Yondaful Days!

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吉岡里帆主演映画のノベライズ~豊田美加『見えない目撃者』

見えない目撃者 (小学館文庫)

見えない目撃者 (小学館文庫)

視力を失った、そして事件を”目撃”した。

警察学校の卒業式の夜、事故で視力と最愛の弟を失った浜中なつめ。人生に絶望する中である日、車の接触事故に遭遇するが、後部座席からは少女の叫び声が聞こえてきた。なつめは警察へ赴き、自分の“目撃”した情報を提示して誘拐事件だと訴えるが、捜査は打ち切りに。もうひとりの目撃者である少年、春馬を探し出し、ともに少女の行方を追ううちに、家出少女を救う“救様”の存在を知る。そして四体の惨殺死体が発見され、少女連続殺人事件が浮上。真相を追うなつめは殺人鬼から逃れ、少女を救えるのか!?五感を震撼させるノンストップ・スリラーをノベライズ。


ちょうど9/20から公開している吉岡里帆主演の同名映画のノベライズで、珍しく知人に貸してもらった本。そういうことは滅多にないし、すぐに読めそうだったので、折角なので順番待ちしている本の行列に割り込んで読み終えた。

面白かった!けど…。

読む前に少し調べると、映画は韓国映画のリメイクで、この文庫本は原作小説というわけではなく、ノベライズ。ノベライズを読むのは初めてかもしれない。
ということで、キャストを確認して、主人公なつめは吉岡里帆で、スケボー少年・春馬を高杉真宙で、この二人についてはイメージを完全に固めてから読み始めた。ところで、1996年生まれの高杉真宙は、自分にとっては、仮面ライダー鎧武の龍玄。6年前の鎧武では17歳でリアル高校生だったが、今も賭けグルイやこの作品では高校生役。対する吉岡里帆は1993年の早生まれなので、4学年上に当たり、年齢差としてはちょうど良いキャスティングなのかも。



吉岡里帆主演『見えない目撃者』予告



さて、この映画はR15指定で、何故なのかと思ったら、少女連続殺人事件の映像がかなりどぎついようだ。誰もが口にするように、映画『セブン』と設定が非常に似ている部分があるので、確かにさもありなんとは思うが、映画としては、そこに手を抜かなかったことを評価するコメントも見た。ストーリーとしては、「ノンストップ・スリラー」の言葉通り、ダレる部分はほとんどなく、緊迫感を持ったまま最後まで進むし、展開にそこまで無理がない。ハンディキャップを背負ったなつめが活躍するさまも読み手としては気持ちが良い。

ただ、ノベライズを読むと、やはり映画で観るべき作品だろう、と思う。何より、吉岡里帆が「目が見えない」という役をどう演じるか。そこが映画としての一番のポイントだからだ。R15指定の理由となっているグロテスクな映像が、どの程度必然的なカットなのかも、ノベライズを読む限りでは全くわからない。


ということで、この本が「原作小説」ではない以上、映画を先に観るべき作品だろう。逆に言うと、こういったノベライズは誰が読むのか、とも思えてくる。*1例えば、 同じく映画を観た人が買っているのだろう『天気の子』や『君の名は』の小説版は、作品世界をより突っ込んで知りたい人向けという気がするが、こういったサスペンス映画のノベライズには、掘り下げたい作品世界はあるだろうか。ちょうどストレスなく見終えることのできる映画であるからこそ、何度も読み返したいとは思えない気がするし、小説を読んでしまったら映画を観ないように思う。いや、そうではなく、今回、この本を貸してくれた人のように、単純に予告編を見て興味を持ったが、見に行く時間が無かったり、映画を観るほどではない、という人たちが買うのを見込んでノベライズを出しているのかもしれない。もしかしたら、書店の平積みによる映画の宣伝効果のみを狙っているのかもしれない。
ここら辺は、純粋に分からない。

さて、今回ひとつ注文をつけたかったのは、ノベライズならではの情報をもっと載せるべきだということ。具体的には、先ほども書いた「目が見えない人」についての説明。例えば、この作品では、なつめ(吉岡里帆)が使う携帯電話が話の大きなポイントになっている。自分は目の見えない人がどのような形でタッチパネルを操作しているのかにとても興味がある。(おそらく自分は目隠しをしてスマホの操作は出来ない)中途失明者の人ならではの苦労もあるだろうし、盲導犬との話も含め、本の形式であれば、追加エピソードを入れても良かったと思う。

ということで、ネタバレは避けましたが、映画としては絶対に面白いだろうな、と思います。既にある映画のリメイクということで、より良いものを作ろうとされているだろうし、吉岡里帆高杉真宙という美男美女の組合せも大画面で堪能したい。自分は、まずは、もとの韓国映画『ブラインド』(2011)に当たってみたいですね。あと、中国版リメイク(2016)も興味あり。


ブラインド(字幕)

ブラインド(字幕)

*1:作者の豊田美加さんは多くの映画のノベライズをされている方のようだ