Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

ゼロ年代の終わりに80年代を振り返る

最近、偶然なのか、深層意識が意図して選んでいるのか、80年代を振り返る内容の漫画や音楽に出会うことが多い。ゼロ年代ももう終わりというときに、何故80年代なのか、世間一般的に流行しているのか、自分でもよく分からないが、折角なので、2009年末に出会ったそれらの作品とともに、自らの80年代を振り返りたい。
(→期せずして内容が重なったので「今週のお題:私の2009年ふりかえり」に参戦!)

とよ田みのる友達100人できるかな』(1)

友達100人できるかな(1) (アフタヌーンKC)

友達100人できるかな(1) (アフタヌーンKC)

36歳小学校教諭の主人公が、突然、小学3年生の時代にタイムスリップし、1980年の東京下町を舞台に繰り広げられるSFストーリー。宇宙人の地球侵略を食い止めるためには、友達を100人作って、地球人が「愛を持つ存在であることを立証する」必要がある。無理やりだが、引き込まれる、そんなストーリー。古本屋で買った一巻のみ読んだところ。


自分は1974年生まれなので、1980年当時は、小学校入学前。
Wikipediaによると、この年は、任天堂の「ゲーム&ウォッチ」が発売の年。友達によく「ファイヤ」(1980年発売)、「オクトパス」(1981年発売)をやらせてもらったことを思いだす。しばらくして親に買ってもらった「シェフ」(1981年発売)、弟が買ってもらったドンキーコングJr(1982年発売)よりも、やはり隣の芝生は青いというべきか、マルチスクリーンの「ドンキーコング」(1982年)なんかは、夢に見るくらいほしかった。

『友達100人・・・』も80年代グッズは、小道具として多く登場する。パンダ屋という駄菓子屋の描写にも懐かしさが込み上げる。小遣いの少なかった自分にとって、駄菓子屋やガチャガチャは、ときどき商品(メンコ、煙の出るお化けグッズ、スーパーボール、コマ)は買うけれども、大体は「見てるだけ」で楽しむ場所だった。

□□□「卒業」(『everyday is a symphony』収録)

everyday is a symphony

everyday is a symphony

これは別に80年代を限定したものではないけれども、とある学校の「中学校の卒業式」をフィールドレコーディングした音源をそのまま生かした歌。校長先生の話や、卒業生の言葉がそのまま入っている曲は、おそらく、これ以外にはあまり無いはずで、青春ソングを聴くのとは異なる琴線が刺激されて、不意にホロリと来る。
厳密には、自分の中学校の卒業式は1990年3月なので、80年代ではないが、受験を経ない(公立の)中学校までは、凄い人、ダメな人、超個性的な人、奇妙な噂が絶えない人、いろいろな人がいて、面白かった。あの頃の自分は、高校以降と比べると、とても楽観的でお気楽だった。平和だったなあ。

『FM雑誌と僕らの80年代−「FMステーション」青春記』

FM雑誌と僕らの80年代--『FMステーション』青春記

FM雑誌と僕らの80年代--『FMステーション』青春記

『FMステーション』元編集長が語る80年代の音楽。『キラキラ』のライムスター宇多丸の紹介で知った。未読。


80年代、すなわち中学校までの音楽体験は非常に貧弱。
この頃までの自分の音楽認識は、ジャニーズ(たのきん、シブガキ隊、少年隊)、チェッカーズ、そして、エピック。中学校時代は、渡辺美里TMネットワークあたりが、周囲で流行っていたし、自分もかっこいいと思いながら耳にしていた。(それが、その後の、かなり遅れた岡村靖幸小比類巻かほるのマイブームにつながった。)
自分が初めて音楽のアルバムを購入したのは、おそらく1988年。カセットテープの「ナムコビデオゲーム・フラフィティVol2」(Victor)で、ラジカセでよく聴いていた。音楽を聴くというよりはゲーム(この頃はコンシューマー機よりもゲーム・センターに勢いがあった)の延長だった気がする。この頃は、歌番組は見ても、テープやCDを買おうという頭は無かった。
FMステーションは、高校に入ってから、図書館でよく見た。FMラジオは聴かなかったのに、目を通していたのは、FMファンなどと比べると、素人にもとっつきやすい装丁だったからかもしれない。

NONA REEVES『GO』

GO

GO

さて、本題のNONA REEVES。元々、渋谷系色の強い『Free Soul』の方をしこたま聴いたあと、最新アルバムに手を出したのだが、音楽に詳しくない自分でも、80年代の感覚が溢れる音楽であるということは伝わってきた。よくわからないが、うる星やつらのアニメ(1981-1986)の歌(一曲ではなくいくつか)を思い出したのが、80年代を連想した理由かも。ただ、検索してみると、やはり、このアルバム自体、80年代を強く意識したアルバムのようで、自分の感覚が合っていたのは嬉しかった。

僕らがデビューした90年代っていうのは、ある意味80年代を否定してた時代だったと思うんですよね。80年代っていうのを客観的に見てたというか、多くの人たちは基本的にかっこわるいものだっていうことで取捨選択して、今やってもかっこ悪くないだろうっていうところだけ選択してきた人たちだと思うんですね。そのなかで、NONA REEVESはちょっと珍しいバンドだったんですけど、大きな括りで“渋谷系”と言われることもあったし、90年代的な観点で語られすぎていたと思うんですね。そうじゃなくて、僕らは単純に80年代の音楽が好きだっただけというか、フツーにやってたっていうことが、最近はすごく素直にわかってもらえやすくなってるとは思いますね。


上辺だけ80'sっぽく飾ってるんじゃなくて、メロディー感がモロ80'sなんですよ、郷太は。そこがまあ、タフにやっていけてる底力になってると思うんですよね。


もともと80'sっぽいって言われたことはあったけど、モロに80'sな音を意識的にやっていたわけではないし、メロディーラインだったり、自然な発想が80’s的だったっていうだけで。でも、今回はそこに焦点を当ててみたというか、わかりやすく出せたんですよね。

このアルバムの中で直接的に80年代を語っている歌もあって、それがラス前の「1989」で一番のお気に入り。
歌詞の中では、自分より一つ年上、1973年生まれの西寺郷太が、本人の感覚で1989年をネガティブに振り返る。(一曲前のタイトルが「N.e.g.a.t.i.v.e.B.o.y」)

いらんことを喋りすぎ 後悔してた
高い壁 嘘みたいに 崩壊してた
冷戦が終わったと はしゃいでいた

新世界 映すテレビでは
ふくらんだWorld Today 告げる
ヘマするばっかの
僕は球拾いさ いつだって

みんなが好きな音楽が
悲しいほど好きになれない
お決まりの落胆
汗ばみ やけくそで 口ずさむ・・・

サビ部分では、女性コーラス(土岐麻子)が「1989,I Met U My Girl」と歌うのだが、ブリッジ以降、エンディングまでは、この部分が「空耳」的に日本語に変わる。(ninety eighty nine→泣いてないで)

泣いてないで 歩くのさ
All My Friends!
泣いてないで 歩かなきゃ・・・
いつだって前進することをやめない
泣いてないで 歩くのさ
泣いてないで!明日をゆけ!
泣いてないで 歩かなきゃ・・・
いつだって全身で人生浴びて

Go on...Go on...
Go on...

アルバムタイトル「GO」にも戻るし、ラストの激励ソング「Do It Again」にも繋がる。この一曲が、アルバムすべての橋渡しをすることで、『GO』というコンセプトアルバムが成立しているようで、久しぶりに、アルバム一枚として感動できた内容だった。
80年代を振り返る名曲として、ICEの「17」*1なんかもあったが、あれは80年代を懐かしむだけの曲だった。これほど過去を振り返りつつ、力強く前へ踏み出せる楽曲は、自分には初めてで、そこがこのアルバムを好きになった一番の理由だ。

嗚呼!
僕らはいつでも 自分を信じているけど
時々迷って ぶち当たって
選んだ運命嘆き
“Boys! Don't Close Your Eyes & Believe Yourself”
ふさがった街を切り裂け!
それぞれがその腕で夢いざなう
Again,Again!
(「Do It Again」)

20年も前のこととは思えないが、80年代終わりの空気を振りかえれば、やはりゼロ年代は明るいとは言えなかった時代だったのかもしれない。個人的にも、思う通りにいかなかったことも多かった。(勿論、いいこともたくさんあった。)
しかし、「いつだって全身で人生浴びて」前に進んで行こうとする気持ちがあれば、乗り越えて行ける。
すぐそこに迫った2010年代は、とにかくめげずに前進する。そして自分が夢をいざなっていくという気持ちを忘れずに行こう!
そう、前向きに!

*1:このアルバムです→「ICE III」 standard of 90’sシリーズ(紙ジャケット仕様)