Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

憲法カフェVS憲法おしゃべりカフェ〜あすわか『憲法カフェへようこそ』

憲法カフェへようこそ

憲法カフェへようこそ

タイトルと「はじめに」部分だけではよくわからないが、少し読み進めると、この本の立場がよくわかってくる。本を出した「あすわか」のHPを見ると、一番上に書かれているが、「あすわか」自体が、自民党憲法改正草案に反対する目的で作られた団体なのだ。

みなさん、はじめまして☆
私たちは、自由民主党の「日本国憲法改正草案」の内容とその怖さを、広く知らせることを目的とする、若手弁護士(弁護士登録期が51期以降=登録から15年以内)の有志の会(略称「あすわか」)です。
現在、当会で作成したパンフレットや紙芝居を使って、全国各地(?)で講演(憲法カフェ、ランチで憲法など)を行っています!
また、イベントや集会に参加したり、声明を発表する、書籍を出すなどもしています。
明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)


自分は、やはり自民党憲法改正草案に疑問を持っているので、この本は、現在の自分の認識を確認するように読んだ。


ところで、「〜カフェ」というと、サイエンスカフェなどという催しもあるが、敷居の低さを志向した気軽な講演会、学習会を意味し、本のタイトルになっている「憲法カフェ」も、あすわかのHPを見ると頻繁に行われていることが伺える。
面白いのは、全く立場が逆の「改憲派」も同様の運動を行っていることで、その名も「憲法おしゃべりカフェ」で、日本女性の会(日本会議の女性組織)のHPを見ると、こちらも頻繁に開催されている。
ということで、似た名前だが、「憲法カフェ」VS「憲法おしゃべりカフ」は、思想が対立する団体同士の活動、ということになる。
憲法おしゃべりカフェ」の方も2冊本を出しており、導入部についてはアニメも用意されている手の凝りようで、こちらも敷居が下げて、ファンを増やそうと頑張っている。


なお、『女性が集まる憲法おしゃべりカフェ』については、今年5月のラジオで荻上チキがいくつかの個所の具体的に批判しており、これに対して、出版元の明成社は抗議をしている。


さらには、「『女子の集まる憲法おしゃべりカフェ』にだまされたくない人のためのおしゃべりカフェ」などという催しが開かれたり、週刊金曜日の最新号(8月5日号/特集:日本会議)で「女子の集まる憲法おしゃべりカフェ」に行ってみました。という記事が掲載されているなど、とにかく話題に事欠かない。

週刊金曜日 2016年 8/12 号 [雑誌]

週刊金曜日 2016年 8/12 号 [雑誌]


内容について

アンチ自民改正草案のこちらの「憲法カフェ」の本。目次は以下の通り。

第1章 憲法カフェ:憲法ってなあに?から立憲主義まで
第2章 9条カフェ:戦力の放棄、新安保法制、改憲による国防軍の創設
第3章 秘密保護法カフェ:安保とコラボで戦争できる国づくり
第4章 緊急事態条項カフェ:自民党改憲草案の紹介をしつつ
第5章 民主主義カフェ:選挙・政治のアクション・「不断の努力」


『檻の中のライオン』でも「権力(ライオン)を法(檻)で縛る」という比喩とともに紹介されていた、憲法についての基本的な考え方である「立憲主義」については第1章で紹介があり、わざわざ安倍首相が立憲主義を理解していないのではないか、という答弁をピックアップしている。

畑浩治委員 厳密に言えば通告しておりませんが、憲法との関係でちょっとお伺いしたいんですが、総理、憲法というのはどういう性格のものだとお考えでしょうか。

安倍晋三内閣総理大臣 憲法について、考え方の一つとして、いわば国家権力を縛るものだという考え方はありますが、しかし、それはかつて王権が 絶対権力を持っていた時代の主流的な考え方であって、今まさに憲法というのは、日本という国の形、そして理想と未来を語るものではないか、このように思い ます。(2014年2月3日の衆院予算委員会答弁)

立憲主義の考え方は教科書的な内容なのだと思うが、そうでなくても、国家権力を縛るために憲法がある、という考え方の方が合理的だし、人類・国家の歴史を考えれば至極当たり前の考え方だと思うが、安倍首相が、自信を持ってこのような喋り方をすると、正しいことを言っているような気がしてしまうのかもしれない。
個人の自由を制限して、国家権力のできることを増やそうとする自民党の改正草案のどこがそれほど魅力的なのかよく分からない。自分なんかは、むしろ、ごくごく少人数のグループが出した案ではなく、多くの政治家の目を通した日本で一番大きな政党の出す案がこれなのか、というところに衝撃を受ける。


本の中では、2013年12月に強行採決された特定秘密保護法について扱った3章や、「お試し改憲」の例としてよく名の挙がる緊急事態条項について扱った4章が勉強になった。
通して読んでみたが、やはり一連の流れを復習してみても、自民党改正草案は全く納得ができないし、特定秘密保護法も酷いと思う。それにも関わらず自民党や安倍首相の人気が衰えないのは、本当に不思議な気がするが、もっと勉強すれば理解できるときも来るのかもしれない。次回こそは、国民会議や安倍首相支持の立場から書かれた本を読んでみたい。