Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

神田昌典『お金と正義』

お金と正義(上)

お金と正義(上)

お金と正義(下)

お金と正義(下)

同じ作者の『成功者の告白』より先に、こちらを読んだ。
神田昌典が書く本ということではビジネス本なのだが、内容的にはビジネス本の枠外*1にあり、こちらはドタバタのエンターテインメント小説といえる。Amazonの紹介文はこちら。

無数の富裕層を生み出したカリスマが描く物語が、あなたの本当の力に気づかせる!
フリーターとIT企業社長が迎えるそれぞれの転機。1人の女性の死をきっかけに、まったく別の道を歩んでいた2人の人生がクロスオーバーする。
(略)
「この物語は----さまざまな嘘のなかから本質を見極め、自分自身の意見を持つ力を----あなたに授けるために書きました」と著者は語る。
揺れる価値観の中で、富める者と持たざる者、あなたが選ぶ未来はどっちだ!?

ストーリー展開は面白いし、途中で止まってしまうほど表現的に難のある部分はないのだが、やはり小説家の描く作品と比べると、人物描写や台詞回しの点で質は落ちる(読んでいて恥ずかしい箇所もいくつかあった)。何よりも『成功者の告白』で見せたような切迫感が感じられないのが大きい。
ただし、物語終盤の、環境テロリストと宗教テロリストが手を組むという話には、妙な現実感があったし、作中で何度も語られる潜在意識的な部分の話、特に解説で書かれているシナリオ思考(全体シナリオはパターン化されているので、それを知れば、いつ問題が起こるかを予測できる)の話などは、面白く読んだ。
ただし、それを小説形式で書く必要があったのかといえば、自分は少し否定的だ。むしろ、通常のビジネス書の形式の方が、多く伝わるし、読んだ人が、自分の人生に生かしやすいだろう。

*1:つまづいたビジネスマンがメンターに教えを請う、というビジネス小説の典型パターンを取らない、という点で意欲作だと思う。