Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

『立川談志プレミアムベスト落語CD-BOX』第二集、第九集

ボックス版を購入しているわけではなく、図書館で借りている。
細かい内容は、コチラとか。
https://www.gakubun.co.jp/hanbai/shouhin/3300431_ot.html
第二集は「風呂敷」と「笑い茸〜胡椒のくやみ」
第九集は「千早ふる」と「浮世床〜女給の文」
立川談志は口癖のように「俺ぁ、もうダメだと思うね」を繰り返す。
この「ダメ」というのはいろいろな意味があるが、自分がダメであり、世間がダメであり、日本がダメであり、地球がダメだという意味だ。また、日本の状況について「肉体が精神を諦めた」という言い方をする。精子が少なくなってきているだとか、セックスレスだとか、という日本人の肉体的な変化は、向上心をなくし、好奇心だけで動く精神を、肉体が見限ったことを意味するのだ、と解釈している。
これには勿論、自身の食道癌の経験も影響しているのだろう。相変わらず、「生死」の話題についても繰り返される。
が、少しくどいかなあ、という感じがする。立川談志の芸は、マクラも含めて評価されるべきものなのだろうが、客も基本的には落語を聞きに来ているはず。そういう客にネガティブなメッセージの説教するというのは印象が悪い。客が生きる楽しみを見つけて帰ってこそ、本当の芸なのでは?と思った。
4つの中では、「笑い茸」に芸のレベルの高さを感じたが、「千早ふる」はいただけなかった。この人の落語は、会話する二人に取り憑かれた感じでボケツッコミをしたりするため、突然、脱線したり、落語の流れから考えれば効果的とはいえない駄洒落や冗談が挟まったりする。(小説家がよくいう、登場人物が自分で動き出す状態がリアルタイムで立川談志のなかで起きているのだと思う。)
この波に全く乗れないときがあり、「千早ふる」や「浮世床」は、それを強く感じた。一方で「笑い茸」は、笑い茸を食べたあとの「笑わない夫」が、思わず笑みをこぼしてしまう演技が絶妙。夫婦の会話も自然で、脱線もなく、すぐに波に乗れた。
また、「千早ふる」のマクラもそうだったが、外国映画などの基礎知識を前提として喋っていることが非常に多く、ついていけないときがある。談志の話し方にも「これ、知ってっか?」的なものを感じるので、緊張感が途切れない。なんというか、落語としては異質だ。