Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

スガシカオの方程式(2)〜関係性〜

自分がスガシカオのラジオを聴いていた頃の記憶だが、彼の曲は、語りかける相手が登場したとしても女性には限らない、という話を聞いた。
つまり、スガシカオの楽曲は、(そこで扱われているのが恋愛だったとしても)自分の気持ちや、二人の思い出を歌う通常のラヴソングとは異なるようなのだ。
もっといえば、スガシカオの楽曲(特に初期)は、「関係性」について歌っているものが多い。例えばファーストアルバムの「イジメテミタイ」や「ドキドキしちゃう」など、相手が男性(例えば上司や部下)だったとしても成り立つ、むしろ男が相手だと考えた方が関係性が浮き出る。
昨日のエントリでは、最後に「気づき」について書いたが、男女の関係性について気づかされる典型的な歌が「はじめての気持ち」(『SMILE』収録)だろう。
この曲は、何度も日記の中でタイトルだけ出したが、一種の叙述トリック(笑)を使っているので、歌詞について語ることは控えてきた。今回は、内容に触れざるを得ないので、ネタバレ注意ということで、以下「続きを読む記法」を用いて一旦隠す。
この曲は一番の歌詞をそのまま引用する。

君のことがすごく気になるけど 誰にも言えない
ぼくもどうしたらいいか 胸の奥が息苦しいんだ
別に何も用がないことを
君の顔見にきてるだけってことを
まだ気づかれてない…

君の兄さんにいつも 君の話聞いているよ
友達として ぼくの味方になってほしいんだけど
だけど もしうまくいったとして
日曜日に手をつないだりするのかな…

はじめてのこんな気持ちを 笑われてしまうのかなぁ
まるで知らない人に からだ見せるみたいな気分だ
はじめてのこんな気持ちを 誰かに話したいけど
君がぼくの友達の弟でさえなければ…

端的に言えば、「ぼく」は「友達の弟」に恋愛感情を抱いている。そういう歌だ。
しかし、恋愛感情を抱いている相手が女性であったら、こんなにも「彼」の深刻な思いは伝わってこないだろう。相手が男だったからこそ、それまで平板に聴いてきた歌詞の内容が浮き上がってくる。
2番は以下の通り。

気持ちが悪い奴と 思われてもしかたないけど
愛のカタチなんてきっと いつの時代も不気味なのに
いとおしいと思う気持ちと
モラリティのブレーキとどちらが強い?

ぼくらいつか抱き合う瞬間 君の体の中に
ぼくの体全部 溶かしこんでしまいたい
ぼくらがひとつになっていく瞬間 そう魂の中へ
もっと深く もっと 沈み込んでいきたい

「気持ちが悪い」のは、実は、同性だからというだけではないのだ。ここで歌われているように異性だとしても「純愛」と呼ばれるものほど気持ちが悪い。その気持ち悪さ、恋愛の反モラル的な一面をこれでもかと見せ付ける歌詞だと思う。
映画『評決のとき』の法廷シーン*1さえも思い出させるものすごい傑作だと改めて思う。
まだ続く(予定)。

*1:クライマックスシーンのマシュー・マコノヒーの台詞は、「はじめての気持ち」でいう「友達の弟」と同様の効果をもたらします。ただ、自分はあまりこの映画には衝撃を受けなかったのですが・・・