Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

ゴジラ×インターステラー~ナチョ・ビガロンド監督『シンクロナイズドモンスター』

シンクロナイズドモンスター [DVD]

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ゴジラ』と『インターステラー』の反省


映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』予告2

ここ最近の個人的な映画ニュースは、満を持して立川シネマシティの極上爆音上映で臨んだ『ゴジラ キングオブモンスターズ』で爆睡してしまったことでした。
どこまで酷かったかを簡単に説明します。

  • 最初はちゃんと見てた
  • キングギドラゴジラの最初の対決もちゃんと見た。
  • ラドンのきりもみ飛行がカッコいい!
  • ここまでも眠気はあったが、そもそも怪獣バトルシーンは、席まで揺れるほどの極上爆音で自然と起きる…
  • しかし、その後しばらく続く人間同士の会話ベースのシーンで完全に爆睡。
  • あれ?いつの間にか芹沢教授が山に登っている!
  • この後はほぼ起きて観ていたはずなのだが…!
  • 世界中の怪獣たちがゴジラの周囲に集まってきて、これは危険だぞ!どうなるのか?あれ?ラドン何故?と思っていたら終了。(起きていたら絶対に抱かない感想)

鑑賞後、一緒に観に行ったよう太(中3)に、「ラストシーンは…」「芹沢教授は…」「モスラの鱗粉が…」と理解できなかった部分について逐一解説を受けることで、いかに自分が何にも観ていなかったのかを理解し、居たたまれない気持ちになったのでした。


さて、数日経ってみると、さらに記憶は朦朧となり、黒髪の女性研究者がチャン・ツィイーだったのか、アン・ハサウェイだったのかもよくわからない状態に。
思えば、5月末でAmazonプライム見放題から外れてしまう映画ということで、アン・ハサウェイが研究者役で出演するクリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』を観た直後に『ゴジラ』を見た形になったのでした。なお、『インターステラ―』は、こちらも眠気を誘われることが多く、最終的に「よくわからなかった」という感想が一番に出てくる、残念な映画体験となってしまいました。

映画『インターステラー』最新予告編


度重なる失態に対して僕はこう決意したのでした。(バケモノにはバケモノ!の『貞子vs伽耶子』理論)


こんな決意をどちらも叶えてくれる素晴らしい映画がありました。
それこそが、アン・ハサウェイ製作総指揮・主演の怪獣映画『シンクロナイズド・モンスター』です。

シンクロナイズドモンスター』という、ものすごく変な映画


映画「シンクロナイズド モンスター」日本版予告

憧れのニューヨークで働いていたグロリア(アン・ハサウェイ)だったが、失業してからというもの酒浸りの日々を送っていた。ついには同棲中の彼氏ティム(ダン・スティーヴンス)に家を追い出され、生まれ故郷の田舎町へと逃げ帰る。グロリアは幼馴染のオスカー(ジェイソン・サダイキス)が営むバーで働くことになるが、その時驚愕のニュースが世界を駆け巡る。韓国ソウルで突如巨大な怪獣が現れたというのだ。テレビに映し出された衝撃映像に皆が騒然とする中、グロリアはある異変に気付く。「この怪獣、私と全く同じ動きをする…?!」舞い上がったグロリアは、怪獣を操り世界をさらなる混乱へと陥れるが、そこに「新たなる存在」が立ちはだかる-!


とにかく、これは、ものすごく変な映画でした。
宣伝通り、アン・ハサウェイは、お酒で失敗を続ける「ダメ女」を演じますが、彼女の周りにいる男性キャラクターに「いいやつ」がいない。

  1. ニューヨークで同棲していた元彼ティムは、上から目線で「稼ぐけど優しくない男」
  2. 田舎町に戻って世話を焼いてくれるオスカーは、「優しいけど魅力の少ない男」
  3. オスカーの友人で、グロリアと一夜を共にしたジョエルは「容姿は魅力的だけど、行動しない男(子分タイプ)」

主要な男性キャラクターは上の3名なのですが、特に「3人目」として登場するジョエルは、その登場順からも、通常なら、ダメ女に救いの手を差し伸べる王子様タイプなのかと思いきや、その後、窮地に立つグロリアを見てみぬふり。そのくせ、いつも彼女のことを気にかけ、ソウルに怪獣が現れると常に心配そうな素振りを見せる。(最後まで)
オスカーは、「モテない常識人」かと思いきや、一番の「モンスター」だったのですが、むしろ「ダメ」という点では、グロリアと似た部分のある、しかも幼馴染。最後には、オスカーが改心してグロリアとくっつくのかと思いきや、最終盤で、グロリアは、元彼ティムのもとに戻ることをオスカーに告げます。確かに、オスカーはダメダメだけど、ティム?えええええ?
結局、ラストは、ティムも放っておいて、オスカーを(怪獣になったグロリアが)彼方に投げ飛ばして終わり、という、意表を突く展開でした。
実際にソウルで建物被害 ・死傷者が多数出ているのに、最後に、グロリアの「トホホ」表情がクローズアップされて終わる名探偵コナン的ラストにも違和感大でした。


しかし、この映画が、アン・ハサウェイ製作総指揮であり、彼女の世間的な評価を知ると、色々と納得できる映画です。特に町山智浩さんの作品評が分かりやすい。


つまり、ネットでの「ヘイター(アンチ)」からの悪評で落ち込んだ主人公が、そこから立ち直る物語という見方です。
確かに、ロボット(オスカー自身)が登場するネット動画を何度も繰り返し見てしまうオスカーには、Twitterで馬鹿をやらかしてしまう若者の匂いを感じたし、愛想を尽かしたグロリアがオスカーに言う以下の台詞は、はるかぜちゃん(タレントの春名風花)が、それこそ「ヘイター」に向けて言っているような既視感がありました。

自分が嫌いなのね
別の理由だと思ってた
私を自分のものにしたいのかと
でももっと単純な話ね
自分が嫌いなのよ
自分のちっぽけな世界が大嫌いなのね
それだけのこと

しかし、全体をネット社会の比喩だと考えたときに、怖くなってくるのは、「2人目」のジョエルの立ち位置が、サイレントマジョリティを可視化し、自分のような人間を糾弾しているように思えてくることです。
ネット全体(特にTwitter)を見たとき、一番目立つのは、世間を煽るような言動を繰り返す(しかし、おそらくリアル社会では目立たない)オスカーのような人間。
また、グロリアのように「ダメな自分」に一度溺れて、そこから抜け出そうとあがいている人も見かけます。
ジョエルは、グロリアに恋心を抱いていることもあり、 常に彼女が心配で、様子を気にかけているという意味では優しい人間です。でも、実際には行動しない。結果として、少しもグロリアの救いになっていません。本来は、オスカーの暴走を止めるのは、ジョエルの役割であるはずなのに、完全に他人事です。
映画としては、アン・ハサウェイが「ダメ女」を脱出して、人間的に成長したという意味で上手く収まっているラストということになりますが、自分をジョエルに重ねて見ると、なかなかムズムズする終わり方で後味が悪いです。また、勿論、オスカーのような人間が改心するラストが本当は相応しい気がしますが、リアルではないということでしょう。
なお、Twitter界で怪獣が出現し、大騒ぎになっているときに、ティムは、Facebookで仲間との信頼関係を築いているのだろうと思います。