ファン・ジョンミン主演、映画「工作 黒金星(ルビ・ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」7月19日(金)に日本公開決定!日本オリジナルポスター解禁
歴史的事実といっても、90年代という、つい最近の歴史を扱った映画。
自分は1974年生まれなので、1996年の総選挙、1997年末の大統領選挙の頃には完全に成人しているし、平成で言えば、平成8年、9年の頃のことなので、本当につい最近の出来事のように思える。
日本にいると、途中、社会党の党首が首相となったり、民主党が政権を取っていた時代があったりもしたけれど、自然災害以外で、平成の30年間で国が大きく変わるような歴史的事件は無かったように思う。
韓国の1990年代は、少し調べても、中国との国交樹立が1992年、IMFによる韓国救済が1997年に起きている等、日本と比べて歴史が濃密。
そして、「北風」*1が吹いて与党が勝利した1996年の総選挙。「北風」が空振りし与党が敗北、金大中が勝利した1997年末の大統領選挙。この時期の対北朝鮮工作が、『工作』の舞台となる。
登場人物は、黒金星(ブラック・ヴィーナス)こと主人公のパク・ソギョン。
その上司であり、最終的に、与党勝利を何よりも優先するチェ・ハクソン。
北朝鮮側にいて、全く感情を表に出さない、リ所長。
観客をもイライラさせる北朝鮮の「課長同志」、チョン・ムテク。
基本的に、この4人をメインキャラクターとして話が進んでいく。
最初は、輸入品を「メイドイン北朝鮮」にする話*2など、敵か味方か正義か悪か、よく理解しきれないままに話が進むが、黒金星とリ所長のふたりの関係については、予備知識なくても十分に追っていくことが可能で、エンドロールでは、図らずも涙していた。というか、あのラストで泣かない人はいないのではないか。
途中で挟まる、北朝鮮の一般市民の極度に貧しい生活、そして、ポメラニアンを連れて登場する金正日の存在感など、何となく知っていた情報も、映像で見ると、胸に刻み込まれるような思いがする。
映画(もちろんテレビ番組でもいいが)を、多くの面から楽しむには、歴史的背景、出演する俳優の演技や、撮影技術的なことも知っておいた方がいいだろう。ちょうど、この日は、『天気の子』も見たが、監督の前作や、その作風・評価も知っており、声優や主題歌についてもわかって観る映画と比べて、『工作』は、色んなことを知らないで観たため、その世界を十分に堪能できたかと言えば疑問ではある。
しかし、そうした作品世界や歴史背景を知るためのレセプター(受容体)を増やすという意味では、この映画は、自分にとって大きかった。
本や映画の良さを「世界を広げる」という言葉で表現することがあるが、実際には、知識を広げるのは、本が適しているように思う。知識は、個人個人のペースややり方でないと身につかないからだ。
映画や映像作品は、知識を受け入れるためのレセプター(受容体)を与えてくれる。それは好奇心という言葉で置き換えられるだろう。だから、本当に作品世界を楽しめるのは、少し時間が遅れてからかもしれない。しかし、世界を広げるためには重要な「種」なのだと思う。
今回は、金大中大統領が誕生する頃の話だったが、金大中は、1971年の大統領選で敗北後、1972年にKCIAによって日本で誘拐されて殺されかけ、さらに1980年の逮捕後に死刑判決を受け、1987年に再び大統領選で敗北、そして1997年についに大統領に就任し、2000年にはノーベル平和賞を受賞…という怒涛の人生。
この間に、韓国は、光州事件や民主化などの大きな変化があり、それを題材にした有名な映画もある。もっと韓国の歴史を知りたいと思わせる一作でした。
次は、当然このあたりを見たいです。本なら『知りたくなる韓国』でしょうか。
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