さくらホール行ってきました!
今回は直前になって行けるようになったライブでしたが、本当に行ってよかったです。
特に2つの点で、新しい田島貴男を感じることができました。
セットリストはこんな感じ。
- ふられた気持ち
- 春のラブバラッド
- 月に静かの海
- いつか見上げた空に
- クレイジアバウチュ
- フランケンシュタイン
- プライマル
- なごり雪
- こどものなみだ
- 四季と歌
- 春一番(カバー)
- 遊びたがり
- 接吻
- 朝日のあたる道
- ラヴァーマン
- 鍵、イリュージョン
(アンコール1)
- ゴールデンタイム
- 希望のバネ
(アンコール2)
- 夜をぶっ飛ばせ
MCの変化
自分の中で、今回驚いたことの一つ目はMCです。
どうも準備してきたMCではないようで、その場で思い出したことを紡いで、むしろどこまで自分が長話できるかにチャレンジしているようでした。ライブ後のツイートでも自らそのことに触れているので、今回のツアーのひとつのポイントだったのは間違いありません。
弾き語りツアーは、さくらホールを終え、残りあと1公演になりました。ツアーを重ねるたびに長くなるトーク。「ぼやき芸が確立されつつあるんじゃない?」と、スタッフに言われました。
— 田島貴男 4月15日LOVE JAM (@tajima_takao) 2016年3月11日
内容についてもちょっとした楽曲解説あり、地方遠征の苦労話、思い出話あり、とバラエティに富んで、その取り組みは成功していたと思います。
ただ、ここで言う「ぼやき芸」。
「ぼやき芸」を「悪口」ではなく「芸」にするためには、ものすごいバランス感覚が必要で、普通であれば、自虐を半分入れ込むなど、(観客を傷つけないための)入念な準備が必要です。
乱暴に言っているように見えることほど、丁寧に作りこまれている。「芸」とはそういうものであるということは、「芸」を志向する「ひとりソウル」というスタイルに打ち込んでいる田島貴男こそよくわかっているところ。
それでは、果たして田島貴男のトークは「ぼやき芸」になっていたでしょうか…。
ここでは、直接、その疑問にこたえませんが、今回のMCは、完全に力の抜けた、というよりタガが外れた無法地帯となっていました。これ以上、田島貴男にフリーライドさせてしまうと大変なことになるぞ、と不安と期待と不安と不安でお腹いっぱいになってしまう感じです(笑)
今回は、盛岡で観客置いてけぼりで宮沢賢治トークを繰り広げたそうなので、代表作「雨にも負けず」の一節を借りて書けば、さくらホールでの「ぼやき芸」の印象は、こんな感じでした。
東に笑わない観客がいれば
なぜここで笑わないと言い
西に笑う観客がいれば
行って俺はピエロじゃないと吠え
南にリアクションが激しい観客がいれば
みーちゃんはーちゃんは嫌いだと言い
北にリアクションの少ない観客がいれば
ここは東京砂漠だといじけ
という感じで、ライブ会場は、独裁者の感覚が支配する理不尽キングダムになっていました。(笑)
被弾するのは女性ばかりなので、自分はそれほど身の危機を感じませんが、最前列に近いほど、熱いライブとは対照的にMCでは身の凍る思いをしたそうです。触る者みな傷つけるナイフスタイルのMCは賛否分かれると思いますが、色々試しながらやっていくのが田島のやり方なので、今後どのように変わっていくかという意味では非常に楽しみです。
選曲ではなく編集
さて、これまで変わらず自分本位を貫いてきた番長ですが、自分が感じていたセットリストの中での不満は、それを観客が求める部分もあるとはいえ、結構「いつもの流れ」が中盤とか後半に入ってしまうことです。
そのときは、自分の気持ち的には(ノリノリで聴いてるのですが)物足りなさを感じる部分でもありました。
もう少し言い換えましょう。これまでは、「いつもの流れ」の中に、意外な選曲、意外なアレンジの演奏をどう入れるかで、ライブのセットリストが構成されていたように思うのですが、今回は、それを越えるセットリストの妙があったように思います。
これを自分は「編集」という言葉で説明しようとしているのですが、単なる曲選びを越えて楽曲の良い部分が強調されるように巧妙に配置されていたように思います。ちなみにWikipediaで見ると「編集」とはこのような意味とのこと。
編集(へんしゅう)とは、書物(書籍や雑誌)・文章・映画、などの仕分け素材を、取捨選択、構成、配置、関連づけ、調整、などすることである。
もっと言うと、最新型のオリジナル・ラブが一番かっこよく見えるように配置されていたという部分がとても良かったです。
たとえば今回の前半の一番の聴きどころは「いつも見上げた空に」〜「クレイジアバウチュ」〜「フランケンシュタイン」の流れだと思うのですが、ギター一本でもゴージャスに聴かせてしまう「いつも見上げた空に」の凄さに聞き惚れていたところに、入る『LOVER MAN』からの2曲。この2曲は田島貴男らしい「変」な曲だと思うのですが、ザッツオリジナル・ラブなスタンダード曲のあとに配置されることで、スタンダード曲に引けを取らない名曲だということを見せつけていました。
次に、MC〜「なごり雪」〜MC〜「こどものなみだ」。
MCでは四季の話をしており、このあと、が「四季と歌」「春一番」と繋がるので、非常に聴きやすい流れですが、今回、カバー曲の前のMCがとても良かったように思います。カバー曲はメジャーであればあるほど、曲には乗れますが、イマイチ乗り方が分からなかったりするのですが、MCが聴きどころを教えてくれる導入部としての役割がちゃんと果たせていたと思います。(本人も言っていましたが)まさに「田島音楽学校」的な。
「なごり雪」では、そんなに暗い曲ではなく、結構明るい曲なんだ、という話をしたり、「春一番」では、アイドルが可愛く歌ってるけどマイナー調なんだ、とか。なお、「春一番」の前では「およげたいやきくん」を歌うシーンもあり、これも面白かったです。
そして、新曲「こどものなみだ」は、B面曲ということになりますが、歌詞が重なる部分の多い「なごり雪」と合わせて聞くことで、初めて聴く歌なのに曲の世界に入りやすく、これまでライブで初めて聴いた曲の中では、ぶっちぎりで曲の良さを堪能できたのではないかと思います。
なお、メロディは、(素人感想ですが)サビに入るまでのいわゆるAメロ、Bメロがスタンダードなコードで、サビに入ると面白いコードになり、ドラマティックに展開されていき、これまた名曲な感じです。
ちなみに、自分が「編集」という言葉で説明しようと思ったのは、この新曲タイトルについて、わざわざ平仮名指定で説明しており、そこにコピーライター的な(糸井重里的な)感性を感じたからです。
そのほか、「春一番」〜「遊びたがり」の流れ、「ラヴァーマン」〜「鍵、イリュージョン」の流れも、やはりそれぞれの(特に後奏の)曲がもともと持っている良さが引き立つような曲配置で素晴らしかったです。
また、新曲「ゴールデンタイム」をアンコール1曲目で披露するために、あらかじめ(「こどものなみだ」の前のMCで)「ゴールデンタイム」の説明をしておくなど親切設計が目立つセットリストになっていました。
おわりに
ということで、MCもセットリストも、新しい田島貴男を垣間見ることのできた弾き語りツアーでした。
初夏に発売されるというシングルは今回の新曲2曲に加えて「リミックス+リテイク+ライブ映像2曲」という豪華な内容だというし、そのあとにバンドツアーもあり、今から夏が楽しみでなりません。
なお、今回は、チケット入手のために、ネット上の沢山の方に声をかけていただきました。改めて感謝感謝です。