Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

曽我部恵一『ラブシティ』

ラブシティ

ラブシティ

12月の発売当初から、音楽雑誌各誌で絶賛の嵐だったこのアルバム。
本日発売のテレビブロスでも川勝正幸が自分のコラム欄全部(半頁)を使って賞賛している。
意識下で、それ(大絶賛)への反発があったのか、自分にとっては、はじめは、そのよさがよく分からなかった。むしろ、同時に購入した『東京コンサート』の素晴らしさに痺れまくっていたのは、以前書いたとおり
しかし、しつこく聴いていて、かなり印象が変わった。
最初は、全曲とも予選ギリギリラインだったのに、42.195km走り終えてみれば、全員揃って上位入賞の完全優勝みたいな気分。
名曲・名盤と、そうでないものの境がどこにあったのか、どうやってそれを乗り越えたのか、今となってはよくわからないが、自分にとっても、金メダル級の一枚となった。
こうも自分の評価が変わってみると、絶賛していた音楽ライターはさすがプロだなあと感心する。短い時間でそのアルバムを評価できる能力がないと、とてもやっていけない職業だろう。
ただ、amazonのレビューを見てみると、やはり評価していない人もおり、この人たちの感想が、ずばり、自分のファーストインプレッションと同じなのが面白い。
それでも、シングルカットして売れるような「キラーチューン」に欠けながらも、聴くほどにトータルとしてのクオリティが染み渡ってくるというのはみんな感じていることのようだ。
〜〜〜
今、改めて聴きながら書いているわけだが、やはり凄い。なんだろうか。
全体として無理をしていない、自分を大きく見せようとしたり、わざと自虐的に貶めたりしない。自然体、等身大という言葉がぴったり来る。
ファンのニーズに合わせてやっているわけではないが、皆が聴きたい音が鳴っている。
ファンのニーズを無視してやりたい放題やっているわけではないが、曽我部恵一のやりたい音楽が出来ている。
回り道のない最短距離の音楽、という感じがする。(最短距離の)「この道」は、見つけるのが相当難しいんだろうなあと思う。
多くの雑誌が書いていたように、曽我部恵一の集大成であり、次への一歩でもある贅沢なアルバム。全てのミュージシャンに、5年おきくらいに、こういうアルバムをつくってくださいとお願いしたい。
〜〜〜
ところで、後述するインタビューでも触れられているが、一曲目「土曜の夜に」のリズムパターンは、山下達郎「甘く危険な香り」と同じもので、カーティス・メイフィールド「トリッピング・アウト」が元ネタだという。
オリジナル・ラヴだと、「朝日のあたる道」になるのだが、今さらながら、この曲は「甘く危険な香り」に似ている。(シングル『沈黙の薔薇』のカップリングで自らカバーしているのだが・・・)