Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

それでもファミチキを食べ続ける理由〜怖いのは「中国産」じゃなくて「成型肉」では?

週に一度はファミチキを食べる生活を送っているので、今回の中国の期限切れ鶏肉問題については、とても気にしています。ファミチキ自体はタイ産*1で、事件と直接は無関係なのかもしれませんが、やはり日常的に使うチェーン店の扱う食材に問題があると知るのは気持ちが悪いです。
一方で、不安感払拭のためとはいえ、マクドナルドの対応(おそらくベストの対応だと思います)は、科学的な合理性には欠けるのではないでしょうか。(理由は後述)

中国・上海の食品加工会社「上海福喜食品」が使用期限切れの鶏肉を出荷していた問題で、日本マクドナルドは25日、中国製のチキン商品の販売を全面的に中止すると発表した。同日から実施した。
同社は、鶏肉については中国とタイから調達しているが、今回の問題を受け、消費者の中国産鶏肉への不安が高まっているとして、全量をタイ製にすることにした。
マックが中国産チキンを全面的に販売中止 全量タイ産に、消費者の不安受け|産経新聞 7月25日(金)

これらの報道を見て、日本人は「中国産」の食品を恐れ過ぎだろうと感じました。特に、今回の報道は、中国自国のテレビ局の潜入取材が発端になっていることもあり、中国側の対応はギョーザ事件のときと比べると、オープンになってきたのではないかと思ってしまうくらいです。


さて、ここからが中国産食品の安全性に関する本題です。
今回の事件に対しては、食品のリスクの問題について詳しい松永和紀さんが、自らが編集長を務める FOOCOM.NETに記事を書いています。


ここでの文章は、自社の生産工程管理が不十分だったことを棚に上げて中国企業に責任を転嫁するファミリーマート社長の態度を問題視する内容ですが、それよりもやはり中国産食品全体の安全性が気になるところです。
記事の中でも触れられていますが、これ(中国産食品の安全性)については、2013年3月の週刊文春記事に対する反論のかたちで『“中国猛毒食品”のトリック』という文章が書かれています。ざっくり言えば「中国からの輸入食料品が危険というのは思い込み」「個別企業の問題はあるが、全般的に見るとむしろ安全」という感じの結論になっています。
ここで挙げられている論点は以下の5つあります。

(1)猛毒とリスク―中国産食品の違反事例、リスクは高くない

  • 輸入食品について食品衛生法に基づき設定されている基準、規格は厳しく、一品目、違反品を食べたところで健康影響はない、というレベルで設定されている。

(2)違反数と違反率―中国産の違反率は低い

  • 輸入食品の監視統計を見ると、全体の違反数は1257件のうち、中国の違反数は278件と最も多い。(2011年調べ)
  • しかし、これは検査件数が多いためで違反率は0.25%で低い。(韓国が0.58%、台湾が0.68%、ベトナムは1.1%、タイが0.78%、欧州は0.48%、イタリアが0.77%、アメリカは0.80%、平均で0.54%。同様の傾向は2006年から継続。)

(3)品目の種類―品目によってリスクは大きく異なる

  • 上記統計で違反品目は水産物が多いが、水産物は微生物が付きやすく管理が難しく違反が出やすいことが理由。
  • また、水産物を多く扱うアジアの国々の違反率が高くなるのは、当たり前。
  • さらに、国産食品は輸入食品ほど調べられていない。厚労省は調査しておらず、産業振興担当省である農水省の調査は、限られている。自治体も、市民の関心が国産よりも輸入食品に向いているため、輸入食品の検査数が多い。むしろ、国産食品の汚染は、実は把握せずに食べている。

(4)検査数 ―「1割しか検査していない」は、タメにする議論

  • 検査は、全体の中から一部をサンプリングして行うもの。(検査に使用したものは廃棄するため、常に検査は一部で、調べていないところはわからない。9割はスルーというが、検査数を増やして1割を5割、10割としたところで、大方はスルーという実態は、なにもかわらない。)
  • 検査は調べたものの結果しか見えて来ない。(水産物大腸菌群を調べれば大腸菌群の結果はわかるが、重金属汚染など別の項目はわからない。)

(5)ピンとキリの混同―中国国内の“キリ”が日本に輸入される可能性

  • 日本で過去に起きた水俣病問題や森永ヒ素ミルク事件、カネミ油症事件、大規模な食中毒事故、数々の偽装事件と同様のことが発展途上の中国で起きていると見るべき。
  • まさに中国の食品の品質、安全性はピンからキリまで。その中のピン(一番いいところ)が、日本に輸入されている中国産のかなりの割合を占める。だからこそ、輸入検疫における中国産の違反率は低い。
  • 今、中国で日本向け食品を製造したり加工したりしている日系企業や日中の合弁企業などの安全管理のレベルはすさまじく高い。
  • さらに、厚労省の輸入検疫だけでなく、自治体や日本の流通企業、生協などもこぞって輸入食品、とくに中国産食品には目を光らせている。
  • 人件費の高騰や餃子事件を機に、撤退を考えた企業で-輸入を止めなかった企業も多かった。これは、ほかの国(日本含む)よりは、これまで関係を構築してきた中国の方がまだマシだ、という判断があるから。


ということで、これらを読んで改めて中国産食品を過度に怖がる理由はないと自分の中では結論付けました。なお、中国産食品だけでなく、遺伝子組み換え食品や放射性物質食品添加物トランス脂肪酸などのリスクについては、以下の本がまとまっています。自分も改めて読もうと思います。 

お母さんのための「食の安全」教室

お母さんのための「食の安全」教室



さて、以下は暴論です。
「中国産」の食品に対する接し方は何となくわかった一方で、今回の事件は、ミートホープ事件(2006年)以降、どうしても拭えない「成型肉」に対する不信感が強まりました。ここでいう「成型肉」は一度ミンチにしてから団子状に固め直して商品化する肉を意味しています。
特に今回の報道動画の「食べても死にはしない」と罪悪感ゼロでいう従業員が衝撃的で、やっぱり一度ぐちゃぐちゃにしたら何を入れられているか分からないし、工場で働く側も罪の意識を抱きにくいだろう、という気持ちは事件前よりも強くなってしまいました。松永さんは、日本企業は中国での生産工程管理もしっかりしていると言いますが、今回発覚したように、成型肉の場合、検査の目が届きにくいのではないか、と想像してしまいます。(あの動画に触発されて、「もっとすごいもの入れたぞ〜!」みたいな画像が、日本国内からツイッターに上がってくるような気すらします)


その点、ファミチキには安心感はあります。
ファミリーマートには、ファミチキとスパイシーチキンという似た商品が横に並んでいますが、ファミチキ成型肉ではなく、スパイシーチキンは成型肉なので、いつも自分はファミチキばかり買います。(追記:そのあと何回か食べましたが、スパイシーチキンは成型肉ではありません。スパイシーチキンの方が安い理由をそこに求めてしまっていたのですが、単に調理の仕方(衣)が違うのが価格の違いのようですね。)
つまり、あくまで個人的な感覚で恐縮ですが、ファミチキやLチキ(ローソン)、ケンタッキーの普通のチキンだったら成型肉じゃないので、生産国がどこであってもリスクが低いと判断しています。半分は期限切れの肉を使って…などというズルはできないし、一時期頻発したような馬鹿なアルバイトが悪戯をすることもやりにくい。また、加工度合が少ないほど、従業員のモラルがしっかり働きそうだし、検査も成型肉に対するものよりは実効力があるものが期待出来そうです。


ということで、ファミリーマートには、今回問題になったようなナゲット類は、もう全部店からなくしていいので、ファミチキの種類を増やす(Lチキキングのようなサイズの大きいもの希望)とか、そういう方向に進んでほしいです。

*1:「タイの委託工場で一貫生産」とあります。改めて読むと、ナゲット類も同様につくられているような誤読を誘う文章かも…。⇒フライドフードのこだわり