- アーティスト: ORIGINAL LOVE
- 出版社/メーカー: SPACE SHOWER MUSIC
- 発売日: 2011/07/27
- メディア: CD
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まずは、オリジナル・ラブのアルバム構成について、共通の認識を持つために、過去のアルバムの1曲目、2曲目、B面1曲目(と考えられるもの)、ラストの2曲を抜粋してみました。
自分が思う「典型的な」構成のアルバムは『RAINBOW RACE』『L』『ビッグクランチ』『街男 街女』です。
- A-1は、アルバムの顔でもあり、最もアピール力の強い曲。
- B-1も、シングルカットできるくらいのメジャー感がある曲。構成的にはA面ラストで落ち着いたあと、再び勢いをつける曲。
- A-2も、B-1と争うくらいの勢いがある曲。
- ラスト曲の、ひとつ前は、いったん「締め」。
- ラスト曲は、いったん締めたあとの二軒目。(濃厚な豚骨ラーメンを食べるときと、静かにお茶を飲む二次会がある。)
なお、個人的に苦手な『ムーンストーン』は、ラスト2曲は「典型的」の枠に入りますが、両A面シングルを冒頭に配置している点で、オリジナル・ラブの中では、かなり異色のアルバムだと考えています。
アルバム | A-1 | A-2 | B-1 | Last2 | Last |
---|---|---|---|---|---|
LOVE! LOVE! & LOVE! | BODY FARESHER | BLUE TALK | LOVE VISTA | LOVE SONG | ORANGE MECHANIC SUICIDE |
結晶 | 心理学 | 月の裏で会いましょう | スキャンダル | ヴィーナス | セレナーデ |
EYES | LET'S GO ! | サンシャインロマンス | WALL FLOWER | いつか見上げた空に | i WISH |
風の歌を聴け | The Rover | It's a Wonderful World | 心 | Sleepin' Beauty | 朝日のあたる道 |
RAINBOW RACE | ブロンコ | ダンス | 夏着の女達へ | ミッドナイト・シャッフル | Bird |
Desire | Hum a Tune | ブラック・コーヒー | Words of Love | プライマル | 少年とスプーン |
ELEVEN GRAFFITI | ティラノサウルス | ペテン師のうた | ローラー・ブレイド・レース | GOOD MORNING GOOD MORNING | 踏みかためられた大地 |
L | Wedding of The Housefly〜水の音楽 | ドラキュラ | 大車輪 | 神々のチェス | 白い嵐 |
ビッグクランチ | 女を捜せ | 地球独楽 | ダブルバーガー | アポトーシス〜地球独楽リプライズ | R&R |
ムーンストーン | 夜行性 | アダルト・オンリー | 守護天使 | 冗談 | ムーンストーン |
踊る太陽 | ブギー4回戦ボーイ | ふられた気持ち | のすたるぢや | Tender Love | こいよ |
街男 街女 | 築地オーライ | 銀ジャケットの街男 | ひとりぼっちのアイツ | 夜の宙返り | 鍵、イリュージョン |
キングスロード | ヒット曲がきこえる | 恋の片道切符 | ダウンタウン | 青年は荒野をめざす | エミリーはプレイガール |
東京 飛行 | ジェンダー | オセロ | 13号室からの眺め | 遊びたがり | エクトプラズム、飛行 |
最重要曲「好運なツアー」の配置
「好運なツアー」は、おそらくこのアルバムの核となる曲です。
メッセージ性が強い作品で、震災以前に作られた曲ですが、震災後の現在においてさらに強い意味を付加させるような内容に改められていると思います。
というのは、「日常生活を送っていると、なかなかその好運に気付くことができない」という、その根本のメッセージは、「非日常」がかなり浸食してきている3.11以降には、そのまま適用することが出来ないからです。(説得力が無い)
にもかかわらず、Amazonの収録曲リストに明記されているところを見ると、ツアーで演奏されたとき(3.11以前)から大幅に歌詞を書き直し、説得力を持たせるような内容にしていると考えています。
したがって、原曲以上にメッセージ性の強い作品であるのではないかと考えています。
そう考えた場合、この曲を、アルバムの最初や最後に置くことはあり得ないと思っているのです。
田島貴男も、以下のように、改めて「ポップス」という言葉を用いて『白熱』を語っています。
私の思い入れや能書きなどは、
どうでもよいものでなければならない。
ポップスはそのものが聴く人にいい感じに聴こえるか否かだけ。
過去作もそういうふうに作ってきたつもり。
「ポップス」という言葉が、オリジナル・ラブを語る上で、非常に重要なキーワードとなっているのは、ファンの方はよくご存知のことと思います。「好運なツアー」は、シンプルな良いメロディーの曲だったように思いますが、メッセージが強くなりすぎると、田島貴男の思い描く「ポップス」から少し外れてくると思うのです。
ぼくは19歳でオリジナル・ラヴの前身となるバンドを始めてから、オリジナル・ラヴのやっている音楽は、「ポップス」なんだと言ってきた。(略)
あるジャンルの中だけで成立する良さではなく、ジャンルを取っ払ってその音楽自体として面白さが分かるようなと言ったらいいのか、上手く言えないのだけれども、なにかそういう意味合い、質感、を含ませた「ポップス」だった。
(略)
それにぼくの目指す音楽は、「いかにも芸術やってます」というような、「自分のやっていることは特別で素晴らしいことなんだと故意にアピールするような音楽」ではなかった。もっとありふれた、誰もが共感できる、欲を言えば音楽をとくに趣味としてこなかった人にも「あれっ?」と思ってくれるような音楽だった。具体的に言うと、ビートルズや、バート・バカラックやエルヴィス・プレスリーやセックス・ピストルズのような音楽だった。
「自分のやっていることは特別で素晴らしいことなんだと故意にアピールするような」ことが嫌いなことは、最近の日記でも何度か書かれており、アルバム全体としては、3.11を感じさせるようなメッセージ性はほとんど感じられないはずだと考えています。だからこそ、アルバムの中での“異端児”である「好運なツアー」を締めの一曲とするのは、田島貴男自身の好みを考えると無さそうだと思うのです。
「ディランとブレンダ」の配置
そう考えると、メッセージ性の強い曲のあとに、それを打ち消す「くだらない」歌を持ってくると考えるのが自然です。田島貴男が考え過ぎる人だからこそ、特に、今回のアルバムでは、くだらない歌を目立つ部分に配置するように思います。
素晴らしい音楽は、くだらないものでもあり、
されど、だからこそ、価値のあるものではないか。
音楽を愛し過ぎるのも、
逆に「音楽なんて」と馬鹿にするのも違う気がする。
今回のツアーで、直接「くだらない」という形容詞が似合う曲はいくつかあり、それが「ディランとブレンダ」、「セックスと自由」(「SEXとSURFIN'とBIKEとR&R」から改題されていると仮定)と「大追跡」です。このうち、「大追跡」は直接聴いたことが無いので分かりませんが、「セックスと自由」は、ムーディーな雰囲気を持っている曲で、「好運なツアー」のあとにそぐわないと考えました。結果として消去法的に「ディランとブレンダ」が残ります。
そして、「好運なツアー」「ディランとブレンダ」の2曲の配置をどうするかと考えた場合、ラスト2曲が最もふさわしいと考えました。明らかに序盤ではありません。
さらには、“Dance to the music”というフレーズで終わる「ディランとブレンダ」こそが、過剰なメッセージ性を持たせたくない田島貴男の気持ちに一番フィットするという気がするのです。『東京 飛行』の実質的なラスト曲「遊びたがり」が残す楽しげな余韻が『白熱』でも再び味わえたらいい、そう思ったのです。
何だか、3.11について考えながらアルバムを聴き終えるのは嫌だし。
そう考えると、ややくどいですが、スチャダラパーがここで参加してもいいように思いました。スチャダラパーのは自分にとって「Get up and Dance」のイメージが強いし。
その他の曲
1曲目ですが、これは、ツアー名称になっている「フリーライド」は、田島のお気に入り曲なのだな→それなら一曲目だろう、という単純な予想です。また、所属が「フリー」になってからの再始動の心意気の入った楽曲なのではないかと思っています。ツアーで聴いた感覚からしても違和感がありません。
「セックスと自由」は、前回のライヴでの異常な盛り上がりと、特に東芝時代からのファンにとっての「田島がここに戻ってきた」感から考えても、非常に重要な楽曲と考えています。*1
したがって、重要度からすれば2曲目あたりが落ち着きます。この曲の歌詞は「踊りまくれ」という内容だったので、アルバムが「ディランとブレンダ」の“Dance to the music”で終わると仮定すれば、サンドイッチ構造の美しさから考えても、序盤でしょう。
しかし、曲の雰囲気はムーディーで、自分の考える2曲目までの典型とは異なるので3曲目にしています。
「春のラブバラッド」は、ライヴでの演奏実績が最も多い新曲で、田島貴男の自信作であることを考え、2曲目に配置しました。ただし、曲調が2曲目にふさわしいかと問われれば微妙です。SWEET SWEETさんがコメント欄で指摘されているように、終盤がいいのかもしれません。というか、タイトルを考えると2曲目は無さそう。
「二人のギター」は、ボサノバということを考えると、「ムーンストーン」と同じラスト曲かA面ラスト。
「大追跡」は、聴いていないので分かりませんが、今回のSWEET SWEETさんのコメントを読んで、やはりB-1曲目だと感じました。その他の候補が考えられないので、スチャダラパーが参加する曲は「ディランとブレンダ」でなければ、この曲だと思います。(ただし、この曲は、それほどツアーで多く演奏された曲ではなく、落選候補の可能性も残されていると思っています)
Lindaさんにコメント欄で教えて頂いた「震災後につくった曲」は、プチ衝撃でした。
以前のエントリで書いたように、10曲を選ぶ際に既に落としている曲があるので、今挙げている10曲からさらに落とす必要があるためです。
Amazonで挙がっている5曲の確定曲以外では、前回ライヴで演奏されている「二人のギター」も確定とみなせると思います。すると「大追跡」「ディランとブレンダ」「高い枝のクランベリー」「路上」から落選する曲があるわけですが、はじめの2曲は、これまで書いてきたように、入れてほしい曲なので、「高い枝のクランベリー」「路上」からどちらかが落選することになるのでしょう。
また、この未発表曲。扱いが難しいですが、上でも述べたように、メッセージ性を持たせた曲でないように思います。
また、田島貴男が日記で言及している「MODSの音楽の影響がある曲」については、いまいち、ツアー中で聴いたことのある新曲とは合わないような気がしたので、これが、震災後につくった曲であると考えました。
予想曲順はこれだ!
以上を考えると、オリジナル・ラブ『白熱』の曲順は以下の通りです。
(side A)
- フリーライド
- 春のラブバラッド
- セックスと自由
- 高い枝のクランベリー
- 二人のギター
(side B)
参考(過去日記)
- オリジナル・ラヴ「好運なツアー」個人的まとめ(3)〜一貫したメッセージ →「好運なツアー」のメッセージについて
- 大人向けのロックとは何か? →田島貴男の考える普遍的なポップスについて
*1:改題がしっくりこない感じですが、「自由」という言葉を使っているのは、ツアーで歌われたサビ部分“SEX and SURFIN' and BIKE and R&R”が変わっているのでしょう。でも「自由」?と思ってしまうのですが・・・