Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

満腹できなかったモリミー作品〜森見登美彦『きつねのはなし』

きつねのはなし (新潮文庫)

きつねのはなし (新潮文庫)

確か、この本は、TVブロスの書評コーナーで豊崎由美に「こんなのも書けるのだ!」と絶賛されていた本で、自分がこれまでに読んだ2冊*1とは、だいぶ作風が異なることは、予想はしていた。
しかし、収録されている4つの短編が、軽い繋がりを持っているため、「最後に、すべてオチをつけて終わらせるのではないか」と期待してしまった分、読み終えて見ると、ぽっかりと穴が空いてしまったような感じになった。「満腹満腹!」で読了したこれまでの2作では無かったことだ。
京都の街を怪しい舞台に変えてしまうという、森見マジックは、今回も確かに絶好調だ。そういう意味では、共通するところも多い。しかし、これまで森見登美彦の本を読んできた人にとっては、結構、評価を二分する作品だと思う。明らかに面白い『太陽の塔』や『夜は短し歩けよ乙女』を推すのは簡単なので、通ぶって推すには『きつねのはなし』と言うこともできるかもしれない。
でも、自分にとっては、微妙な位置の作品。
やはり、4つ目の短編「水神」で、もう少し、作品全体の見通しをよくしてほしかった。

〜〜〜
余談ですが、アニメ「うっかりぺネロぺ」の「うたってうたってぺネロぺ」の回に登場する「にょろにょろ羊さん」*2を見るたびに、4編に共通して登場する「やけに胴が長い、狐のようなケモノ」を思い出します。


豊崎由美のブロス連載記事は、以下の本になっているようです。

正直書評。

正直書評。

*1:太陽の塔』と『夜は短し歩けよ乙女』を読んでいます。後者の感想はこちら→秩序のない現代に「おともだちパンチ」〜森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

*2:うっかり者のぺネロぺは、「♪にょろにょろへーびさん」という歌の歌詞を間違って「にょろにょろ羊さん」と歌うのだが、画面には、足の無い羊が、草原の中をにょろにょろ這いずり回る絵が出てくる