Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

ワーク・ライフ・バランスと持続可能な生活

人によっては「いまさら」な言葉なのかもしれないが、最近、ワーク・ライフ・バランスという言葉を知った。簡単に言うと、仕事一辺倒の働き方を見直し、家庭や勉強のための時間を確保するという考え方である。これは、Yahoo!辞書の定義を見てもわかるとおり、アメリカで、労務管理の一環として生まれたもので、労働者の、というよりは、会社側の先進的な考え方として用いられることが多いようである。

早く帰宅して勉強したり、家族との関係を密にすることで満足度を高め、さらにそれによって仕事の生産性が上がれば、結果的に会社にメリットをもたらすことができる。

ここで、「仕事」の対として挙げられている「勉強」「家庭」のうち、「勉強」(自己研鑽)については、これまでも自分の中では、常に興味の対象であり、それなりに努力はしてきた。
一方、「家庭」の重要性については、これまでほとんど意識していなかったが、子どもができてから、考え方が大きく変わったように感じる。
たとえば、「結婚」という出来事は、自分の「家庭」観にそれほど変化を与えなかった。結婚しても、夫婦は独立した大人であるので、互いが依存する部分というのは、それほど大きくないし、調整が効くものなのだからである。
しかし、子どもができると、そうは行かない。子どもが「独立」した人間でないだけでなく、夫婦間のバランスが大きく崩れることが原因だ。
結果として、それまでに比べて、家族の「良い」状態/「悪い」状態が、ともに増えたため、必然的に、「良い家庭」にするにはどうすればいいか、を強く意識するようになった。
変わったのは、それだけでなく、家族内に「弱者」を抱えることで、自分の住む「地域」の安全(たとえば、道路、公園遊具、犬、段差 etc)や魅力(自然、人、安全、賑わい)に目が向くようになった。
そう考えると、子どもが生まれてから随分と「ものの見方」が変わってきたかもしれない。
しかし、そう「家庭」や「地域」のことばかり考えてられないのも事実だ。どう頑張っても毎日9時5時の生活はあり得ないし、毎日9時20時だって、今の自分の能力と仕事量では困難だ。
先日、ちょうど同い年くらいの子どもを持つ、同期入社の人間が会社を辞めた。
具体的な理由が本人の口から明かされることはなかったが、仕事の好き嫌いとは別に、子どもとの時間が取れないことをぼやいていた。その気持ちはすごくわかる。
 
ワーク・ライフ・バランスの考え方で、特に印象に残ったのは「持続可能性」をその中心的な概念として持っていることである。

人々にとって「キャリア(自己研鑽)」「ライフ(生活・家庭責任)」「老後(健康維持)」の3点セットが自己責任であることを指摘したい。(略)
仕事の傍ら、三つの自己責任を果たす時間を確保しなければ、いずれ働き続けられなくなる。
パク・ジョアン・スックチャ週刊エコノミスト(H18/2/14号))

おそらく、退社した同僚は、このままの生活では「持続不可能」と感じたのであろう。
逆にいえば、自分が今の会社かどうかは別として、今の生活を持続していくには、常に、上の「キャリア」「ライフ」「老後(健康)」ができているかどうかをチェックして進まなければならない。
そう考えると、これまで目的が曖昧だった「自己研鑽」も、「健康」「家庭」と同じ「持続可能性」というベクトルを持っていることに気づく。
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さて、先に引用した記事は、『週刊エコノミスト』の特集記事「家庭を幸せにする男の働き方」内のものであったが、そういった「男の働き方」が少子化対策にもつながる、と書かれている。
昨日の新聞記事にも同様のものがあった。

子育て、妻任せの家庭が8割超…家庭動向調査で判明
 1歳未満の子供がいる家庭で、育児のほとんどを妻任せにしている夫が8割を超えることなどが、9日、国立社会保障・人口問題研究所が発表した全国家庭動向調査でわかった。
(略)
 同研究所では、「夫が育児に協力する家庭ほど、さらに子を産みたいという意欲につながっているのに、育児分担が進んでいない。男性の帰宅時間が遅くなるなど、夫が育児に参加しやすい社会環境になっていないことも背景の一つ」と分析している。
(2006年6月9日20時21分 読売新聞)

言わずもがな、である。
テレビで恣意的に悪く取り上げているのか知らないが、猪口大臣の話は、出産費用の無料化や児童手当の拡充など、ピント外れのものが多いように感じる。お見合いパーティに至っては、言葉を失うくらいだ。
したがって、男性側の問題にも当然スポットが当てられるべきで、夫の育児参加が少子化対策として有効なのは、おそらくそのとおりだと思う。
これに関して、はてなブックマークで「少子化」で人気の高いものを検索したら以下のエントリに出会った。

少子化の原因なんて、はっきりしてる 宮乃@Studio M works/ウェブリブログ
http://studio-m.at.webry.info/200601/article_4.html

長文だが読みやすいし、かなりの部分が納得できる。ワーク・ライフ・バランスの考え方とも重なる部分もあり、実際、文章中で言及されている。
しかし、僕の同僚のように、育児に関わりたくても、仕事が忙しすぎて時間が取れない人も多いのである。こういう人に対して、このエントリでは。以下のように説明する。

(4つ挙げた離婚理由に対する、妻達の言い分を土台にした見解のひとつとして)
男は忙しいとか、仕事があるとか、仕事を理由に、自分が何かを出来ない理由をつけて逃れる生き方が身に染み付いている男である。ポストのある仕事に就いている人は男女関係無く、子供に使う時間がない言い訳に「仕事」は使わないと思う。何しろ仕事に大して失礼である。こういう男性は自らが「時間を創りだす能力」や「スケジューリング」の能力に欠けていること、もしくはハナから家族の為に自分の時間を割こうなどと思ってもいない自分が心の中にいることに目を向け、問題解決を図る能力に欠けている男性である。
→恐らく一生、何かが出来ない理由を仕事に求め続けるのだろう。

もう、自分にとっては、耳が痛すぎて嫌になるが、それでも、うちの会社のようなところの社員である場合、「どうしても無理」というときがあるのだ。周りを見てても、そういう人はいくらでもいる。
また、すべての人間に、適正規模以上の時間管理能力、問題解決能力を求めることも、間違っていると思う。
自分が凡庸ではいたくないが、凡庸な人間が生活を続けていけない社会は嫌いだ。
 
なお、問題がずれるが、国の政策として「少子化対策」が、出産率の回復(上昇)に偏るのは本当にいただけない。赤川学子どもが減って何が悪いか*1で詳しく書かれているように、これまで何年もやってきて、どんな成果があったのか?
成果がないことがわかっている政策に税金をつぎ込むのは、本当にやめてほしい。
人口減少社会を前提とした国家の設計こそが本当に重要なことなのは、冷静に考えれば誰でもわかるはずだ。
出産率が増加に転じることを前提としている年金制度が「100年安心」だなんていうのは、何度考えても意味がわかりません。
そういう意味では、自民党総裁選に河野太郎が立候補を表明しているが、年金問題に重点を置いているのには、非常に好感が持てる。
 
ということで、長くなりましたが、結論としては、今の年金制度なんて信用できないのだから、自分自身のワーク・ライフ・バランスを常日頃意識しながら、持続可能な生活を志していかなくては。ということでした。

*1:感想は以下を参照。作者自身から感想をもらった!記念すべきエントリ。http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20050419#aka