Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

『東京 飛行』を語る(6)〜夜とアドリブ

次は、上でも書いた9曲目。
この曲の歌詞は、他の曲とは少し異なるように聴こえるが、BARFOUTのインタビューによれば以下の通り。(yokoさんのところから引用)

「夜とアドリブ」は単純にイメージでパパパッと作ったんだけど。イメージの飛躍を面白がって作った。でも、他の曲はそうじゃないですね。

もともと、田島貴男は、言いたいことがあって曲をつくるタイプではなく、最初に楽曲ありきで、イメージで歌詞を乗せていくタイプなのだと思う。
例えば、5th『RAINBOW RACE』の1曲目「ブロンコ」。

愛を込めたシギリーヤで 夜更けまで踊り明かす

シギリーヤとか聞いたこともない言葉が出てきているし(しかも、自分はそれを「CD屋」と聞き間違えていたし)、意味はよく分からないけど、響きがメロディーに合っていて、かっこいい、それが(少なくとも一時期の)オリジナル・ラヴの歌詞のパターンであった。「夜とアドリブ」は、その頃を思い出させる歌詞だ。ただし、MARQUEEのインタビューによれば・・・

(ニューアルバムは)人生についてのアルバム。
昔は、サウンドがシャープな音楽、カッコいい音楽を作りたかった。
最近は、この歌が何を言っているか、どんなストーリーを持ってるのか、
そういうことの方が自分のなかの比重としては、大きくある。

ということで、「夜とアドリブ」のような詞の書き方は、最近ではあまりしないようだ。
〜〜〜
ところで、この曲は、田島貴男が楽曲を提供したクレモンティーヌの「リタがダンスを踊るとき」のセルフカバーになる。というか、歌詞を書き加えた上での改作、という言い方になるのだろうか。

アン・プリヴェ?東京の休暇

アン・プリヴェ?東京の休暇

クレモンティーヌの『アン・プリヴェ〜東京の休暇』は1992年の作品で、自分はおそらく95年くらいに聴いているのだが、yokoさんのところでの指摘がなければ、二つの曲が同じ曲だということに全く気づかなかったであろう。
気づかなかったのには少し理由がある。
当時の自分は、レンタルしたCDをテープに録音するときに、ちょっとしたルール付けを行っていた。
そのルールは、「録音するのはアルバム一枚につき3〜4曲まで」というもので、そのルール故に、結構CDを慎重に聴いていたし、1本のカセットテープで、4,5枚のアルバムのお気に入りがつまることになるから、テープも繰り返し聴いていた。
『アン・プリヴェ』に戻るが、久しぶりにアルバムをレンタルしてきて聴きかえしてみると、結局、当時の自分のセレクションに合格したのは以下の2曲だけだったらしい。

4. ねえ,ラモン
9. サントロペで

ということで、どこまで意図したのかわからないが、田島貴男が提供した3曲のうち「リタがダンスを踊るとき」を除く2曲。今もそうだが、テンポが速い方がお気に入りだったようだ。
それにしても、『東京 飛行』の中の一曲が「東京」つながりの『東京の休暇』生まれであることは非常に興味深い。
ライナーには、田島貴男のコメントとして以下のようなものがついていたという。

クレモンティーヌの曲を書くにあたって僕が意識したことは、ずばりエキゾティックさである。当たり前のことだが、彼女はフランス人であり、彼女にとって“東京”は言わば異国だ。
その異国に住む僕がフランス人である彼女に曲を書くという感覚。この感覚から、僕は作曲を始めていった。そしてその方向は、三味線、琴、和太鼓といった楽器(それら自体はとても素晴らしい楽器だと思うのだが)を使って演奏されるポップスのような、今日においてある意味で非現実的な・日本(異国っぽさ)・を意識した方へ向かうということは決してなかった。むしろフレンチ・ポップスと呼ばれる、まさに日本的な解釈の上に成り立つフランスの音楽だとか、イギリスやアメリカなどの国々のポピュラー音楽などが、不思議な形で共存して交ざり合っている、いわば無国籍的に音楽のある都市としての“東京”を意識した方向だった。そしてそれは、今までぼくが感じたことのない作曲の感覚だった。アルバムが出来上がって全曲を通して聴いてみた。
予想以上に素晴らしい出来だと正直に思った。そしてなんと無国籍的なサウンドだろう。このアルバムのサウンドが、クレモンティーヌの「東京の休暇」中に感じたその印象であるならば、それは東京に住む人間として僕は、まさにそのとおりだ、と思えるのだ。――●田島貴男

いやあ、この文章、深すぎです。*1
ここでは簡単に書くが、田島貴男が言っている「今日においてある意味で非現実的な・日本(異国っぽさ)」を感じてしまうのが『街男 街女』であるような気がするがどうだろうか。

*1:こういうのがちゃんと載っているUnOFFICIAL PAGEは本当にすごい。尊敬です。