Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

謎と不気味とスピード感〜諫山創『進撃の巨人』(1)〜(4)

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

遅ればせながら4巻まで読むことができました。

4巻最後まで全くテンションが落ちることなく進み、すぐに5巻が読みたくなる内容で、さすが多くの人が面白い漫画として評価するだけあると思いました。
一見すると下手なその絵柄は、むしろ、巨人の不気味さと立体的な戦闘のスピード感を表現するにはちょうど良いのではないか、と感じるほどで、ほとんど問題になりませんでした。特に、ほとんどの巨人の、手足の長さや頭の大きさのアンバランスな感じは、「単純に人間を巨大化した生き物」ではなく、「未知の生物」としての雰囲気を強く伝え、絵柄と内容が上手くシンクロしているようです、
敵のボスに当たる“超大型巨人”や3巻以降に登場する“人間兵器”の、他の巨人と異なる特別な造形も上手く表現できているし、物語の内容をほとんど混乱することなく、スピード感を保ったまま読むことができました。
勿論、表現手法よりも、「謎」の配置が優れているということなのかもしれません。5巻以降、どういったかたちで「謎」が解き明かされていくのか、は興味津々です。


一方で、同じく“戦闘”をテーマにした超一級作品と比べると、ことごとく登場人物達の台詞のピントがずれている点が気になります。例えば尾田栄一郎『ワンピース』や岩明均ヒストリエ』、荒川弘鋼の錬金術師』、鬼頭莫宏『ぼくらの』など作品では、作品内の台詞が、普遍的な人間社会の問題点を衝くような内容で読者に刺さり、いわば「名台詞」化するのですが、ここまで面白い作品にしては、名言が少ないように思います。
特に、登場人物達が、巨人に食われる自分たち人間のことを、昆虫の食物連鎖や、人間社会の中での弱肉強食、苛め等に喩えたあげく、「強い者が勝ち残るのだ」と考えているのは、確かにそうなんだけどなんか違う、と思わざるを得ませんでした。
ここら辺は無理に人間社会に喩えたりすることなく、絶対的な敵に対してサバイバルしていく、という、天災にどう対応するかみたいな内容として、話を進めていけばいいと思います。


また、物語内世界の特徴的な構造、つまり三重の壁に囲まれた人間の活動領域と、それぞれの壁から突出したかたちに作られた街という構造は、各巻に解説も加えられているものの、いちいち真面目に考えていくと変な所も多いように見えます。
特に、人間領域の中心ほど標高が高くなり、中心から外に向かって川が流れるという地形は、平地の水辺を拠点に繁栄を進めた人類の歴史から考えても奇妙な感じがするのです。海辺や大河川は巨人に占拠され、かつ巨人が高地を敬遠する(例えば寒い所が苦手)ために、人類は、山奥から少しずつ壁をつくり活動範囲を広げていった、と考えれば、少しは納得が行きますが、それにしては、100年間で街が大きくなり過ぎているように見えます。
つまり、ここら辺も、例えば『ワンピース』の街のつくりへの偏執的なこだわりと比べると、やや不備な点が目につくような気がするのです。


と少し苦言も書きましたが、5巻以降が早く読みたい作品であることには代わりありません。5巻は既に出ているのですが、足早に最新刊まで読むと、次が読みたい気持ちが更に強くなってしまうので、6巻が出た頃にまとめて読みます。(笑)