Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

マシロック・フェスティバル〜渋谷系の音楽をつないでいたもの

9.29に開催された、真城めぐみさんのデビューほぼ20周年を祝う「MASHIROCK FESTIVAL 2013」at 渋谷AX は、レジェンド渋谷系*1とポスト渋谷系*2の邂逅が見られた奇跡的なイベントでした!
と簡単に書いてしまってもいいのですが、それはマシロックの良かったことの一面に過ぎません。
以下に、マシロックの本当に素晴らしかったことを書きます。


自分が一番熱心に音楽を聴いていたのは、1996〜1999くらいの頃で、きっかけは渋谷系ムーブメントでした。(もっと具体的に言うと、小沢健二『LIFE』とコーネリアス『THE FIRST QUESTION AWARD』を聴いたのが大きかったと思います)
その頃は、自分の音楽の幅を広げようとする気持ちが強く、音楽雑誌を熱心に読み、積極的に情報収集して、今にして思えばたくさんの音楽を聴きました。
当時の音楽雑誌は、自分の考える“渋谷系”的な音楽の聴き方(1)数珠つなぎ的に広げる(2)名盤ジャケからカタログ的に広げるという両面からのアプローチに応えるような特集を組んでくれることが多く、聴く以上に、相当のミュージシャンの名前や名盤タイトルを、それらの情報を通して知ったのでした。当時の音楽シーンは、小室ファミリーやBeing系など、複数ミュージシャンを共通キーワードで括るのが流行っていました(それほど沢山の音楽が溢れていたのだ)が、中でも渋谷系は、その繋がりが複雑で奥深く、過去の音楽への入口にもなっていたことが多くの音楽ファンを生みだしたのだと思います。
自分にとって渋谷系は、音楽の幅を広げる情報のネットワークでした。
勿論、当時知って、聴き続けているようなミュージシャンも多く、マシロックに出たオリジナル・ラブ小沢健二は勿論、キリンジやかせきさいだあ、ヒックスヴィルも、当然この頃に知りました。


ところが、社会人になってから、そういう聴き方をすることは減りました。
ラジオを聴く習慣があれば違ったのかもしれませんが、自分と音楽とを繋いでいた「音楽雑誌」を積極的には読まなくなり、音楽の幅はどんどん狭くなっていったのでした。
そんな自分が、ここ数年、少しずつでも以前のように幅を広げようと聴くようになったのは、ノーナ・リーヴス西寺郷太さんの影響が大きいです。2009年頃からPodcastを聴くようになり、当時放送していた「小島慶子のキラキラ」で郷太さんが新しい音楽を紹介してくれるのが楽しみになりました。熱血で話が巧くてオタク気質、プロデュースなども幅広く手掛け、勿論自らのバンド活動も継続しているところに惚れました。実は、それまでノーナの曲をしっかり聴いたことがなく、その後、『free soul : NONA REEVES』と、当時の最新作『GO』を聴いて一気にはまったのでした。なお『フリーソウル〜』に収録されている「AS 永遠の誓い(スティービー・ワンダーのカバー)」の、真城めぐみボーカルが素晴らしすぎて、マシロックの予習に何度も聴きました。
そんな西寺郷太経由で聴いたミュージシャンに堂島孝平がいます。テレビ(堂本兄弟)などにも出ていたし以前から名前は知っていましたが、曲を聴く機会に恵まれませんでした。しかし、元来ジャニーズ好きな自分としては、2人がアイドルユニット「スモールボーイズ」を組んだのを知って注目せざるを得ませんでした。恥ずかしながらソロ作はスモールボーイズのあとにベストを聴いたのが初めてだったのですが、捨て曲がほとんどないことに驚きました。
また、レキシの池ちゃんは100s経由で知っていましたが、Eテレ「ビットワールド」でもよく目にしており、最近ではCMにも出ていたりするので、ある意味では一番メジャーな人で、今回のライブでは一番期待していました。


だから、最初に書いたように、マシロックというイベントは、自分の中で好きになった時期にかなり差がある新旧ミュージシャンが集合するという部分が楽しみなところでした。(勿論、レジェンドな2人の出演はシークレットになっていたのですが)
ところが、ライブを見てみると、期待以上の感動があったのです。残り少ないですが、ここからが本題です!


ライブの様子は、nanayo さんのブログ、また、ライブ前後のツイッターでの盛り上がりは、以下にリンクを貼るtogetterに詳しいので、そちらを是非読んでいただくとして、自分のかなり雑な印象は以下の通りです。

  • ビデオ出演のみだったのに、全く予想できないかたちで強烈な印象を残したかせきさいだあ
  • 安心して見られる西寺郷太&小宮山雄飛の漫才司会
  • 狙っていたのかいなかったのか、場を盛り上げる天賦の才能を感じたエンターテイナー堂島孝平
  • 桜田門外の変の説明の部分で「ここ笑うところじゃないから」と客席をいさめたあと、期待通り会場を爆笑の渦に巻き込んだ池ちゃん
  • 面白いが曲も良くて最も印象に残ったジョンB
  • 大道芸人度を増して他の追随を許さなかった田島貴男
  • 独特のオーラを持ち、舌をペロッと出してもサマになる小沢健二


終わってみると、マシロックは、かなり多くのミュージシャンが集まりながらも、一体感のある本当に良いイベントでした。
それぞれの出演者は、真城さんへの感謝の言葉と思い出話などを述べてから演奏に入るので、自分はこれまであまり触れたことのなかったミュージシャンでも、真城さんを通して興味を持ちその良さが伝わってきたのが、今回のイベントならではでした。
しかし、それ以上にマシロックが通常のイベントと違っていたところは、舞台から袖に下がったミュージシャンたちの集まる楽屋が、表のステージに匹敵するほどの盛り上がりを見せていたことでした。(正確には、それが、演奏の合間のコメントから伝わってきたところでした。)
楽屋で田島貴男堀込高樹が東京の地形談義で盛り上がった話などもあとから知り、マルチアングル機能と副音声機能を駆使した、ステージ⇔楽屋のザッピングDVDを作成してほしいと強く願っています(笑)
そして、ステージ、楽屋の双方でテンションを上げ、アンコールでヒックスヴィルオザケンが出てきて、最後に全員が舞台に上がって歌うことで、観客も含めてその場に集まった全員が盛り上がるという奇跡のようなイベントだったのです。 
しかも、そこで歌われる曲が「愛し愛されて生きるのさ」!という……ああ、なんということでしょう!(ビフォーアフター風)
nanayo さんのブログでも書かれていたように、最後に、真城さんが「音楽続けるのってそんなに楽じゃないんです。でも、みんながいたから続けてこれた。」ということを言っていましたが、聞いているだけでも泣けてきました。


そんなステージを見て、自分は、渋谷系っていうのは、「情報」で繋がっていたのではなくて、「人」で繋がっていたんだなあ、という当たり前のことに気づかされたのでした。勿論、音楽雑誌で情報をあさっていたときも、それぞれのミュージシャンを頼りに音楽を辿っていたし、ライナーを見れば、参加ミュージシャンのクレジットは分かるのですが、それは単なる「情報」に過ぎなかったのかもしれません。それぞれに熱意を持ったミュージシャンたちが、お互いをリスペクトし、愛し愛されながら音楽が生まれているということが、今回とてもよく分かりました。
聴く側の僕らができることは、「喜びを他の誰かと分かり合う!」ために、それを伝えること、そして、何より、好きなミュージシャンのCDを買い、ライブに行くことなのかな、と思いました。(ライブ後は、CDを買って帰りました)
ヒックスヴィルも、田島貴男もツアーがありますよ!行ける方は是非!

*1:レジェンドという言葉はどの辺に由来があるのかは知りませんが、漫画『キン肉マン2世』で、2世である万太郎の世代が親世代の超人を指してレジェンド超人と呼びます。また、ゴーカイジャーで登場する歴代スーパー戦隊ヒーロー達のことをレジェンドと言います。ここでレジェンドというのは、オザケン田島貴男で、会場で一番多かったレキシファンの若い人たちからすれば十分にレジェンド感のあるミュージシャンだと思います。自分は田島はよく見ていて、オザケンも昨年見る機会に恵まれていたので、そこまでのレジェンド感は感じませんでしたが…。

*2:どこからがポスト渋谷系か、とかそういう議論は面倒くさいのでしませんが、過去には少し考えたりもしました⇒渋谷系はいつ終わったのか? 〜サニーデイ・サービスと渋谷系の関係遅れてきた「僕らの渋谷系」