Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

またトトロを観たくなる!~木原浩勝『ふたりのトトロ』

ふたりのトトロ -宮崎駿と『となりのトトロ』の時代-

ふたりのトトロ -宮崎駿と『となりのトトロ』の時代-

本を読んだきっかけ

最近TBSラジオのデイキャッチ!終了のニュースに驚いているが、podcastやラジオ(いPhoneアプリのラジオクラウド)はもはや生活の一部。
その中でも、やっぱりこの人は話が上手いなあ、よくここまでの情報量を詰め込んで話せるなあと思うのが、岡田斗司夫。(過去に騒動もあり、この人の悪い面も色々と見えましたが、話はやっぱり面白い)
中でも金曜ロードショーでの放送に合わせたジブリ作品の解説が異常に充実していて、それほどジブリを知らない自分も楽しく聴いている。


ただし、実際に、自分が見たことのあるジブリ作品はラピュタとトトロと千と千尋、そしてポニョくらい。 恥ずかしくて人前では言えないが 、ナウシカは見たかどうか微妙で、『火垂るの墓』を観ていない。
この前、小5の娘に聴いてみたら、ポニョ以外は観たことがないというので、近くにあるジブリ美術館に行く日はまだ遠いか…。

トトロ制作時の宮崎駿を一番近くで見た人による裏話

閑話休題
岡田斗司夫podcastの影響から、ジブリの蘊蓄本を読んでみたいと思った自分が手に取ったのは、トトロを扱ったこの本。
表紙にも書かれているよう、「元スタジオジブリ制作デスク」である木原浩勝さんによる制作裏話で、タイトルは、トトロという作品が宮崎駿の以下のような声掛けから始まったことが理由。

木原君、2人で『トトロ』を始めます

当時、まだ新人の範疇(26歳)だった木原さんが制作デスクに指名されて、そこから『トトロ』が始まったという。だから、宮崎駿のことを一番近くで見てきた人によるトトロということになるだろう。


細かい内容は割愛するが、意外だったのは、この本にほとんど文章だけで構成されていること。ポスターの構図や具体的なカットの説明も出ているのに、実際にその画面や絵コンテが登場しないのは、やはり著作権が理由なのだろう。
しかし、読み進めると、何回か見ている作品ということもあり、頭の中で補いながら読むのに慣れ、むしろそちらの方が、アニメ映画制作のドキュメンタリー映画を見せられているようで面白い。
特に、アニメ制作の場において、動画スタッフと原画スタッフの仕事の進め方がフロー図(p97)も付して説明されていた部分は、とても勉強になった。(トトロは原画スタッフによる動画チェックを頻繁に行った点が、過去作とは異なっていたとのこと。)

吉祥寺、秋川渓谷聖蹟桜ヶ丘

木原さんも最後に振り返っているように、現場は毎日笑いが絶えず、いい雰囲気の中でつくられた映画だということで、制作裏話といっても楽しい話の割合が多いと思う。
中でも制作が中盤に差し掛かり、スタッフ内に疲れが溜まっていた9月の時期に、宮崎駿が「強化キャンプ」と称して、秋川渓谷に日帰りでキャンプに行こうと持ち掛けた話が好きだ。そもそもスタジオは吉祥寺にあったこともあって東京の多摩地区(23区以外)の話が多く、そこが好きなところでもあるが、秋川渓谷の大岳キャンプ場は聖地巡礼的な意味でも行ってみたい。
また、トトロ制作の初期には、一部スタッフが聖蹟桜ヶ丘にロケハンに行ったことも触れられているが、これは桜ケ岡公園のことなのだろうか。最近よく行くマラソンコースなので、これも嬉しい。

トトロの解釈や高畑勲作品について

トトロについてほとんど触れなかったが、あとがきに、いわゆるトトロにまつわる都市伝説(物語後半でメイの影がなくなっているのは、既に命を落としたあとであることを示している等)について、製作側の意見が示されているのも興味深い。
また、当然、かなりの時間をかけて作られたシーンも今回分かったので、改めてトトロを見直してみたい。できれば家族みんなで観てみたい。


なお、この本の執筆中に高畑勲監督が亡くなったということで、それについてもあとがきで触れられている。『となりのトトロ』と同時上映だった『火垂るの墓』、そして『かぐや姫の物語』など、高畑勲監督の作品についてもちゃんと観ておきたい。
なお、木原さんの、この本の一つ前の作品となるこちらもすぐに読んでみようと思う。(なお、木原さんは怪談で有名な方だとか。そちらの方も気になります)