- 作者: 枡野浩一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2000/12
- メディア: 単行本
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キューティ・コミックという月刊漫画誌の連載時の雰囲気がそのまま伝わるつくりで、非常に読みやすい。
枡野浩一の語り口は、やや横柄な感じ(教祖だから・・・笑)がするところもあるが、そこかしこに真剣な部分、自分はプロという自負*1が垣間見られる。巻末Q&Aのコーナーで、結社での活動よりも、全く興味の無い人に短歌を読んでもらう工夫をしていたエピソードなどにそれが顕著に出ている。
実際、当時のエピソードを見ると、詩のボクシングで優勝してたり(p169)、「メンズウォーカー」2000年6月号で、今、男性で面白い文章を書く3人として、リリー・フランキー、松尾スズキと並び称されたり(p184)、NHKで短歌入門の番組を持ち、漫画家とのコラボも多数あり、作詞した曲のCDを出したり(トモフスキーや橘いずみが参加!)、とにかく八面六臂の大活躍。今も続く、短歌を広めようという心意気が伝わってくる。
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本編は、できのいい投稿作品を取り上げて講評する形式だが、枡野浩一の指導内容は単純明快なものが多く、全体的に難しい部分は少ない。例えば
- 古語は使わず現代語のみで
- 基本的に一行書き(石川啄木の三行書きは、やはり例外とするべきのよう。)
- どうしても必要な部分を除き句読点は使わず、空白もなるべく避ける
- 追加説明が必要な短歌はダメ
- などなど
形式としては「普通の文章みたいに見えるけど、実は五・七・五」というのが、枡野浩一流であるようだ。内容としては、身もふたも無いものが好まれる。
例えば
- SMAPと6Pするより校庭で君と小指でフォークダンスを(柳澤真実)
- いったいなんに反応してるか知らないが あーなんだか意味ねー涙(脇川飛鳥)
- 「仕事だろ?」わたしのことを疑いもしないあなたを疑っている(佐藤真由美)
- ワレワレとあなたが言ったそのワレに私のことは含めないでね(枡野浩一)
- 想像を絶する事件なげつけてわたしの出来をチェックする神(向井ちはる)
でも、胸に染みるのもある。
- すぐ泣いて黙りこむからいつまでもあのこみたいになれないのかな(西尾綾)
- 目の隅で点滅している暗号はしようと思えば解読できた(向井ちはる)
- 好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君(枡野浩一)
- またいつかはるかかなたですれちがうだれかの歌を僕が歌った(枡野浩一)
だめだ。取り上げきれない・・・。
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なお、ミーハーな自分にとって、短歌指導以上に気を引かれるのは、本書に書かれた、南Q太との恋の発展や結婚報告など赤裸々な内容。(表紙が南Q太であることからも、当時のアツアツぶりが推し量られる。)
そこら辺の内容は、同時期に発売されたエッセイ集『君の鳥は歌を歌える』にも書かれているのかもしれないので、そちらも読みたい。
これまでに知った話からすると、二人は何だか普通ではない別れ方をしている*2ようだが、枡野浩一を知る上では欠かすことのできないエピソードなので、やはり気にかかる。
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さて、自分が同時期に興味を持った歌人・穂村弘については、謝辞でも触れられているが、本編中にも「やっぱり穂村弘と枡野浩一はあまり似ていないと思う」という文章がある。(p101)
最近の枡野浩一本人のブログを見ても、比較対象として穂村弘の名が挙がっているので、常に意識の内にある存在なのだろう。*3
たとえば穂村弘と枡野浩一を
比較して枡野浩一のほうが
「わかりやすい」とか
短歌の世界では言われているが、
いやいや枡野浩一の短歌だって、
非常にわかりにくいと
言われてしまう「世界」がある。
ちなみに、自分も、穂村弘よりも枡野浩一の方が普通の散文に近い印象を持つ。
どちらも好きだが、「意味ありげ」を好む自分としては、穂村弘の方がより惹かれる要素を持っているかもしれない。
まあ、いずれにしても、自分の短歌ブームは依然継続中なので、次は先日発売されたばかりの以下の本か、穂村弘のエッセイにチャレンジする可能性大。
自作短歌はそれから始めます(笑)
- 作者: 枡野浩一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/06/01
- メディア: 文庫
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