- 作者: 阿部和重
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/10
- メディア: 文庫
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■今、《神町クロニクル》の壮大な幕が開く! 伊藤整文学賞と毎日出版文化賞W受賞の傑作長編を文庫化。全4巻
20世紀最後の夏、神の町で何が起きたのか? 自殺、事故死、行方不明と事件が相次ぎ、自然災害が住民を追い詰める。『ニッポニアニッポン』や『グランド・フィナーレ』につらなる《神町クロニクル》の壮大な幕が開く。伊藤整文学賞と毎日出版文化賞をダブル受賞した傑作長編を完全文庫化。1には文庫オリジナルの神町地図と作品年表、2にはジャック・レヴィによる解説を収録。全4巻。3、4は11月刊行予定。
地図と年表(シンセミア以外の作品も共通の年表)もついており、同じ場所を舞台にした作品ということで、興味は増すばかり。
しかし、実際に1・2巻を読んでみると、そにには、予想・期待からはだいぶ外れた世界があった。
まだ、3・4巻もあるので、なんとも言えないが、ひと言でいえば「混沌」。ただでさえ多い登場人物それぞれの物語が、好き勝手に違う方向に進んでいく感じで、収束する気配が無い。しかも、自己中心的で変態的な人ばかりなので、こういうのが嫌いな人は、途中で読みたくなくなるのでは?特に女性は。
作中では、登場人物の一人である女子高生のweb日記のなかで、阿部和重も登場する。しかしメタミステリ*1を狙ったものではなく、おそらく、この話も小出しにされてメインストリームにはならないのだろう。
ところで、作品を読むまで気づかなかったのだが、びっくりしたのが、神町(じんまち)が実在すること。つまりは、山形県の神町出身の作家が故郷を書いた作品であるというのだ。
しかし、たとえ芥川賞をはじめ、いくつもの賞を取っていたとしても、内容を考えると、阿部和重は地元出身の作家として歓迎されていないのではないだろうか。
具体的な場所が出てきても、こんな感じである。
二人が最初にやって来たのは、東根市民体育館の駐車場だった。山と公園と畑地に囲まれた当所は絶好のカーセックス用地であり、誰もが一度は利用する性の解放区として若者たちの間では知られていた。
鶴岡市であれば、例えば、市内の内川に架かる三雪橋近くなど、藤沢周平作品の舞台となった場所には、そのことが示された解説つきの看板が立っているが、これでは紹介のしようがない。
隣県に住むものとして、神町には興味があるが、むしろ、「怖いもの見たさ」という感覚である。
阿部和重が生まれ故郷をどう料理するのか、作品後半の展開が気になるだけでなく、それ以外の神町クロニクルの作品にも興味がわく。