Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

この種の連作短編集では近年ベスト~松井玲奈『累々』

累々作者:松井 玲奈集英社Amazon 本当の私は誰。結婚、セフレ、パパ活、トラウマ……。不穏さで繋がる全5編。大きな話題となったデビュー作『カモフラージュ』の衝撃を超える、著者の新境地といえる意欲作。人間の多面性を切り取る、たくらみに満ちた自身初の…

軽く読むべきだった芥川賞候補作~安堂ホセ『ジャクソンひとり』

ジャクソンひとり作者:安堂ホセ河出書房新社Amazon井戸川射子『この世の喜びよ』、佐藤厚志『荒地の家族』が受賞した第168回芥川賞の候補作が発表になったとき一番気になった作品はこの本のタイトル。 実際に本を見てみると装丁も良く、字も小さい。 これは…

文庫解説に2度救われる~白井智之『お前の彼女は二階で茹で死に』×小野一光『冷酷 座間9人殺害事件』

2冊の文庫本を平行して読んだ。 端的に言うと、救いがなく、途方に暮れるような終わり方をする2冊だったが、どちらも解説に救われてやっと戻ってこられたという感じ。 しかも、読み終えてみれば、2冊をまとめて読むべきではない「混ぜるな危険」案件だった…

ポジティブさに引き込まれる~井戸川射子『この世の喜びよ』

この世の喜びよ作者:井戸川射子講談社Amazon 娘たちが幼い頃、よく一緒に過ごした近所のショッピングセンター。その喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。言葉にならない感情を呼びさましていく芥川賞受賞作「この世の喜びよ…