Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

『3月のライオン』聖地巡礼の魅力(その2)~河を渡る

その1では、『3月のライオン』の聖地巡礼ではランドマークが重要な要素であることを書きましたが、最も重要なことを書いていませんでした。
それは、三日月町すなわち佃島が水に囲まれているということです。
風景の一部をなすランドマークを多数擁するだけでなく、どこを向いても水面が背景に入る場所が舞台であるということが、実際に現地を訪れると体感できます。
ちなみに、羽海野チカ先生の前作『ハチミツとクローバー』のメインキャラクターが、竹本・花本だったことを考えると、『3月のライオン』の3姉妹の名字が「川」本であるのは、作品世界と何か通じるところがあるのかな、と勘繰ってしまいます。


さて、『3月のライオン』で登場する川(作中での表記は「河」が多い)のほとんどは隅田川
場所に馴染みのない方にもイメージできるように説明すると、浅草からスカイツリーや「金のうんこ」を見るときには川越しで見ることになりますが、その川こそが隅田川です。その隅田川を、浅草からは東京湾に向かって7kmほど下流にくだったところに、川本家のある三月町(佃島)と、零くんの住む六月町を結ぶ中央大橋があります。
中央大橋は、漫画には桐島が自分を顧みながら川本家に向かう、もしくは自宅に戻るシーンで「渡る橋」として登場します。中央大橋を「渡る」ことは単なる移動にとどまらず、心理的な要素が多分に含まれる行動なのです。したがって、聖地巡礼では、中央大橋は、絶対に渡ることがオススメです。(中央大橋は1巻の表紙の橋です↓)
3月のライオン 1 (ジェッツコミックス)


その際、重要なのは順序です。その1で紹介した最後に挙げた事例のうち、中央区の「おでかけマップ」は、月島駅スタート→八丁堀ゴールというルートになっていますが、これは通常とは反対のルートでオススメできません。主人公・桐島の気持ちになって三月町(佃島)を訪れるなら、当然ですが、八丁堀スタート→月島駅ゴールというルート(『3月のライオンおさらい読本初級編』のルート)にした方が良いです。
余談ですが、宮崎駿ジブリ映画では、序盤でトンネルをくぐるシーンが出てくることが多いです。作品世界の中心に外部から入り、物語に没入させる仕掛け*1として(もっと深読みも出来ますが…)重要な役割を持つトンネルは、2022年に開業予定のジブリパークで絶対に用意すべきでしょう。『3月のライオン』の聖地巡礼は、中央大橋を通って「河を渡る」だけで物語への没入度が高まる、テーマパーク級の仕掛けを内在しているのです。
(下は「おさらい読本初級編」の掲載ルート)

f:id:rararapocari:20190630082808j:plain


なお、順序という意味では、川本家を訪れるためには、隅田川を渡ったあと、佃島の船溜まり(佃川支川)を渡る必要があり、佃小橋は、この船溜まりを渡る橋となっています。
したがって、中央大橋→佃小橋→川本家というのが作品内でのお約束のルートとなっており、「おさらい読本」のコースは、まさにそれになっています。(原作を大事にしている気持ちが伺えます) 
しかし、現地を訪れると分かりますが、中央大橋を渡って三日月堂(川本家)に行くのであれば、佃公園(隅田川テラス)から住吉小橋を通る(上図の3(中央大橋)→12(住吉小橋)に向かう)コースが近道だし、作品世界とシンクロ出来る隅田川沿いルートなので、こちらをオススメします。なお、1巻の表紙の場所で写真を撮影する場合は絶対に隅田川テラスに寄り道する必要があります。
佃小橋は小さい橋なので行ったり来たりしながら堪能しましょう。
(下は佃公園の隅田川テラスを通る桐島@10巻98話「やわらかい風」)
f:id:rararapocari:20190630082931j:plain


なお、上図4の石川島公園は、作中での登場頻度が少ないので、時間と体力を節約したい方は、こちらもカットしましょう。
したがって、三日月堂を佃煮天安とした場合のオススメルートはこのようになります。*2


このシリーズですが、もう少し続きます。

参考

前回書いていませんでしたが、『3月のライオンおさらい読本 初級編』には、上に引用した聖地巡礼マップのほか、松井玲奈が月島で撮影したコラボグラビアがあり、こちらも現地を訪れたり写真を撮ったりする際には参考になります。佃煮天安の写真がやっぱりいいですね。

参考2

こちらのニュースによれば、東京五輪に向けた隅田川の魅力向上のために、住吉小橋(住吉水門)のあたりも工事をするようですね。月島川水門の部分も連続化に向けた整備工事を行うということは、もしかしたらモモちゃんがアヒルを追いかけて行き止まりになった箇所(上図に入り切れていませんが13にあたる)も通れるようになるのかも…
www.sankei.com

*1:ディズニーランドはそういう仕掛けがよく出来ています。スプラッシュ・マウンテンも滝から落ちる前に物語に「不穏な雰囲気」が入ることが気持ちを盛り上げます。

*2:「おさらい読本」で三日月堂があるとされる10の位置には商店はありません。佃煮屋さんとして一番近いのは、「つくだに丸久」ですが、松井玲奈のグラビアで写真を撮影しているのは「佃煮天安」となります。