Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

森達也『いのちの食べかた』

いのちの食べかた (よりみちパン!セ)

いのちの食べかた (よりみちパン!セ)

僕らが食べる牛や豚。生きている牛や豚と、スーパーに並ぶパック入りの肉、その「あいだ」に何があるのかを、小中学生向きに説いた本。
内容は割愛。ラストを引用。

肉だけじゃない。僕たちはいろんなものから、気づかぬうちに無意識に目をそらしている。見つめよう。そして知ろう。
難しいことじゃない。目をそらさなければ、いろんなものが見えてくる。そしていろんなものが見えるから、知ることもできる。そうすればきっと、部落差別はもちろん、世界中から差別なんて、いつかはなくなると僕は信じている。悲惨な戦争だって、いつかはきっとなくなる。そのときに僕たちは、きっと顔を見合わせてつぶやくだろう。

不思議だなあ。どうしてあんな、バカバカしい時代があったのだろうって。

勘違いしてほしくないのだが、部落差別に特化して書かれている本*1ではないということ。ラストの文章を見てもわかるように、見えない部分を知ろうとする気持ちの重要性を説明している。
そういう意味では、以前、自分が安部司『食品の裏側』について書いた以下のエントリと主旨は同じだ。

ただ、森達也は「無意識に、目をそらしている」一般人の「無知」ではなく「無責任」の部分を強く示していたという感じを受ける。システム化された社会にも問題はあるが、個々の意識で変えられる部分は社会のせいにしちゃだめ、ということだ。
森達也は二冊目だが、考え方に共感できる部分も多いので、もう少し読んでみたい。

*1:本文中にも出てきたので、いまさらだが島崎藤村『破戒』は読んでおきたい。