Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

テレビとお笑いと子どもへの影響について

数日前の、昨日の風はどんなだっけ?で、みのもんたの朝の番組で取り上げられたお笑い批判について取り上げられていた。

toroneiさんの意見は納得できるもので、その時点では、特にエントリを書こうとまでは思わなかった。しかし、これについてのはてブコメントや、取り上げるブログをいくつか見て驚いた。
自分としては、(ここでの、みのもんたの意見は別として)コメンテーターとして発言した藤原和博の提案は、非常に納得できるものだったのに、それに賛同する人がかなりの少数派のようだったからだ。
はてなブックマークでのコメントは、当然、脊髄反射的なものが多いし、みのもんたに対して普段から感じている思いが爆発した故の過剰反応なので仕方ない部分はあるが、藤原和博の提案がよかっただけに、ちょっと残念に感じた。

藤原和博の提案

ここで藤原和博の提案を振り返る。
勿論、自分は番組を通して見ていたわけでなく、YOUTUBEの、この部分だけを見て、ものを言っているのだが、藤原和博がお願いしているのは、

  • お笑いタレントが後輩を苛め抜いて
  • それを横で嘲笑している
  • そういう場面を、ゴールデンタイムで放映することをやめてほしい
  • このようなシニカルな笑いは、子どもたちに蔓延するから

ということ。
この言い方は、かなり念入りだと思うし、自分の考えに非常に近い。
ここでは、お笑いにおける「いじめ要素」を否定しているわけではないし、それをテレビで放映することについても否定していない。つまり、「嘲笑するタイプの笑い」を「ゴールデンタイム」で放映することが問題だと指摘しているわけで、むしろ、藤原和博は、お笑い擁護派だとさえ言える。

ゴールデンタイムの放映内容について

ゴールデンタイムとは、はてなキーワードの説明によれば「19:00-22:00」を指す。
パソコンが普及している昨今にどこまで当てはまるかわからないが、この時間は、夕食時間もしくは夕食後のまったりした時間を「なんか面白い番組はないか」とザッピングするような時間であることに特徴がある。自分を振り返っても、意志をはっきり持って番組を選択するというよりも、何となくテレビを見てしまう時間だった。プロ野球中継の合間など特に。*1
見たくないなら見なければいい、と言う人もいるが、この時間に放映する番組に限っては、このような状況を考えて、制作者側も、ある程度意識をする必要があると思う。
最近復刊した『サルまん』で、ほのぼの4コマのルールとして、「面白すぎるのは社会を不安にするので、ちょうどよい程度の面白さに抑える」というものが紹介されていたように記憶しているが、ゴールデンタイムの番組にもそれが言える。はてブのコメントなどで「高度なお笑い」という言葉があったが、高度かどうかは別にして、理解しにくかったり、罪悪感を覚えながら笑わなくてはならないお笑いは、この時間には向いていないと思う。
なお、この件に関していろいろなところで言及されている、『ガキの使いやあらへんで』は、一時期まで、僕も好きでよく見ていたが、ゴールデンタイムの番組には含まれないだろう。

嘲笑するタイプの笑いについて

自分も、この種の「シニカルな笑い」は嫌いではない。ただ、シモネタもそうだが、昔は、こういうネタは、深夜番組やAMラジオの専売特許的なもので、ゴールデンとのすみわけが出来ていたように思う。そして、そういうすみわけがあったからこその面白さもあった。
また、こういう「後ろめたさ」を感じる笑いは、度を越したり、連発されると、後ろめたい気持ちが勝ってしまう。勿論、個人差もあるだろう。自分が『ガキの使い』を見るのをやめたのも、それが理由だ。
しかし、この種の笑いの一番の問題点は、ある問題解決に一所懸命な人間を、安全な側から見ている人間が笑っている、という構図にある。冷めた笑いとはよく言ったもので、笑われる人間は熱く、笑う人間は冷めている、という温度差が問題だ。
実情はよくわからないが、最近はよく、若い人の中に「頑張っている姿を見せることが格好悪い」と考える人が増えているという言われ方をする。小中学生にとって、ゴールデンタイムに出るようなテレビタレントは、かっこよさを提示してくれる存在ということが多かれ少なかれあると思う。テレビの影響で、問題解決に一所懸命になるよりも、外側からそれを見て嘲笑するのが「クール」だと考える子どもが増える、という因果関係は、これまで自分がテレビから受けた影響を考えても、理解できる。

子どもへの影響について

「テレビが与える影響よりも、親の教育が一番の問題だ」「こういったテレビ番組を見て、子どもが影響を受けるというのは、今の子どもを馬鹿にしている」というような意見も見かけた。
前者については、共働きなどで、親が子どもと接する時間が減少している中、むしろテレビの影響力が増加していることを不安視するべきだろうと思う。*2後者については、(さすがに全く影響を受けないと言う人は少数派だとは思うが)大人ですら影響を受けるのに、何故、子どもが影響を受けないと言い切れるのか、疑問に思う。
ここでは具体的には書かないけれども、いわゆる「いじられキャラ」などの、テレビ的なキャラ作りや、テレビ的な場の盛り上げ方が大人社会にも蔓延していると思う。自分の周囲にも、無理をしてキャラをつくる人を見かけるし、飲み会などで、人格よりも場の盛り上がりのみを優先する空気を感じることがある。ほとんどのバラエティ番組は、各人が何を考えているかよりも場の盛り上がりが優先される。エンターテインメントというのは、そういうものだから仕方ないのだが、最近は、素人参加番組や、芸能人同士の会話のやりとりで話が進む番組が多く、テレビの中の世界と現実世界の区別がしにくくなっている。

藤原和博について

最後に、藤原和博について「どこかの学校の校長が・・・」という言い方をするコメントも散見したが、これもどうかと思う。
僕自身は、藤原和博については、教育問題とは無関係の著作を1〜2冊読み、テレビで教育問題を語る姿を数回見ただけだが、非常に信頼できる人という印象を持っている。
また、プロフィールにあるように「東京都の公立中学校で初の民間人校長」であるのだが、民間人で校長になるというのは想像以上に大変なはずだ。実際、平成15年には尾道で元銀行員の民間人校長が自殺する事件があった。よそ者を受け入れにくい、閉鎖的な学校社会で、それこそ「いじめ」も絶えないのだろう。その中で立派に校長を続けている、というそれだけで尊敬できる人間だ。
さらに、いつも思うのだが、「最近の子どもは昔と比べて変わってきている」などという話は、普通の人は出来ない。テレビで見る「最近の子ども」と自分の子ども時代を比べても意味が無い。そういう意味で、かなり正確な比較ができるのは、やはり教師という職業をおいて他にないといえる。そういう「現場」に近い位置で、全国の学校を見てきている藤原和博のような人の意見は、真摯に受け止める価値があると思う。

最後に

いろいろと書きましたが、最近は昔に比べて、テレビを見なくなったので、具体的に、どのタレント、どの番組が問題あると感じているのかを書くことができません。申し訳ありません。

*1:今はこの時間には帰れないので、だいぶ前の話になりますが・・・。

*2:ここではネットの問題は除外して考えています。