当日券も若干出たようですが、2階席までいっぱいの弾き語りツアー最終日。かく言う自分も、かなり急勾配で見下ろす2階席6列目から今回の弾き語りツアーに初参戦しました。
今回のセットリストは以下の通り。
- Hey Space Baby!
- Tender Love
- 春のラブ・バラッド
- It could happen to you
- Body and soul
- ファッションアピール
- 太陽を背に
- 野ばら
- ミッドナイト・シャッフル
- のすたるぢあ
- プライマル
- ウィスキーがお好きでしょ
- 接吻
- 朝日のあたる道
- エブリデイ エブリデイ
- West Coast Blues
- 帰りのバス
(アンコール)
- GOOD MORNING GOOD MORNING
- 夢を見る人
- 好運なツアー
(アンコール)
- 夜をぶっとばせ
一曲目がかなり意表を突かれましたが、他会場では「Tender Love」という順当なものだった模様。
「プライマル」から間をおかずに演奏した「ウイスキーはお好きでしょ」ではかなり会場が湧きました。
初めて聴いた奥田民生「野ばら」のカバーはとても良かったので、おそらく、5月に放送されるNHK BSプレミアム「The Covers」でも演奏されるのではないでしょうか。
また、ラグタイムの説明から演奏(West Coast Blues)、そこから入るスキャット混じりの「帰りのバス」は楽曲の良さを再認識し、久しぶり?の「夢を見る人」は心に沁みました。
全体的には、前回のひとりソウルもそうでしたが、驚きを狙ったものは少なく、技と内容で勝負!というような円熟味を増した内容でした。
なお、カバー曲は以下でした。
それにしても、今回は、いつも以上にMCがこなれてきたというか、楽曲に対して有機的に機能してきた感じがします。
実際、ひとりソウルショーと同時期に弾き語りライブを開始して3年目にあたる今年、初めて全国を回って、田島貴男自身も、弾き語りを掴めてきたというような話をしていましたし、自分も、今回のライブを見て、「弾き語り」に対する印象を改めました。
例えば、田島貴男が、目指す音楽の形としてよく口にする「ポップス」というのは、このような特質を持っています。
音楽として、ポップスとして優れていることよりも、
アーティスト性がどうとか、ロック的かどうかとか、
その人にまつわる物語が面白いかどうかのほうが一般としてウケるというのは、
自分にもそういう傾向があるしよく分かる。
でも僕は時々、
本当はそんな物語なんか別にどうでもいいのではないかと思ってしまうのだ。
作った人や歌った人の物語などとは関係なく、
人々が知らず知らず口ずさんでしまっている曲というのは、
やっぱり素晴らしいと思うのだ。
しかし、そういった、いわゆる「ポップス」が、一種普遍的な場所を目指すのとは違って、「弾き語り」は、演者その人の口から出てくるから言葉が意味をなすという側面が大きいように思いました。
通常のライブでは、それぞれがリズムに身を任せて好き勝手に楽しむのに比べて、弾き語りの場合は、田島貴男の声に、言葉に注目し、会場の気持ちが田島貴男その人に集中している感じです。
限られた人しか文字の読めない時代には、語り部が歴史を語って聞かせました。今なら、文字で伝えられる情報でも、語り部が語ることによって、その情報は、よりエキサイティングに、神話性を帯びて伝わったに違いありません。
観客が座席に腰かけて、中心にいる田島貴男に耳を傾ける構図は、暗がりの中で松明を囲って語り部の話を聞く古代人のイメージに似て、田島貴男のMCを聞きながら何となくそんなことを考えました。(とはいえ、さくらホールの会場が、他の会場と比べて特殊だったということもありそうです。田島自身も、「今日は講演会で話しているみたい」と言っていました。)
かつてのオリジナル・ラブではMCはほとんどないというのが相場でしたが、ひとりソウルと弾き語りを通して、田島貴男もMCが上手くなったと評判。そしてMCが上手く行くと、歌も引き立つ。歌詞が強さを増す。特に、「エブリデイエブリデイ」と「太陽を背に」は、MCと歌詞の内容が完全に地続きになっていて、その意味では、弾き語りツアーの選曲として今後も外せないものになるのではないかと思いました。
今年、久しぶりに山元町を訪れたことを喋りながら「太陽を背に」。初めて聴いたときは、歌う対象が具体的過ぎてあまり好きになれませんでしたが、特に今回は素直に聴けました。情報過多のネット上での正しい正しくないの議論を見ていると、本来は生活の土台にある「体験」や「労働」が抜け落ちたり軽視されたりする部分があるということで、このメッセージなんだと思います。
「エブリデイエブリデイ」のMCはジョギング話。
ローリングストーンズのライブで動き回るミック・ジャガーを見たのがきっかけで始めたジョギング。最初、「ミックが走っているのは6kmくらいじゃね?」という一方的思い込みから、6km以上走れば「ミック越え」と自分を鼓舞していたが、その後、ミックジャガーは、毎日13km走っているということを知り驚いた、という話。これは面白かった。
なお、田島貴男本人は、「5年前にMSGでライブを見た時」という話し方をしていましたが、ストーンズファンの有識者(笑)によれば、もっと前の話だとのこと。調べてみると、確かに、ほぼ日では2005年の記事で出ているので、全然5年前ではないことを確認しました。タクさん(有識者)は本当にすごい。
「でね、こないだストーンズを観に行ってきてね、
オレはミック・ジャガーにたいへん感動しました。
だって、60歳を超えてるんだよ?
顔はちょっとしわくちゃに
なっているのかもしれないけど
70年代とぜんぜん動きが変わってないんだよ。
あれは影武者がいるんじゃないかと思ってさ!!
3人ぐらいが交代で
ミック・ジャガーをやってんじゃないかと」