Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

満員電車をなくすためには?

久々に日経新聞から。
日曜日のエコノ探偵団では、首都圏、近畿圏で2008-09年に新線が続々開業されることを受けて、「新線開業で通勤は楽になるか?」というテーマが取り上げられている。
ところが、端的にいえば、答えは「楽にならない(混雑は解消しない)」。理由は以下の通り。

  • 既存路線の改善は限界
  • 新線開業によって沿線人口が増え混雑路線を増やした例がある
  • 都心回帰」で、都心に大規模オフィスが増え、沿線人口も増加
  • 時差通勤の呼びかけにも効果上がらず
    • フレックスタイムが浸透しにくいお国柄

と並べてみたが、「都心回帰」が当面の問題のようだ。
自分も転勤のある会社に勤めているだけに他人事ではないのだが、なかなか前途が厳しそうだ。しかし、少し前に、このテーマで、やや明るい展望を書いた本を読んだ。

作者の阿部等氏は富山で成功しているライトレールの社長で、この新書以外に著書はなく、そういう意味では、鉄道への思いが詰まった作品。意気込みが伝わってきた。
内容は、具体的な混雑緩和策を示したもので、上述したような(既に行われている)複々線化や信号設備の改良以外に、ひとつ、何だか破天荒ながら説得力のあるアイデアがあった。
それは「総二階建て車両」

現存する二階建て車両(例えば新幹線のMax)は、階段部がデッドスペースとなるため、床面積は、通常車の2倍とはならず、約1.4倍に過ぎない。
そこで、1階と2階を結ぶ階段を設けず、それぞれ独立した客室にしようというもの。
書籍内の図の引用の著作権上の扱いがよくわからないので、下に書くと、こんな感じ。

これはいい!
2階車両の乗り降りはエレベーターつきのタラップを設置するか、大きな駅ならば、両側に高さを変えたホームを用意するというもの。これ以外にも、速度向上の対策などについても触れられていたが、絵的に衝撃的だったのは、この「総二階建て車両」。
実現する上での障害をどう乗り越えるかについても示されていたと思うので、興味のある人は是非手に取ってください。

なお、本書のラストの方では、満員電車の「効率」についても示されていた。

ロサンゼルスを例に取ろう。(略)
年面積の3分の1を道路が占め、さらに高層パーキングを含めて実に3分の1を駐車場が占めている。対して、人々が活動している場所の面積は、わずか3分の1しかない。これが自動車社会の実態であり、裏を返せば、それほど鉄道という交通システムは能力が高いのである。P165

日本が世界に誇る、GDPあたりのCO2排出量の少なさなどは、こういったところに支えられている部分も大きいはずだ。だからこそ、効率はそのままで、少しでも快適に移動する対策を、国や鉄道事業者は考えていかねばならない。
そのためには、やっぱり「総二階建て車両」ですよ。