Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

もっと民意を反映できる政治を

選挙が近づいている。
ネットでは小泉支持が多数派で、もともとそこまで小泉首相を好きでなかった*1僕も、ここ数日ですっかり小泉支持に傾いている。
特に、いつも読んでいるIrregular Expressionがいつにも増して調子がいい。というか、反小泉勢にダメなのが多い。
また、視点としては、「金よりも人事」を重視する小泉流について説明したマネックス・ビーンズ社長 松本大のつぶやきが面白い。
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それにしても昨年の参院選では、2大政党だ!マニフェストだ!と大騒ぎしていたのに、1年経ってみると同一政党内の分裂で衆議院解散で、民主党は存在感ゼロ、という歯切れの悪い結末。衆議院の方はマニフェストで選んだのではないとは言え、何を基準に投票すればいいのかがよくわからなくなってきた。
友人へのメールにも「よその国(特に米英)では、どうやってうまいことやっているのだろう?」とぼやいていたところだった。そんな中、日曜日のJMM冷泉彰彦の「選択のマトリックス」と題されたレポートが、まさに僕の悩みに答えてくれる内容で感激。まさに念ずれば通ず、というやつだ。
さて、「よその国では、どうやってうまいことやっているのだろう?」という僕の疑問に対する回答は非常にわかりやすいものだった。
すなわち、「米英でもうまく出来ていない。もっと言えば、選挙制度による民意の反映が出来ていない。」ということ。
数少ない民意の反映の機会である選挙でそれが出来ないのは、民主政治のあり方に関わる大きな問題なのだが、これについて冷泉はポイントを「選択肢」だとしている。

それは、選択肢が足りないという問題だと思います。郵政だけでない他の争点との選択のマトリックスに空白があるのです。そのために、明らかに国政レベルでの判断が必要であり、民意の反映がされるべき問題に、政党や候補者という形では、適切な選択肢がないケースがあるのです。

例えば郵政民営化に限って考えた場合、今回の選挙は非常に分かりやすい構図になっている。反対派候補しかいない多くの選挙区には「賛成派」の刺客が送られてきており、誰もが賛成/反対を選択できる。
しかし、ここに例えば「外交」という視点が入り、それが二者択一だとすれば、選択肢は2×2の4つとなる。

(1)小さな政府=対米追随、(2)小さな政府=国際協調、(3)大きな政府=対米追随、(4)大きな政府=国際協調、の4つです。小泉自民党は勿論(1)ですし、自民党内の造反派は(3)ということになるのでしょう。そして、民主党の主流としては(2)のようです。
ところが、まず民主党小泉政権への対抗をする必要から、元来が(2)の位置から(4)に変わってしまっています。岡田代表は「郵政は主要な争点ではない」と言っており、その真意は「元来は(2)だが、支持基盤の組合の問題と、政権への対抗から仮に(4)になっている、その不自然さを自民党に突かれないようにしたい」ということなのでしょう。

例えば、僕自身は、基本的に(2)が好ましい*2と感じ、先の参院選では、(2)ど真ん中だった民主党に一票を投じた。しかし、今回、ほとんどの候補者は(1)か(4)に集約されてしまい、そのような選択は不可能である。
同様の問題は、米英の選挙でも生じており、

英国では今年の5月に総選挙があったのですが、ここでは日本と同じ問題が起きています。(1)小さな政府=イラク派兵継続、(2)小さな政府=イラク撤兵、(3)大きな政府イラク派兵継続、(4)大きな政府イラク撤兵という4つのマトリックスのうちで、ブレア首相率いる労働党は(3)を掲げ、対する保守党は(2)を主張しました。

2004年のアメリカ大統領選の場合はマトリックスは更に複雑でした。主要な争点が、
1.一国主義か国際協調か
2.小さな政府か大きな政府
3.宗教保守の価値観か、リベラルな価値観か
という具合に3つありましたから、単純に考えて選択のマトリックスは8つあっても良かったのです。ですが、実際は(1)一国主義=小さな政府=宗教保守という共和党と、(2)国際協調=大きな政府=リベラル、という民主党という2つのセットしか選択肢としては呈示されなかったのです。

という具合だ。
これについて、冷泉は、小選挙区と二大政党制に問題があるとし、日本の議会制度は選択肢を広げるような方法を考えるべきとしている。さらに具体的な案として二つを挙げているが、その二つ目が非常に納得の行くものだった。

もう一つは、党議拘束です。日本の政党はほとんどの議会内投票に関して、厳しい党議拘束をかけます。選挙の争点であれば、民意が反映されますが、議会の任期中に起きた大きな政治判断については、有権者に真剣に問うことなしに、党の中央での決定に党議拘束がかかってしまうことになります。
これを防ぐために、党議拘束を外して、法案を議員が選挙区に持ち帰り、支持者と決めた自分の政策に基づいて行動する、このことを真剣に考える時期が来ているのではないでしょうか。自民党としては、「議院内閣制という制度下では党議拘束は当然」という見解を持っているようですが、これは間違いだと思います。

本当にその通りだ。
郵政関連法案の採決にしたって、そもそも国民的な議論など無かった。*3マスコミも票読みに忙しく、評論家的な見方が支配的で、もう少し根本的なところからその是非が報じられる機会が多くてもよかったと思う。が、それは結局「民意が反映されない」という無力感から来ているものだろう。
とすれば、「党議拘束を外して、法案を議員が選挙区に持ち帰り、支持者と決めた自分の政策に基づいて行動する」というのは、無力感を排除し、真に国民的な議論が出来る基礎となれる方法だと思う。勿論、全ての案件について選挙区の意見を聞く必要はないし、国民投票ではないのだから、多数決を取る必要もない。ただ、手順として、意見を聞いた上で、法案の投票行動を決定し、それについて説明する、というのがあることによって、

  • 要所要所で民意を反映させやすくなる
  • 次の選挙での判断材料になる→国民が真面目に選挙に取り組むことが出来る。

など、メリットが大きいだけでなく、今それが成立しているとは思えない「民主政治」にかなり近づくことが出来るのではないかと思う。
そもそも郵政関連法案だって、前日までどう動くか読めない議員の投票行動が、一体誰の「民意」を反映しているのだろうか?
先日、サイバーエージェントの藤田社長*4が、「厳しい業務に耐えられずに、入ってすぐに新入社員が辞める会社があるが、うちの会社はどんなに厳しくても辞めない。会社は新入社員に厳しくても辞めないくらいの「夢」を提示するべきだ」という主旨のことを言っていた。政治も同じだと思う。ここまで政治に無力感の漂う中、政治家は、もっと夢のある「政治」*5像を提示して、国民のやる気を取り戻す必要がある。僕には、今のままで「民主的な」政治が行われているとはとても思えない。
 

逆リンクehLabLog:下地氏、自公破る 沖縄選挙区

*1:特に、任期中に消費税を上げないと明言しているのが理屈に合わないと感じていた。

*2:ただし、中韓におもねることのない国際協調

*3:ところで、郵政関連について「議論が尽くされていない」という意見を聞くが、政治家もプロなんだから、限られた時間で成果を出してほしい。時間が足りないのはやり方がまずいのだと思う。

*4:奥菜恵の元だんな

*5:現実的に言って、夢のある「生活」像は、誰も提示できないと思う。増税も避けられないだろう。それなら、せめて納得して税金(年金も)を払える世の中がいい。