在(笑)であることを考えると、女性コーラスをもっと入れた方がボーカル周りのバランスがよくなると思う。

たとえば、松任谷由美『VIVA! 6X7』でのデュエット曲「太陽の逃亡者」の(田島自身の)成功は、一人だと突っ走ってしまうボーカルを、相手を考えて上手に抑えたことによる効果が大きい。そして、そのアプローチは絶対に「シンプルなポップス」に近いアプローチになっているはずだ。


2006年のキングスロードツアー(@仙台)の感想では、ズバリ真城めぐみさんの名前を出している。(やや失礼な扱いですが…笑)

おまけではなく、ツアー本編にひとこと言いたいのはコーラスについて。田島貴男が格段に歌が上手くなっている中、そろそろコーラスも、木暮君の荒々しいコー ラスでは役不足になってきたのではないだろうか。今回、「青い鳥」なんかは、アルバムどおりのアレンジだったと思うが、それだけにサビのコーラスが無いの がすごく気になった。具体的にはファミリーシュガーみたいに女性二人をババンとつけてほしい。もしくは(いろんな意味で)女性二人分ということで真城めぐみをつけてほしい。


ライブの感想(『エレクトリックセクシー』の曲)

ということで、事前に、真城さん参加を知り、大期待で臨んだ今回のライブだったが、期待に反して前半はガタガタだったと思う。
まずは、田島自身が近年稀にみる声のダメっぷりで、一曲目から声が裏返る部分があるなど、不安を感じる幕開けとなった。*1
さらに、真城さんと田島からPAへの音量のダメだしのサインが、歌っている途中でも気になるくらい頻繁に出されているのが見えた。実際、前半数曲は、会場(1階席21列目)でも、真城さんの声はほとんど聴こえなかったので、やはり音響設備の調整があまりよくなかったのかもしれない。
さらに、音量の指示に気が行ってしまったせいで、田島の「歌詞飛び」も頻出。
そのせいで、おそらく、今回のツアーで、アレンジの一つの見どころだったはずの「一撃アタック」〜「フィエスタ」の流れが、完全に壊れてしまったのは本当に残念だった。(特に「フィエスタ」で歌詞が飛んでしまったのはガッカリ)
なお、真城さんについて言えば、全体を通してみても、そのポテンシャルを十分に発揮できていなかったように思う。田島もコーラスを生かすことに不慣れだった部分も大きかったのではないか。
ツアーの最終2公演のみの出番だったという理由はあるにしろ、あのメンバーなら、さらにスゴい演奏も、もしかしたら見ることができたのでは、と考えてしまった。


そんなこんなで、前半は、勢いを感じつつ、もどかしい流れが続いたが、 音量バランスがある程度調整できた「太陽を背に」あたりから、落ち着いて聞けるようになった。
そして、ややくどいくらいの歌詞解説MCのあとに歌った「太陽を背に」は良かった。
やはりこの曲の歌詞は「スコップ団過ぎる」と思ってしまうのだが、今回MCのあとにこの曲を聴いて、そこに目を向け過ぎるのは間違いだと思った。田島自身の個人的経験が出発点となっているが、そこから街の歴史を振り返り、昔の人たちを思い浮かべ、その人たちに思いを馳せた部分が核となって出来たのがこの歌だ。その意味ではスコップ団はダシと考えるのがいいのかもしれない。
勿論、聴いている僕らも、(名前が残らないからこそ)スコップ団などのボランティアの活動を知り、感謝し、支援し、時にはそこに加わることの必要性を理解しなくてはならないのだろう。


新アルバムでは「帰りのバス」がさらに良かった。アレンジはアルバムそのままだが、爆走するドラムをはじめ、ライブならではの勢いがあった。
今回、「乗り物シリーズ」という紹介の仕方をした中の一曲だが、MCでは、今までずっと前に進むことを書いてきたので、あえて戻ることをイメージした内容と説明していた。でも「歌詞については、このくらいで…」と意味深な発言で説明は終了。本人としては何か思惑があるようだが、伝えたくないらしい(笑)


音量のバランスが調整されて演奏に集中できるようになってからの、新アルバムの曲は、この2曲以外は、本編最後の「エブリデイエブリデイ」のみ。この最強シングルが本編ラストを飾るのは、なかなか感慨深いものがある。ブリッジ部分では、ケロる(?音声をいじる)程度も、アルバムの2倍くらいやってくれて、これも単純に面白かった。

『エレクトリックセクシー』以外の曲

真城さんのコーラスが入ったことで、「接吻」も「朝日のあたる道」もかなり良かったが、真城さんのコーラスが特に映えたのは、やはり「Rover」。この曲については、掛け合いみたいになる部分(frisky−rover)があるので、田島自身が声量を下げたのかもしれないが、真城さんの声が一番よく聴こえたように思う。


今回、前作『白熱』から演奏されたのは「セックスと自由」「バイク」「カミングスーン」「フリーライド」の4曲。
このうち、『白熱』の中では、やや異色の(ディスコっぽい)「セックスと自由」が「ファッションアピール」に続いて3曲目に演奏された。これを聴いて、前作で一番『エレクトリックセクシー』に近かったのは、やはりこの曲だよなあと、その時は思った。
しかし、「バイク」の演奏を聴いてその考えを改めた。今回のライブでの「バイク」は、アレンジなどで特殊なことをやっているわけではないのに、違って聴こえた。『エレクトリックセクシー』に慣れた耳で聴くと、その良さが際立つという意味で、「バイク」の変なアレンジは、今回のアルバムと地続きであることが分かった気がした。


一方で、ライブ全体では、いわゆる「意外な選曲」は、今回、非常に少なく、アンコール一曲目で度肝を抜かれた「LOVE SONG」以外は「ディア・ベイビー」くらいで、それ以外は定番曲となる。
ということで、シングル級の「カミングスーン」もあることだし、『白熱』『エレクトリックセクシー』の楽曲(最新の楽曲)だけでも、メリハリのある十分盛り上がるセットリストが組めるような気がして、心強く思った。


さて、その「意外な選曲」2曲のうちの1曲について少し書きたい。
「ディア・ベイビー」が始まったときに、無意識のうちに、ぶわっと涙が込み上げてきてしまった。

あとで確かめてみると、1998年の“Love,Sick,Devil” TOUR 12/15の渋谷公会堂に、自分は実際に来ており、そのときのラストの曲がディア・ベイビーだったようだ。
ご存知の通り、この曲は、NHKの音楽番組「ポップジャム」のオープニングテー マにも使われ、この年の8月のNHKホールでの公開収録も見に行った覚えがある。(女子高生ダンサーズが登場したツアー最終の赤坂BLITZに行けなかったことは悔やまれた。)
最も熱を入れてオリジナル・ラヴを聴いていた時の記憶が、当時の盛り上がりを象徴するタイアップ曲「ディア・ベイビー」を通して甦ったこと、それだけでなく、2013年のオリジナル・ラブが当時と同じくらいのポテンシャルを持っていることを確信し、それが思わぬ涙につながった。


そう、今回のライブは前半の不備はあったものの、オリジナル・ラブが、かつての(現役ミュージシャンの)メジャー感を取り戻した感じがあって、その部分が一番嬉しかった。勿論、『白熱』、『エレクトリックセクシー』という二枚の素晴らしいアルバムが揃ったことが一番の要因だが、まさかの6人編成での演奏も大きいと思う。真城さんに感謝です。

これからのオリジナル・ラブ(田島貴男)

秋から冬にかけては、田島貴男名義でまたひとりソウル、しかも21箇所22公演ということでなかなかタイトなスケジュール。今となっては、ソロのライブはむしろ安心して聴けるし、毎回何かしらのプラスがあるので、まだまだマンネリ化などしない。今回のバンドツアーでオリジナルラブを知った人にこそ足を運んで欲しいライブです。

次のバンドツアーや新曲発表などは、まだまだ先の話になってしまうが、女性コーラス待望論は、むしろ今回のライヴを見て強くなった。そして、真城さんが次のアルバムに参加するなんてことも夢じゃなくなったような気がする。思い切ってデュエット曲を作るくらいやって欲しい。やって欲しいなあ。そうしたら渋谷公会堂なんて、またすぐ来られるはず!


最後に。
今回、久々の渋谷公会堂ということで、田島本人も、過去と重ねあわせながら色々と思うところがあったのかもしれない。MCの中で、ファンに対して、「生き残った皆さん」というような言い方をする場面があり、やや違和感を覚えた。
勿論、オリジナル・ラブの音楽は振れ幅が大きいから途中で離れてしまった人も多いことは知っている。確かに、自分はその意味では「生き残った」タイプのファンなのかもしれない。
田島は同時に「新しいファンの方」みたいな言い方もしていたから、勿論、最近ファンになった人たちがいることも当然認識しているだろう。


しかし、“風雲たけし城”ではないのだから、脱落者がどんどん出る中で、「最後までのこってやる!」みたいなことを、個々のファンが思っているわけではない。“田島道”についてくることができる人のみを、ファンとして扱っていると誤解されてしまいかねないし、これからもファンが減ることを前提とした「生き残る」という言葉は、あまりうまくない比喩であるように思う。


何より、何を弱気になっているんだろう、と疑問に思う。
単純に、色んな音楽に浮気しながらも、今の時期のオリジナル・ラブがいいから盛り上がっているファンがたくさんいる。それでいいと思う。
2013年の田島貴男は、むしろ浮気奨励!と言えるようなミュージシャンなんじゃないかと思う。
「次の渋谷公会堂まで、どれだけ生き残っているか」とか、馬鹿なんじゃないかと思う。
最終日しか行かないで総括するのもなんですが、今回のツアーは、結構、強気になっていいツアーだったと思います。

*1:本人の日記によれば、今回のツアーは初日から「余力を残さない」というスタンスだったようだ。これは、もしかしたら、昨年のOverblowツアー初日の反省なのかもしれないが・・・。