Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

ORIGINAL LOVE presents 「Love Jam」 (4.15 Zepp DiverCity)

4月に行われた「Love Jam」の動画(公式)が、開催後1か月を過ぎた5.19に上がってきた。
この選曲が、オーラスで演奏した「Rover」という、強い攻めの姿勢を見せていて驚く。しかも、オリジナル・ラブだけでなく、ペトロールズの長岡亮介も参加の曲ということで、本当に贅沢な動画だった。


でも、Love Jamは、これだけじゃなかったんだよ。手裏剣投げキッスだけじゃなかったんだ!
…ということを言うために、改めてあの日の感想を書いてみる。

セットリスト

当日のセットリストはこちら。「DI:GA」のサイトでオープンになっているものからの引用なので、特に間違いはないはず。

cero
1. 大洪水時代
2. Elephant Ghost
3. Yellow Magus
4. Summer Soul(田島参加)
5. Outdoors
6. 夜去
7. Orphans


トロール
1. not in servide
2. 表現
3. ホロウェイ(田島参加)
4. Talassa
5. Fuel
6. 雨


ORIGINAL LOVE
1. 心理学
2. 灼熱
3. 月の裏で会いましょう
4. ティラノサウルス
5. ラヴァーマン
6. クレイジアバウチュ
7. 接吻
8. Two Viberations
9. The Rover(ペトロールズ長岡参加)

cero

イベント開始後、ビートルズの「All you need is love」のBGMとともに出てきた田島貴男が、去年一番聴いたCDという説明をして、一組目はceroが登場。
ceroは、最近の音楽に触れることの少ない自分の耳にも入るほど昨年は大活躍だったので、あらかじめ、アルバム3枚を聴いて予習済み。ライブ前の印象は、好きな曲もあるけれど、実験的な部分が多いので、「ここまでマニアックな音楽が、今の時代に売れるって凄いなあ」というもの。
実際、最近好きになるアルバムは、短いことが多いので、ここまで詰め込んだ長いアルバムは聴きにくいとすら思っていた。しかし長く聴けば、単独で聴きなおしたい曲も出来てきて、ライブ直前に聴きなおしたのは、サビの分かりやすい「summer soul」と、出だしの歌詞がはっぴいえんどを思い起こさせる「大洪水時代」。結果的に、その2つは演奏されたので、メジャー感の有無は、ある程度誰にも共通して感じられる部分なのだと再確認したのだった。
アルバムの感想はこのくらいにして、ライブの模様を。
バンドが大所帯ということも知っていたので、ボーカルが埋もれるんじゃないかと思っていたが、ボーカルの高城君はフルートの演奏やギターのソロなど、活躍の場面が多く、また声も特徴的で、魅力を感じた。
田島は、ceroの音楽的な自由さ、貪欲さに共感したんじゃないかと思う。
ラストの曲「Orphans」は、特に歌詞が強く心に響いた。

(別の世界では)
2人は姉弟だったのかもね
(別の世界がもし)
砂漠に閉ざされていても大丈夫

あぁ 神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて
あぁ わたしたちは ここに いるのだろう

「弟がいたらこんな感じかも」「姉がいたらこんな感じかも」、ありきたりではなく、しかも、ギリギリ共感できる関係性。こんな風に微妙なニュアンスを歌詞にできるのは才能なんだろうな。

トロール

そして、全く予習をしておらず、どんな人達なのかも知らずに来てしまったペトロールズ。
ceroのときと同様に、田島による簡単な紹介のあとに演奏が始まったが、自分は、最初の伴奏つきMCから、いわゆるビビビを感じまくりだった。
まず、長岡亮介のギターがやっぱりすごいんだと思う。
冒頭に挙げた「Rover」の最後でもそうだったが、歌うように、呟くようにギターが鳴る。
そして何より、ギター長岡亮介とベース三浦淳悟という前列の長身二人のビジュアルのカッコよさ。
音数の少ない楽曲の緊張感と二人のカッコよさに、自分は唖然としたまま曲を追っていた。
ここまで純粋に「カッコいい!」と思えたのは久しぶりかもしれない。
知らない曲が連続するのに、そんな感じが全くしない。構成もシンプルで、サビも分かりやすいので「一回目はあまり乗れなかった…」などということがなく、最初からレッドゾーン。
もしかしたら、結晶の頃のオリジナル・ラブはこんな感じだったのかもしれない、と思いながら見ていた。


トロールズは全曲良かったが、中でも鳥肌の立つような経験をしたのは、ホロウェイ冒頭の、長岡亮介ボーカルによる「夢を見る人」。
最初は、イントロで観客を沸かせて、歌い始めてしばらくしてまた沸いた。
とにかく声質が似ている。似せている。
サビからは途中で登場した田島貴男(ものまね番組における御本人登場のイメージ)にボーカルを奪われてしまって、真似する姿を見られなくなってしまい、とても残念だった。一番最後に長岡亮介が「サビまで歌いたかったのに…」みたいな話をしていたが、多くの客もそう思っていたに違いない。
思うに、長岡亮介のボーカルの上手さは、力の抜き方にあるんじゃないか。アルバム『Renaissance』のケースの三角形がそうであるように、3人のバランスがちょうどよくなるようにボーカルも調整して前に出過ぎないようにしている。
それがオリジナル・ラブのカバーだと、わざとボーカルを強めにして前面に出るようなバランスになっていたように思う。
本当に続きが聴きたかった…。

オリジナル・ラブ

そして我らがオリジナル・ラブ
1曲目は、問題の「心理学」。
この曲はいつ以来なのかは分からないけれど、あまり最近のライブで演奏しない曲なので、確かに「レア感」はあったが、歌いだしが「コレあかん」(駄洒落です)な感じだった。
サビで盛り上がるまでのこの曲の歌唱ポイントは、「ささやくようなボーカル」にあることは、明らかなのに、それが出来なかった。
しかも、この選曲は明らかに、対ペトロールズを意識しているはずなのに、長岡亮介のような力の抜き方が出来なかったのは残念過ぎる。また、原曲でサックスが目立ちすぎる曲は、やはりサックス抜きだと、(今回のようなバンドでも)違和感が出てしまうので、仕方がないかもしれないが、この曲単体ではペトロールズの圧勝だった。


しかし、それ以降は調子を取り戻し、「これあかん」な「心理学」のマイナスを帳消しにし、「圧巻」(駄洒落です)を感じたのは久々の「ティラノサウルス」。
自らが「機材元年」と説明したアルバム『イレブングラフィティ』の冒頭を飾るこの曲は、その後の『L』『ビッグクランチ』という圧倒的な2枚のアルバム時代の幕開けを感じさせるもので、方向性としては、ペトロールズよりもceroに近いのかもしれない。
また、ひとりユニットの印象が強い時期の「ティラノサウルス」に真城めぐみのコーラスが乗ることで、全く新しいノリを生み出していて、今回のオリジナル・ラブの演奏曲の中で最も良かったと思う。


そして、「ラヴァーマン」「クレイジアバウチュ」の2曲。
今回のイベントの良かったところは、cero、ペトロールズ、オリジナル・ラブそれぞれの良さが三者三様の形でよく出ていたことだが、cero、ペトロールズに対抗する形*1で、現在進行形のオリジナル・ラブを象徴するのが、この2曲だったと思う。
カッコいいんだけどお茶目、音楽的に凝っているけど親しみやすい、まさに田島貴男の目指すポップスが体現されたような曲だ。新曲を演奏しなかったのは残念だが、この2曲の強さは、ceroやペトロールズのファンの方にも響いたんじゃないかと思う。


ということで、今回のイベントは大成功だったんじゃないかと思います。
残念だったのはライブ会場でペトロールズのアルバムを売っていなかったことくらいで、非の打ちどころがないくらいの素敵なイベントでした。興業的にどうだったのかはよくわかりませんが、来年以降も是非こんなイベントが続くことを願っています。

*1:かなり大胆にザックリ言えば、オリジナル・ラブ東芝EMI時代の良さとペトロールズは通じるものがあって、ポニーキャニオン時代の奔放さとceroには通じるものがあって、それらを通過しての現在のオリジナル・ラブがあるという強引な認識…