Yondaful Days!

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オリジナル・ラブ『白熱』の収録時間優位仮説

白熱(初回限定盤)(DVD付)

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オリジナル・ラブ、7.27発売の最新作『白熱』は、とても良いアルバムです。
ツイッター上でも、このアルバムの評価をよく見かけるのですが、好意的な意見のほとんどに共通している言葉があります。


“繰り返し聴いてしまう”


その通りなんです。
特にこれほどまで、アルバム全体を繰り返し聴くことは、過去のオリジナル・ラブの作品でもなかったことなので、その理由を考えたとき、ある説が思い浮かびました。

CDの最大の欠点は、70数分入ることがポップミュージックに長過ぎたことにあると思ってる。人間の集中力には限界がある。収録曲の質も落ちた。 RT @d_kawaguchi 先見の明ありすぎ! @Gota_NonaReeves 46分テープに入る範囲内がいい!ノーナは実践してる!

敬愛する郷太さん(ノーナ・リーヴス西寺郷太)の主張する説に、『白熱』は、まさしく合致するように思われたのです。
また、最近、聴き直してみたキリンジ『BUOYANCY』(収録時間58分)が長過ぎて全部聴き通せない!と思ったことも、この説を後押ししたのでした。
実際に確認してみると、『白熱』は、ボーナス・トラックを除くと、確かに46分丁度くらいに収まり、自分の直感は正しかったのだ、と思っていたのでした。

46分テープが46分である理由

そもそもどうして46分なのでしょうか?
まず、CDの収録時間について。

最大収録時間(74分42秒)が決まったいきさつについて、開発元のソニーによれば以下の通りである。
開発の過程でカセットテープの対角線と同じでDINに適合する11.5センチ(約60分)を主張するフィリップスに対し、当時ソニー副社長で声楽家出身の大賀典雄が「オペラ一幕分、あるいはベートーベンの第九が収まる収録時間」(12cm、75分)を主張して調査した結果クラシック音楽の95%が75分あれば1枚に収められることからそれを押し通した


次に、テープの収録時間について。

当初はC-60に始まり、短時間用のC-30、長時間用のC-90、超長時間用のC-120が追加された。やがて音楽専用タイプが発売された1970年代中頃には、当時の一般的なLPアルバムを収録するのに丁度良いC-45(C-90の半分)が追加されたが、片面の収録時間が22.5分と中途半端で録音時間とテープスピードの誤差に対してあまり意味を持たなかったため、1970年代後期にはほぼすべてC-46へ置き換わった。


最後に、LPレコードの収録時間について。

なぜ12インチか。それ以上大きいと持ち運びに不便。
なぜ23分か。回転数と円盤の大きさ、それと溝の間隔で決まりますね。
なぜ33・1/3回転か。3分間に100回転。(これは、映画フィルムの時間と関係があります)

LP片面23分というのも、ある楽曲のちょうどよい区切りだったからだという説があります(両面でちょうど全曲が収まった)。


ということで、46分というのはLPレコード両面の長さということになります。

過去作の収録時間

さて、自分は、オリジナル・ラブ『白熱』が、ボーナストラックを除くと、ちょうど46分くらいに収まることがわかり、これが、『白熱』を繰り返し聴ける理由だと主張したいのです。

しかし、これだけでは、過去のアルバムに比べて聴きやすいことの説明にはなりません。
過去作が46分を超えて十分に長いことを持って、『白熱』が他よりも優位であることをはじめて説明できるのです。
しかし、『街男街女』や『東京飛行』のお腹いっぱい感を思い出せば、それらの作品の収録時間が長いのは火を見るよりも明らか。体感時間的には、60分弱はあるのではないでしょうか。


そこで、まずAmazonで確認すると、衝撃の事実が明らかになったのです。

タイトル 曲数 収録時間
LOVE!LOVE!&LOVE! 17曲 91分
結晶 10曲 55分
EYES 10曲 60分
風の歌を聴け 10曲 56分
RAINBOW RACE 10曲 55分
Desire 10曲 50分
ELEVEN GRAFFITI 11曲 44分
L 12曲 49分
ビッグクランチ! 12曲 55分
ムーンストーン 10曲 50分
踊る太陽 10曲 44分
街男 街女 10曲 48分
キングスロード 10曲 33分
東京 飛行 11曲 44分


厳密に言うと、収録時間が短いベスト3は(カバーアルバム『キングスロード』を除く)

  • 『踊る太陽』が44分09秒
  • 『東京 飛行』が44分11秒
  • 『ELEVEN GRAFFITI』が44分28秒

で、ベスト3。ここまでが46分に収まる時間。
これら3つは、“聴きやすいアルバム”『白熱』よりも収録時間が短いことになります。
次に短いのは

ということで、想像していたのと全く異なる結果が出てしまい、『白熱』収録時間優位仮説は、木端微塵に砕け落ちたのでした!

体感時間と比較すると・・・

上の整理を時系列的に見ると、『Desire』が、アルバムの長さを短くする転機だったようですが、当時、全く感じませんでした。東芝時代のアルバムは、それ以降と比べて、平均5分以上は長いというのも意外です。
一番意外だったのは、苦手にしている『ムーンストーン』以降のアルバムは、アルバムの“短さ”という視点では、超優等生だったということです。
ベスト3のうち『ELEVEN GRAFFITI』は、長いと感じていた『Desire』のあとということもあり、体感でも短く感じていましたが、よもや『東京 飛行』が『白熱』よりも短いとは思い付きませんでした。*1
何故長く感じるのかを真面目に考えようとすると、歌詞の内容や、メロディ・アレンジに踏み込まないといけないので、特に書きませんが、“体感時間”は、聴いている内容に大きく影響を受ける、当たり前のことに、今回、改めて気付かされたのでした。
惨敗です。

補足

山下達郎の新作『Ray Of Hope』に関するテレビブロスの記事(山下達郎×大根仁対談)から。

CDって直線的なメディアなので、15〜16曲になると、何が11曲目で、何が12曲目かわかんなくなっちゃって、集中力が持たないから。だから今回は60分内に収めようと思って。
(略)
大根仁のA面B面を感じるという指摘に対して)やっぱりアナログアルバムから生きてきた人間だから、どうしても1回ひっくり返す感覚というのがないと。CDの直線性をいかに緩和するというか、今、誰もそんなこと考えないだろうけど、やっぱりアルバムにはそれがないとダメなんだよね。

ということで、新作は57分。キリンジ『BUOYANCY』の教訓から考えると、自分は、とても集中力が持たない感じですね。でも、このアルバムも明確に震災を意識したアルバムのようで、とても気になっています。

Ray Of Hope (初回限定盤)

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*1:『踊る太陽』は、田島度が最も薄いアルバムでバラエティに富み過ぎているので、他と単純比較できないと思っています