Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

スガシカオの方程式(7)〜スガシカオの「もしも」〜

さて、特殊な状況設定をそのまま押し進めた「SF的な」ストーリーづくりは、スガシカオの歌詞では多く見られる。
例えば、最近、azecchiさんが取り上げていた「8月のセレナーデ」の歌詞はこの通り。

もしも君がいなくなってしまったら
たとえばネコやイモムシになってしまったら
メソメソと泣くよ
でも そのうち都合のいいネタにしてしまうかも

スガシカオの歌詞の面白いところは、「もしも」の仮定が、自己の内面の深い部分を探り出す、いわば「自己との対話」の役割を果たしていること。
それこそ、歌詞における「呪い」から逃れて、自分の頭で冷静に考えてみる、そのための補助の役目を果たしている。結果として、「ひどい自分」が見えてくることもある。
最新アルバムでは、「タイムマシーン」や「Rush」なんかは、細かい条件設定まで決めているのが、歌詞としてはかなり特殊だ。まるでSF小説の抜粋のようだが。

自由設定で 過去の失敗にもし戻れるとしたら ねぇ どうする?
十数万円 条件は一つだけ もう今には戻れない
(タイムマシーン)

1週間にたった1通だけ!!
プログラムに従ってターゲットに郵送!!
みるみるうちに その相手は
青白く 痩せ細って
全てはあなたの思い通り!!
(Rush)

人間は、結構その場面に合ってみないと、まじめに考えないものだ。今この瞬間に自分が感じていること以外(ということは、ほぼ全て)のことは、極端な条件付けを行ってこそ、はじめて見えてくるものがあると思う。
グレッグ・イーガンの短編なんかも、差別や生命倫理に関連するものは、本人のメッセージを明確に伝えるために、極端な条件設定を行っているものが多々ある。
そういう努力を惜しまないという意味で、スガシカオは、「伝える」ためのテクニックに長けているというより、「丁寧」な人なんだろうなあ、と感じる。
(続く・・・かも)

参考

このシリーズの目次は以下の通りです。

スガシカオの方程式(1)〜ぶち壊しにする歌詞〜
http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20061026/SS10

スガシカオの方程式(2)〜関係性〜
http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20061027/SS

スガシカオの方程式(3)〜経験と感性と〜
http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20061029/SS

スガシカオの方程式(番外編)〜サマーの方程式〜
http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20061031/SM

スガシカオの方程式(4)〜二面性〜
http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20061031/SS

スガシカオの方程式(5)〜現在・過去・未来〜
http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20061101/SS

スガシカオの方程式(6)〜オシム流〜
http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20061117/SS