- 作者: 保坂 隆
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/06/10
- メディア: 新書
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東日本大震災では被災地だけでなく、その報道によっても多くのストレス患者を生み出した。「またすぐに地震が起きるのではないか」という予期不安や睡眠障害。災害ストレスを私達はどうケアすべきか。保存版の1冊。 (Amazon内容紹介)
裏表紙には「大災害から受けるストレスをどのように乗り越えるか」というコピーがついているが、想定されている読者は、ストレスを受けている当事者ではなく、主にそれを支え、ケアする立場の人達。ストレスから立ち直「らせる」ための基礎的な知識として、以下のような項目について説明がなされる。
- ストレスから立ち直る4つの段階(「衝撃・ショック」→「防御的退行」→「承認」→「適応」)
- 被災後の心の復興(「英雄期」→「ハネムーン期」→「幻滅期」→「再建期」)
- 死別の体験を乗り越えるための課題(グリーフ・ワーク(死別の事実を受け入れる→悲しむ→変化に慣れる→亡くなった人に対して注いでいたエネルギーを別のものに向ける)
- ストレスへの対処法(コーピング)の4つのタイプ:「積極的行動コーピング」「気晴らしコーピング」「あきらめコーピング」「回避コーピング」
これらを踏まえた上で、サポートする側が注意すべき点として何度も繰り返されていることは、「第三章 ストレスに悩む人をどうケアすべきか」にも書かれている通り、以下にまとめられる。
- 被災者の気持ちを否定したり、自分の思い通りにさせたりしようとせず、そのまま受け止める
- 早急に結果を求めようとせず、気長に温かく見守る
- 継続的に根気よくサポートを続ける
特に、一点目については、「相手の痛みをまるごと受け止めて、否定しない」「相手に共感することで、安心感を与える」ことによって、なるべく話してもらうこと(ただし、話したくないときには一人にさせること)が大切だとしている。
この部分は非常に納得度が高いし、裏返して考えれば、何をしてはいけないかがよく分かる。
東北大震災だけでなく、阪神大震災やオウム事件、JR福知山線脱線事故など事例は多く、教科書的に良い本だと思う。しかし、もはや東北の震災のことを知り過ぎており、現在も苦しんでいる人がいることをさまざまなメディアを通して知っているので、今の厳しい状況から考えた場合に、この本の内容がどの程度役に立つのだろう、と感じてしまう部分もある。3.11以降に出た本にしては切迫感が無く、良くも悪くも淡々と書かれた本であるという感じがする。
なお、副題に取り上げられるほど「報道被害」について書かれた本ではなかった。