Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!〜『貞子vs伽椰子』vs『富江』

立て続けに2本のホラー映画を観たのでその感想です。
バケモンにはバケモンをぶつけるのが正解らしいので…。

『貞子vs伽椰子』(2016)

何かのときに映画ファンの方から、この映画をオススメ頂いて、かつ、先日も紹介した『邦キチの映子さん』で、別映画ながら『貞子3D』が紹介されていたこともあり、Amazonビデオの見放題に入っていたこの作品をまず観てみた。


まず、元映画についてだが、自分は、『リング』の映画は松嶋菜々子主演のやつを観たはずだが、もともと原作が視覚的イメージを強く持った作品なので、両方の印象が混ざって、あまり印象に残っていない。
呪怨』については、色白の男の子が出てくる映画だろうという程度の知識で、観たことはない。
そういう意味ではフレッシュな気持ちで作品に入ることが出来た。


今回の映画は、貞子も伽椰子もルールが明確なホラーなので、そのルールの中で、どのように対決させるかが見どころなのだろう。名台詞 「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」も知ってはいたが、実際、二人をどのように「ぶつける」のか、ここに興味があった。というか、それだけで引っ張る映画だと思っていた。
しかし、観てみると、その見どころ以外も、色々な「予想外」に満ちていて、思いのほか楽しめた。


まず、一人目。
序盤、貞子側のドラマで登場する大学講師の森繁(甲本雅裕)。都市伝説について研究する傍ら「貞子が見てみたい」ということに腐心し、実際に呪いのビデオを見てしまった 夏美(佐津川愛美)が相談に来た際に、すぐにビデオを再生する。
原作『リング』では、それがオチになっていたわけだが、呪いを解く方法は、ビデオを他の誰かに見せること。であれば、これで夏美を救うことができたのか、と思ったら、森繁が言うことには、
「君から渡してもらったわけではない(有里から受け取った)ので、呪いは解けない」
という予想外の展開。これが無ければ、この映画の貞子パートの犠牲者は森繁ひとりで済んでいたはず…。
もしかしたら、貞子に臆さない森繁の活躍で、夏美と有里の呪いは解けるというストーリーなのか、と思ったらすぐに、霊媒師とともに森繁は呪い殺されてしまう。
探偵小説で、途中で探偵が交代するパターンは好きなので、今回、経蔵(安藤政信)登場のシーンで既に「おー!」となった。(先に予告編を見ていたらこの驚きはなかった)


二人目は夏美。
夏美は、本人の言うように、好奇心旺盛な有里のとばっちりで呪いのビデオを見てしまった可哀想な人ではある。しかし、絶望してぐったりしている残り1日の少しの時間抜け出して、呪いのビデオの映像をYoutubeにアップしてしまう。
これはかなりの大ごとで、本当なら、この「呪いのYoutube」を題材に映画が一本作れる内容なのだが、観客の隙をついて、大変な暴挙をやらかしてしまうのには驚いた。


そして三人目は珠緒。
珠緒は、 経蔵の子分の盲目の少女で、ブラックジャックに対するピノコという位置づけらしい。
確かに経蔵は有能だが不遜。しかし観客としてはそれ以上に、経蔵の力を笠に着て、相談者に居丈高にふるまう珠緒に驚く。そしてなぜか棒読み。
真っ赤な衣服と白杖という個性的な外見があるので、喋り方が特徴的でもやや印象は薄まるが、あまりにも棒読みで驚く。普段身についている子どもらしい喋りからかけ離れた台詞なのでしょうがないのかもしれないが、この上から目線の棒読みにはイラっと来た。
そしてクライマックスが近づくにつれ、ただの怖がりの少女になっていくのも驚く。当然、能力者だからそれだけ威張っているんだろうと思ったのだが…。


最後は、貞子&伽椰子。
まず、この映画を観るまで、『呪怨』関連の知識は全く知らなかった。 呪いの家に入ったら死んでしまう事、青白い顔をした男の子の名前が「俊雄」であること、彼が猫の声を出すこと、そして伽耶子の「音」も知らなかった。
ということで、自然と「貞子」推しで二人の対決を見ていたのだが、まず、「バケモンにはバケモンをぶつけるんだよ」の「ぶつける」が、物理的に「ぶつける」「衝突させる」ということだったことに唖然。
そして対決の結果は「合体」という衝撃の結末で、度肝を抜かれた。
そして、Yahoo知恵袋の「貞子VSカヤコ見た人に質問です。2人の戦いは、最後合体するけど、終始、貞子優勢だったってのはマジですか?」という見ていないのにネタバレ全開の質問に度肝を抜かれた。(結果はわかっていてもなお試合展開が気になるタイプか…笑)


で、このあとどうなるのか気になるので、何故かノベライズ版を読破している息子に聞いたら、「世界は大変なことになる」らしい。気になる…。


なお、山本美月が主演だから見ようと思ったこの映画ですが、玉城ティナの「恐怖顔」が素晴らしくて良かったです。ちょうど伊藤潤二の漫画で出てくる主人公のような感じで、途中、山本vs玉城の「恐怖顔」対決があるのですが、玉城ティナの圧勝だったように思います。

富江

この映画を観るつもりは全くなかった。Amazonビデオで、サダカヤを見終わったあとで、オススメ作品として出てきた数作のうちの一本がこれ。しかも見放題となるのは10/31まで、ということで今しかない!
そして「バケモンにはバケモンをぶつけるんだよ!」の精神で、貞子、伽椰子に太刀打ちできる逸材としては彼女しかいないはず!と、
サダカヤに導かれるようにして『富江』を観るに至った。


見始めてすぐに思ったのは、全体的に古い!しばらく見ていたら違和感は無くなったが、それでも古い。
1999年は 、ちょうど社会人になった年で 自分にとっては 感慨深い年。
確かに今から20年近く前だけど、ここまで「古い」と感じてしまうほど、時代の移り変わりは早いのか…。ただ、主演の洞口依子の細い眉毛を見て、大学時代の友達を思い出したこともまた事実。
そして、後述するが、音楽と映像も時代を感じさせるものがあった。


さて、伊藤潤二富江』は大好きな漫画で、映画の土台となったストーリーも知っているのだが、映画のアレンジとしてはベストの組み方だと思う。
特に、富江の出番を抑えて、月子(洞口依子)の記憶喪失という状況に的を絞った中盤までがとても良い。
真ん中にポッカリ空いた穴を抱え、就職をどうしようかと言いながらも、ぼんやり日々を過ごす月子に、当時の自分を重ねたということもあるが、1999年という年自体が、そんな風に不安と空虚な感じが似合う時代のように思う。
その空気感を上手く盛り上げるのが、二見裕志が担当した音楽。『クリーピー偽りの隣人』も『貞子vs伽耶子』も恐怖感を煽る音楽で、それはそれで成功していたが、『富江』の音楽はそれらとは全く違う。
何もなければポップにも聴こえるが、不安感を煽る音楽。迷いを生じさせるような音楽。主題歌のユカリ・フレッシュも「もろ渋谷系」な感じは出しつつも、靄のかかったような音楽で、映画の雰囲気に合っている。


前半部で富江の登場を抑えたのは、菅野美穂のイメージが富江の一般的なイメージとは異なるからのように思うが、それでも後半に喋りまくる菅野美穂は成功している。確かに漫画『富江』の実写化と考えると完璧には遠いかもしれないが、前半部で月子の当惑を丹念に追いかけてきた映画『富江』の続きとしては満点であると思う。これは洞口依子とのバランスが良かったのかもしれない。
最後に富江は月子に「私はあなたで、あなたは私」と語りかけ、ラストでは月子が富江化するが、このラストも、やはり月子の内面の問題の顕在化であるように思う。
何度も言うが、月子の不安な気持ちを盛り上げていたのが、要所要所で流れるムーグの音楽で、自分にとっては懐かしさと不安感を併せ持つメロディだ。
大学時代を思い出す、忘れがたい映画体験となりました。

『貞子vs伽耶子』vs『富江』の結果

ということで、長くなりましたが、バケモンにはバケモンをぶつけた結果、自分の印象に特に残った作品は『富江』となりました。あの頃に青春時代を過ごした人には是非ともオススメの一作です。
なお、『貞子vs伽耶子』については、以下の記事もとても面白かったです。