Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

日本テレビ「岡本太郎作・幻の巨大壁画『明日の神話』除幕特番」について

(『明日の神話』は、岡本太郎が『太陽の塔』と同時期にメキシコで制作した巨大壁画。最近まで行方不明になっていたが、今回、メキシコから日本に運ばれ、さらに損傷部分の修復を終え、日本初公開となる。詳しいことは、以下のページを参照のこと。
http://www.1101.com/asunoshinwa/
録画していたものを見たが、2時間特番のオープニングで登場した5人の中に田島貴男が入っている、という結構びっくりするものだった。
オリジナル・ラヴファンとしては、「それではスタンバイお願いします」のあとに、本人のライヴ映像が出てこない、という放送事故か?と思わせる展開がさらに驚きだったが・・・。*1
あとは赤のポロシャツか・・・。あれについては何も言わないが、「マイナスに賭けた」*2のだろう。
「コメントする田島貴男」という意味での見所は、ラストの「明日の神話」除幕以降の部分だが、興奮のせいもあるだろうが、恥ずかしくて聞けないほど「ぐだぐだ」で、途中で切られてしまう、というちょっと格好悪いものだった。しかし、それも岡本太郎的にはOKなのだと思う。

番組について

途中、「太陽の塔」についてなどのエピソードが入るものの、ラストへの展開を見ると、作品よりも、岡本太郎岡本敏子の二人の関係に注目したものだった。
作品中心につくられた番組よりも、ストーリーを追いやすく、丁寧な展開でわかりやすかったと思う。
そういう構成にも助けられ、エンディングのオリジナル・ラヴ明日の神話*3は、これまで数回聴いたときよりも、また良くなったという印象だった。
いや、岡本太郎と敏子の写真が後ろに流れる中で響く「明日の神話」という曲は、相当感動的だったと思う。
それだけに、振り返ると番組構成はどうにかならないか、と思う。簡単にいえば

  • 岡本太郎と敏子の「言葉」と「人生」は、それだけで、人をひきつけるものだから、もう少しシンプルな構成にして、ドキュメント中心の構成にするべき。
  • 具体的には、ライヴとドキュメントは分けるべき。
  • 再現ドラマは不要だったかも。少なくとも、敏子役は菅野美穂ではなく、もう少し無名の人に任せるべきだったか。*4

 
このうち、「ライヴとドキュメントは分けるべき」という点について、もう少し自分の気持ちを掘り下げてみる。
他のブログでも「お祭り騒ぎ」という指摘があったが、やはり、番組最後の「除幕」をお祭り騒ぎ的に盛り上げるのは、少し違うと思った。
あの、テレビ番組的な盛り上げ方が、ちょっと気持ち悪かった。
カウントダウンして、指笛吹いて、「ウォー」とか言って盛り上がっても、見てるこちらはどんどん冷めてしまう。
 
そこのところを改めてよく考えてみると、自分は、ライヴイベントで、お祭り騒ぎ的に「初公開」を盛り上げるのは全く構わないと思えてきた。今回のイベントはあれはあれで「あり」だと思う。
そして、そのライヴイベントに特化した番組であれば、カウントダウンして「ウォー」でも寧ろ自然だ。
嫌いなのは、再現ドラマが終わったあと、盛り上がっている会場の様子だけ映して、「ハイ、テレビ見ている人も一緒に盛り上がってください」「(3・2・1・0!)ハイ、ここ盛り上がるところですよ。会場も沸いていますよ」という雰囲気づくりをしようとしている番組のチープさが嫌なのだ。
今回だけではなく、こういう番組で、ゲストタレントにコメント(素人的視点の感想)を求めるシチュエーションも、同様だ。別に天海祐希が嫌いなわけではないが、そこには「ハイ、天海祐希さんも、こんなに感動していますよ。テレビをご覧の皆さんも、一緒に感動してください。」「ここ、涙流すところですよ」みたいな番組の裏の声が聞こえてきて、非常に不愉快だ。番組視聴者の理解力がかなり欠けていること前提の番組づくりだ。
 
やはり、自分はドキュメント中心の構成にすべきだったと思う。
先日、あまり見たことの無い「そのとき歴史は動いた」の本因坊秀策の回を見たが、勿論150年も前の人なので、本人の映像はなく、再現ドラマ中心のつくりなのだが、囲碁を知らない自分も引き込まれてしまった。
あれほど映像も残っている太郎と敏子のことなのだから、本人たちの映像と関係者のコメント中心の堅い番組構成でも十分面白い内容になるはずだ。
さらには、「言葉」だ。
番組でも、岡本太郎の本が売れていることなどを挙げて、太郎の言葉が評価されている、という話は多く扱われていたのだから、もう少し「言葉」に焦点を置けなかったか?
勿論、いくつか紹介されていたが、少なくとも今回の番組からは、岡本太郎の著作を読んだときのような衝撃は受けなかった。
つまりは、「映像でなければ、どうせ伝わらない」と製作者側からバカにされているのかもしれない。
もう少し番組視聴者の「知性」を信じて、見ている側に、「感動」も「判断」も委ねてほしいと思ってしまった。
つーか、ドキュメント中心の構成だったら、エンディング曲で90%の人が涙した*5ね。
 

オリジナル・ラヴ「明日の神話

ここからは、オリジナル・ラヴの話だ。
オリジナル・ラヴの新曲「明日の神話」の扱いについては、疑問を感じてしまう。
今回の特番は7月7日放送のもの。
曲もほとんど出来上がっているようだ。
それなら、何故、シングルとして発売しない?
 
もう少し詳しく。
岡本太郎明日の神話』の公開は7/8〜8/31(日テレのイベントGO!SHIODOMEジャンボリー2006の開催期間と合わせている。)
例えば、その利益を『明日の神話』再生に役立てる「TARO MONEY」も、当然、汐留で売っているわけだ。

青山の岡本太郎記念館売店
明日の神話』が公開されている
汐留の日本テレビ日テレ屋」、
青山ブックセンター本店でも
TARO MONEYの販売を行なっています。

現在どういう状況かは知らないが、普通に考えたら、上に挙げたような場所ではオリジナル・ラヴ明日の神話」が流れていて、それを聴いた岡本太郎好きの客が、買ってみる、というような状況は容易に想像できる。
今回の番組を見て、もう少し聴きたいと思った人も皆無とは思えない。
別に「カップリングつけて1000円」という型にはめる必要はなく、むしろ今回のような曲は一曲500円で売るとか、寄付含めて800円とか、音楽配信とか、いくらでも方法はあると思う。
何故それをしないのだろう?
秋にはアルバム発売が予定されているのだから、それにもつながる良い「仕掛け」だと思う。
 
もうひとつ個人的にシングルを切ってほしい理由は、今回の曲がアルバムには入れにくい(他の曲と馴染みにくい)タイプの曲なのではないか、という懸念があること。
夏になると思い出すのは、1999年の“FIREWALKING 焔歩”TOUR。
自分が行った最終日の日比谷野音は、シングル「冒険王」発売直後で、結構「冒険王」のライヴという印象がある。マイナーな曲なので、ファンの間でどういう評価を受けているシングルなのか、あまりよく知らないが、僕は好きな曲だし、ああいう「壮大」な感じのする曲は、シングルでバシッと出してしまった方が、その良さを100%出せると思う。
明日の神話」をアルバムに入れるとした場合、何曲目に入れるのかが想像つかない。
曲の雰囲気からすれば、ラスト、もしくはラスト2に入れるのが最適だが、この曲の特性上、それは受け入れにくいと思うのだ。
つまり、歌詞に「太郎と敏子」と入るような岡本太郎に特化した曲がラストに来るアルバムなんていうのは、岡本太郎をコンセプトにしたアルバムとしか考えられない。
しかし、それをやることは、岡本太郎の魂を受け継ぐことにならないのだ。

だって、太郎太郎言い始めてもう3年ですよ。「人生積み減らしだ」という言葉に痺れていたはずなのに、岡本太郎だけは例外なの? 太郎の思想にのめりこんでいればいるほど、太郎という梯子は投げ捨てなければならないはずじゃないの。もうその梯子で上へ昇ったはずなんだから、死人礼讚してる暇があったら黙々と歩き続けるべきだ。

ここにきて、自分も、だいぶ前にid:originalovebeerさんが危惧していたことと同じことを感じている。
「Be Taro!」というのは、当然、「岡本太郎になれ!」ということではなく、「(岡本太郎のように)他の誰でもない自分になれ!」ということ。
したがって、オリジナル・ラヴの新作のコンセプトが岡本太郎べったりのものであっていいはずが無い。
そんなことは田島貴男自身が一番知っているだろうから、「明日の神話」は夏の間にシングルで発売し、アルバムには入れない、というのがベストの判断だろう。
何故、それをしないのかよくわからない。
そこら辺は、7月31日のライヴで、かなり判明するのではないだろうか。ちなみに、僕の予想では、一曲目は新曲(アルバム新作の一曲目)です。(つくづく、行く人は羨ましいなあ。)

*1:半ば伝説的に語られているピンポンパンの子ども(下品な言葉を連呼して、CM後からいなくなった。)を思い出したが、そこまでの田島貴男は結構ちゃんとコメントできていた。

*2:OLファンにはお馴染みの岡本太郎の言葉。アルバム『踊る太陽』収録曲にも歌詞がある。

*3:タイトルだけでなく、歌詞にも「太郎と敏子のように」という歌詞が入る、いわば岡本太郎へのトリビュートソング

*4:菅野美穂が嫌いなわけではないが、敏子の印象より、菅野美穂の印象が強く残ってしまったため。

*5:最近流行っていた言葉みたいなので・・・。⇒http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.arai516.com/blog/2006/07/post_e7bc.html