Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

アニメ「日常」好きには是非〜伊豆平成,あらゐけいいち『日常の夏休み』

日常の夏休み (角川つばさ文庫)

日常の夏休み (角川つばさ文庫)

アニメ『日常』は、それほどアニメに詳しくない自分にとっても、とても大好きなアニメというだけでなく、何度も見たくなってしまう魅力に満ちた作品でした。
もともとは、楽しく見ていたNHKアニメ『電脳コイル』の枠で始まったギャグ作品という程度にしか思っていませんでしたが、一回見てかなり引き込まれたのでした。特に、オープニングテーマが、親しみやすいメロディ×凝った展開×面白い歌詞×音楽にマッチしたアニメーションと4拍子揃っていて度肝を抜かれ、それまで名前だけ聞いていたヒャダインの凄さを知ったのもこの作品でした。
自分の見ていたNHK Eテレ版は順番シャッフルの再編集版だったが、各キャラクターの馬鹿さ、若さ、優しさが伝わる内容で、何度見ても親子で爆笑できる定番アニメになっています。
なお、原作は残念ながら未読。


さて、そんな大好きな『日常』のノベライズが角川つばさ文庫から出ていることを、(その確かな視点と更新頻度に密かに憧れている)ブログ「児童書読書日記」で知りました。しかも、結構絶賛している様子。

アニメ化もされたあらゐけいいちの漫画『日常』の、角川つばさ文庫でのノベライズ版。『日常』の映画版をコンセプトにしていて、いつもの漫画とは一風変わったオリジナルストーリーが展開されています。これが、『日常』としてもできがよく、また質の高いジュブナイルSFでもあるという、得難い娯楽読み物になっていました。


で、早速読んでみる。
これは結構いいと思います。よう太も大満足で、何度も読み返しています。
(児童文庫で最近点数が増えている)ノベライズ版というものを初めて読んだので、最初は台詞ばかりの構成に戸惑いました。が、むしろ、地の文が無い方が、むしろアニメを見ているように読み進められるということに、すぐに気が付きました。読者の頭の中にはアニメで固定化されたイメージがあるので、余計な説明は必要がないのです。


各キャラクターの性格は勿論、アニメで出てきたエピソードも思い出話や前日譚として、散りばめられているのもいいです。脇役の出番も多く、いや、脇役の登場頻度が、ちょうどアニメと同程度の割合くらいになっているのかもしれず、そこも自分の知っている『日常』のまま。


何より、表紙だけでなく、挿絵に原作漫画のあらゐけいいち描き下ろしのイラストが多数使われており、いわゆる「小説」とは全く別物と考えてもいいでしょう。よく考えてみると、原作漫画は角川エース、アニメは角川映画、そして今回の本が角川つばさ文庫、ということで、これこそ教科書的な、いわゆる「メディアミックス戦略」なのかもしれません。自分も、この戦略に心を見出され、いつになく原作漫画に手を出したい気分が強くなっている気がします(笑)


内容については、引用した「児童書読書日記」さんに同意。なかなか質の高い内容になっていると思います。先に読み終えたよう太には「オチが凄いよ」と言われましたが、読んでみると確かに大ネタが使われており、その終わらせ方で本当にいいのかどうかについて、議論できるタネ(笑)が増えたのも良かったです。『シュレディンガーの猫』についても教えることができました。


ということで、親子で『日常』を楽しんだ人には確実にオススメ出来る作品。ボリューム的には、アニメ1.5回分くらいかもしれず、ボリューム重視の人にはオススメできませんが、『日常』好きな大人にも是非読んで欲しい作品でした。