Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

脱「思いやり」で社会を変える~神谷悠一『差別は思いやりでは解決しない』

差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える (集英社新書)作者:神谷悠一集英社Amazon 「ジェンダー平等」がSDGsの目標に掲げられる現在、大学では関連の授業に人気が集中し企業では研修が盛んに行われているテーマであるにもかかわ…

このtwitterアイコンは著作権的にあり?なし?~井上拓『SNS別最新著作権入門』

SNS別 最新 著作権入門: 「これって違法!?」の心配が消える ITリテラシーを高める基礎知識作者:井上 拓誠文堂新光社Amazon著作権の話は定期的に最新情報を確認しておきたいと思っている。「違反しているけど黙認されている場合」というグレーゾーンが非常に…

19世紀のスイス、ドイツに思いを馳せる~『図説 アルプスの少女ハイジ 増補改訂版』

図説 アルプスの少女ハイジ 増補改訂版: ハイジでよみとく19世紀スイス (ふくろうの本)作者:ちば かおり,川島 隆河出書房新社Amazon読みたくなる本(小説以外)の条件として、自分は以前から「読みやすい・読み通せそう」という点を重視していた。 さらに最…

オリジナル・ラブ20枚目のアルバム『MUSIC, DANCE & LOVE』と積み減らし

【Amazon.co.jp限定】MUSIC, DANCE & LOVE [完全生産限定盤] [CD + DVD] (Amazon.co.jp限定特典 : メガジャケ 付)アーティスト:Original LoveビクターエンタテインメントAmazon当初、9/21に発売を予定していたが、発売が11/16に延期となっていたオリジナ…

ドラマ『silent』、映画『LOVE LIFE』と当事者キャスティング

今年は、アカデミー賞受賞作品の『コーダ あいのうた』が当事者キャスティングで注目されたのと対照的に、ノミネートで話題になった邦画『ドライブ・マイ・カー』では、手話(韓国手話)を使う役を聴者が演じていて悪い意味で話題になり、「当事者キャスティ…

どんなに離れていても愛することはできる~深田晃司監督『LOVE LIFE』

深田晃司監督は、『よこがお』を結局観に行けなかったのが心残りだったので、今回、他の映画と迷った挙句、上映時間や劇場*1も吟味して観に行くことに。 敬太君 この映画で「序盤に起きる出来事」の破壊力は本当に凄まじい。 公式HPのあらすじで書かれている…

記憶の中の小説VS映画~蜷川幸雄監督『青の炎』

青の炎二宮和也Amazonこの映画は、ずっとPrimeVideoのウォッチリストに入っていたが、そうなってしまったら、よほどの機会がないと観ないことになる。というのがパターンだ。(本は図書館の者は読むが、買ったら読まないのと似ている) しかし、Twitter上で…

紀元前から現代までを18の漫画でつなぐ~茂木誠・大久保ヤマト 『バトルマンガで歴史が超わかる本』

バトルマンガで歴史が超わかる本作者:茂木誠,大久保ヤマト飛鳥新社Amazon歴史と漫画の相性が良いことはよく知っている。駿台予備校世界史講師による本ということもあり、これはかなり期待できるのではないか? と思っていたが、店頭で本を実際に見ての印象は…

「叱られる小説」と思って読んだら「呆れられる小説」~ミン・ジヒョン『僕の狂ったフェミ彼女』

僕の狂ったフェミ彼女作者:ミン・ジヒョンイースト・プレスAmazon 以前「狂ったフェミ彼女」の本を読んだことがある。 pocari.hatenablog.com この本(『私たちにはことばが必要だ』)の衝撃(というか罵倒され体験)は自分にとって過去最大級に大きく、その…

作品テーマを見抜けなかった~ジョーダン・ピール『NOPE』

今回、事前情報を出来るだけ遮断して観に行き、「UFOの映画らしい」程度のことしか知らなかった。そのことで逆に、映画館に入ってからもっと知っておくべきだったのでは?と不安になったが、広い牧場と空が絵的に美しい映画で、内容も、ホラーというかパニッ…

あみ子は可哀想?~今村夏子『こちらあみ子』

こちらあみ子 (ちくま文庫)作者:今村夏子筑摩書房Amazon今村夏子『星の子』のラストは、自分にとって衝撃だった。物語のセオリー通りに進まない話だったからだ。 pocari.hatenablog.com しかし、その後、映画を観て改めて考え、読者の押し付けた幸福の物語に…

タイル楽しい~加藤郁美『にっぽんのかわいいタイル 昭和レトロ・モザイクタイル篇』

増補新版 にっぽんのかわいいタイル 昭和レトロ・モザイクタイル篇作者:加藤郁美国書刊行会Amazon 今年の夏休みは、岐阜への帰省にかこつけて、あいちトリエンナーレ(今年から名称が変わり、「トリエンナーレ」が取れて「あいち2022」となった)に行ってき…

ブライアンを愛でる映画~『ブライアン・ウィルソン 約束の旅路』

ビーチボーイズは、自分にとって本当に思い入れのあるグループで、ビートルズはむしろビーチボーイズとの関連から聴き始めた。すなわち『ラバーソウル』に対抗して『ペットサウンズ』が出来、『ペットサウンズ』に対抗して『サージェントペパーズ』が出来た…

「フラグ」に逆らって生きる~大森立嗣監督『星の子』

今村夏子『星の子』は、自分にとって衝撃をもって受け止めた作品だけに、映画では、どのように改変されているのか?そして芦田愛菜はどう演じているのか? 色々と興味を持ってみた映画だった。 そして、同時期に読んだ今村夏子『こちらあみ子』が、『星の子…

それぞれのリトルホンダを育てるということ~長沢栄治監修『13歳からのイスラーム』

13歳からのイスラーム作者:長沢 栄治かもがわ出版Amazonイスラームについての本を読むのは久しぶりだ。 過去のブログを振り返ると、5年前くらいに少し固めて読み、それ以降は、本としてはあまり読んでいなかった。 ということもあり、今回、リハビリがてら易…

『さかなクンの一魚一会』×『さかなのこ』

学ラン姿で釣りをするのん そのビジュアルに一目惚れして待ちに待った映画『さかなのこ』*1。 まずは原作で予習を済ませて万全の体勢で迎え撃った。 さかなクン『さかなクンの一魚一会』 さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~作者:さかなクン講談…

「しかたがない」と犠牲を強いてきたのは誰か~平井美帆『ソ連兵へ差し出された娘たち』

ソ連兵へ差し出された娘たち (単行本)作者:平井 美帆集英社Amazon戦争の話というと、1945年8月15日を機に終わり、その後は混乱期のどん底から立ち上がっていく。そのイメージが強かった。*1 しかし、ラジオでフィリピンや中国の残留孤児について扱った映画『…

カモン!(少し)高いところ!~『東京もっこり散歩』×『東京 街なか山さんぽ』

東京もっこり散歩──街中のふくらみを愉しむ作者:いからし ひろき自由国民社Amazon東京 街なか山さんぽ 地形と歴史を楽しむ超低山ガイド作者:江戸楽編集部メイツ出版Amazon 丘を越え、行こうよ。古墳、築山、富士塚…もっこりでほっこり。 日本の国土は山地が…

井上荒野は君に語りかける~井上荒野『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』

生皮 あるセクシャルハラスメントの光景作者:井上 荒野朝日新聞出版Amazon 小説講座の人気講師がセクハラで告発された。なぜセクハラは起きたのか? 家族たちは事件をいかに受け止めるのか? 被害者の傷は癒えるのか? 被害者と加害者、その家族、受講者たち…

ラスト1ページの衝撃~今村夏子『星の子』

今村夏子の作品には前々から興味があった。 特に、豊崎由美×大森望の「文学賞メッタ斬り」の芥川賞予想の企画(ラジオ)で、候補作に入るたび、豊崎由美の「読む楽しさ」がこぼれ落ちるような評が尋常でなかったことが大きい。 さらに、枡野浩一×古泉智浩のp…

楽しい仕掛けに満ちたびっくり箱のような本~横道誠『唯が行く! ー当事者研究とオープンダイアローグ奮闘記』

唯が行く! ー当事者研究とオープンダイアローグ奮闘記作者:横道 誠金剛出版Amazon 双極性障害の家族を持ち自身も発症の疑いを持つ大学生、唯(ゆい)は大学のサークル活動を起点として自助グループの運営にかかわるようになり、当事者研究とオープンダイアロー…

自転車の夢、遠のく(笑)~栗村修『今日から始めるスポーツ自転車生活』×高千穂遙『ヒルクライマー宣言』

(前回までのあらすじ) 高千穂遙『ヒルクライマー』は、小説ながらも、素人が自転車にのめり込む様子が描かれており、舞台が生活圏に近いことや、普段ランニングをしていて目につく自転車乗りの人たちの生態がよくわかる内容だった。 高千穂さんがロードバ…

対話を通じた子どもたちの変化に涙~豪田トモ監督『こどもかいぎ』

映画は「これが観に行きたい!」と決まっている時もあるが稀で、今回も 8/1の午後にiPhoneのバッテリー交換に行く、iPhonを預けている時間に見られる映画があれば… 場所はAppleストアのある有楽町か新宿 映画コムで気になる映画を探して、上映時間を確認して…

「坂馬鹿」たちに鼓舞される小説~高千穂遙『ヒルクライマー』

ヒルクライマー (小学館文庫)作者:高千穂遙小学館Amazon近藤史恵さんの一連の自転車ロードレース小説の関連でAmazonのオススメにこの本が出てきたときは、「同姓同名の人がいるんだな、しかも作家で…」と思ってしまった。 しかし、確認すると「クラッシャー…

ツール・ド・フランス2022後半×近藤史恵『スティグマータ』

news.jsports.co.jp さて、終わってみると、1週目のポガチャルの優勢は、2週目以降、ユンボ・ヴィスマの総合力によって抑えられ、マイヨ・ジョーヌと山岳賞はヴィンゲゴー、マイヨ・ヴェールはファンアールトが取り、つまり4賞*1のうち3賞をユンボ・ヴィスマ…

行きたい!が増える~岡部敬史、山出高士『見つける東京』

見つける東京作者:岡部 敬史東京書籍Amazon岡部敬史・文、山出高士・写真による「目でみることば」シリーズは、手に取りやすいサイズ、写真中心で次々とページをめくりたくなる本だが、この本は、その魅力をさらに倍化した。 構成は、同一キーワードに関する…

栗村修さんの名解説とともに~近藤史恵『サヴァイヴ』

ツール・ド・フランス(ジロ・デ・イタリア)については、Amazonプライム経由で見られるデイリーハイライトと関連番組を見ているが、その時に出てくる解説でも特に好きなのは、栗村修さん。 元選手とは思えない軽々しいトークとダジャレが素晴らしい。 どう…

ツール・ド・フランス2022前半×近藤史恵『エデン』

エデン (新潮文庫)作者:近藤 史恵新潮社AmazonAmazonプライムのJSPORTS(お試し期間無料)にも登録し、ジロ・デ・イタリアの振り返りとツール・ド・フランスの追っかけを始めた。 ジロ・デ・イタリアも約3週間かかるレースなので、休息日にまとめて7~9レー…

ツール・ド・フランスを迎撃~近藤史恵『サクリファイス』×映画『パンターニ/海賊と呼ばれたサイクリスト』

今年は、色んなタイミングが重なり、ツール・ド・フランスを見てみようということになった。 ロードレースの小説の傑作と言われる『サクリファイス』のシリーズを、これを機会に読み直してみよう、そういう流れになるのは当然のことだ。 ということで、ツー…

みんな最悪なんだからみっともなく生きていい~ヨアキム・トリアー監督『わたしは最悪。』

水曜日の仕事終わりに時間が取れそうと思ったとき、ド派手なエンタメや主張のはっきりした作品「ではない」作品を観ようと思って選択した映画。 で、実際、観に行って良かった。 こういう風に、何だかわからないものを観に行って、何だかわからない感じで帰…