Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

言葉とラジオとiPad

他の曜日はあまり聞かない「TBS RADIO 小島慶子 キラキラ」のオープニング、金曜日だけは、小島慶子の本気度が高いので、podcastでいつも聞いている。
本気度が高い、というのは、彼女が自身の職業に誇りを持って全力で何かを伝えようとしているということ。そういう意気込みを、かなり高いレベルで引き出す水道橋博士(金曜パーソナリティ)の力は凄い。幕之内一歩にとっての鴨川会長みたいなものだ。小島慶子が全力でぶつかっても全て受け止める包容力がある。惚れます。


5/28放送分の話題は、講談社文庫の『「自殺社会」から「生き心地の良い社会」へ』の内容紹介。日本では、12年連続で自殺者が3万人を超え、中でも20代、30代は近年その数を増しているという。これに対して社会がどう取り組むかについて、文化人類学者とライフリンクの代表が対談形式で語った本。

「自殺社会」から「生き心地の良い社会」へ (講談社文庫)

「自殺社会」から「生き心地の良い社会」へ (講談社文庫)

このテーマ選択自体は、らしくないと思った。ストレートな話題(真面目に考えるべき話題)過ぎて、誰が扱っても同じような語りになってしまう。
しかし、小島慶子は、本の紹介のあと、谷川俊太郎の詩を朗読する。これが良かった。
はるかな国からやってきた

はるかな国からやってきた

詩のタイトルは「生きる」。
熱心なオリジナル・ラヴファンならば、「Let's go」の歌詞の元ネタ*1として知っていると思うが、個人的には、「朝のリレー」*2とともに、谷川俊太郎の代表作。

生きる
 谷川俊太郎


生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと


生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと


生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ


生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと


生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ

ここはpodcastで聞いてもらうしかないのだが、詩を読み終えた後で、自らのコメントを添えるとき、小島慶子は、少し涙ぐんでしまう。おそらく、自殺問題に関連して、誰か特定の人を思い出したのかもしれないが、本人の口からそれが語られることはない。しかし、背景が分からなくても、彼女がこの詩に強い想いを込めているということは伝わってきて、そういう「生きる」に自分は強く感動した。


それはつまり、こういうことだ。
上に引用した「生きる」は、実は、他のサイトからのコピペだ。詩自体は名作だし、コピーしても内容は変わらない。しかし、自分が感動した「生きる」とは全然違ってしまうのだ。基本的に、web内の文字情報は、「情報収集」(という名の「消費」)の対象として存在した場合に、最も力を発揮するのだと思う。スピードや検索と相性がいい。
しかし、「詩」は、本来、そういった読まれ方を拒否する。「声に出して読む」のが正解なのだと思う。もっと言えば、人間を介してしか伝わらない部分があるのだろう。
最近(radikoの取り組みもあり)ラジオ復権が言われることが多い理由も、ここにあると思う。話題になったニューズウィークの記事「iPadであなたはもっと馬鹿になる*3を引くまでもなく、皆が情報の洪水に不安になっている。自分なんかは、不安なだけでなく、感性も擦り減っている気がする。バランスを取るためには「人間」を取り戻す必要がある。だからこそ、視覚情報ではなく、人の「声」がメインとなるラジオ番組が注目されているのだと思う。


忙しい日々の中で、自分がインターネット上での「情報収集」(という名の「消費」)をやめることはないだろう。しかし、小島慶子キラキラ金曜日を聴いたり、子どもと話したり、考えを練ってからブログを更新したりする*4ことによって、自分の錆びついた感性を磨いていきたいと思う。

*1:これが悪い意味でのパクリかどうかの判定は、ちょっと難しいです。「歌詞」に上手く昇華できているとは思いますが、非難されても仕方ないレベルかなとも思います。特に、歌詞の一番好きな部分が、丸きり引用だったりするので、個人的にも白黒つけがたいです。

*2:「朝のリレー」は、小学5年生の国語の教科書にありました。

*3:iPadは予約してしまいました。「馬鹿」への花道ができています。

*4:ブログ執筆は、「錆びつく」ようにもできるし「錆びつかない」ようにもできる。