この巻、アルプス越え、カンネの会戦で時代の寵児となったハンニバルも、後半は失速。ハンニバルがいかに天才であろうとも、スペイン、イタリア南部、シチリアと広範囲に散った戦場で、一人で全てを行うことはできなかった。また、補給を行うカルタゴ本国が無能だった。ここら辺のエピソードは、ビートルズにはジョンとポールがいたが、ビーチボーイズにはブライアンしかいなかった、というエピソードを思い出させる。*1なお、この巻で、26歳だったハンニバルは最後には40歳を過ぎていた。まだ死んでいません。
ハンニバルに代わって、後半部分の主役となったのはアレキサンダー大王、ハンニバルと並び称される「天才的な武将」スキピオ。ハンニバルの弟が指揮するスペインのカルタゴ軍を破り、カルタゴの本拠地アフリカに目を向ける。ここでこの巻終わり。
しかし、今回ローマ軍のヒーローは、スキピオだけではない。ハンニバル軍にしつこく食い下がった「イタリアの剣」マルケルス、「イタリアの盾」「持久戦の創始者」ファビウスなど、さまざまな人材が登場。さらに、カルタゴ軍に寝返ったシラクサにはアルキメデスがおり、ローマ軍を苦しめる。(シラクサは結局、ローマ軍に陥落。アルキメデスは陥落時の混乱の中でも、数学の問題を解くのに夢中で、殺されてしまったという。)総じて、魅力のある人物が満載で面白い巻だった。
なお、この頃のローマには、まだ鐙(あぶみ)がなかった。*2騎兵が少なかったのは、こういった理由によるという。鐙の発明は紀元後11世紀を待たねばならない。
ところで、4巻でもそうだったが、話の中では、ガリア人(ケルト人)の地位がものすごく低い。木っ端扱い。現在のフランス人というのは、これらのフランス原住民ではなくて、ローマ人なのかな?